ギターを始めたいと思ったとき、最初に直面する疑問のひとつが「アコースティックギター(アコギ)とクラシックギター、どちらを買えばいいの?」というものです。見た目は似ているこの2つのギターですが、実は構造・音色・弾き心地・得意なジャンルがまったく異なります。選び方を間違えると、やりたい音楽と楽器のミスマッチが起きて、上達が遅れたりモチベーションを失ったりする原因になりかねません。
川口駅徒歩2分のコアミュージックスクールにも「どちらのギターを買ったらいいですか?」という相談が毎月のように寄せられます。この記事では、両者の違いを構造面・音響面・演奏面から徹底的に比較し、あなたの目的やプレイスタイルに合ったギター選びをサポートします。初心者の方はもちろん、2本目のギターを検討中の方にも役立つ内容です。
ボディ形状とサイズの違い
アコースティックギター(フォークギター)のボディは、一般的にクラシックギターよりも大きく、特にくびれ部分がはっきりしたドレッドノート型やフォーク型が主流です。ボディの大きさは音量に直結するため、アコギはバンドの弾き語りやストロークプレイで使われることを想定して大きめに作られています。トップ材にはスプルース(えぞ松)やシダー(杉)が使われ、サイドとバックにはローズウッドやマホガニーなどの硬い木材が用いられます。
一方、クラシックギター(ガットギター)のボディはアコギよりやや小ぶりで、くびれも緩やかなものが多いです。ボディの薄さや形状は伝統的なスペインスタイルのギター製作法に基づいており、膝に乗せて構える古典的な演奏姿勢に最適化されています。トップ材にはシダーやスプルースが使われますが、全体的にアコギより薄いボディで繊細な音を響かせるように設計されています。
弦の種類と弾き心地
スチール弦(アコギ)の特徴
アコースティックギターにはスチール(鋼鉄)製の弦が張られています。高音弦はプレーン弦(むき出しのスチール線)、低音弦はスチール芯にブロンズやフォスファーブロンズの巻き線を巻いたワウンド弦です。スチール弦の最大の特徴は、張力が高く「シャリーン」とした明るくきらびやかな音色を持つことです。ストロークで「ジャカジャカ」と弾くときの歯切れの良さは格別で、ポップスやロック、フォークの弾き語りにぴったりです。
ただし、スチール弦は指への負担が大きいというデメリットがあります。初心者の方は指先に硬いタコができるまでの1〜2ヶ月間、弦を押さえるのが痛くてつらいと感じることが多いです。この時期をどう乗り越えるかが、アコギ初心者の最初のハードルになります。弦のゲージ(太さ)をエクストラライトやカスタムライトにすると、張力が下がって押さえやすくなるので、初心者にはおすすめです。
ナイロン弦(クラシックギター)の特徴
クラシックギターにはナイロン製の弦が張られています。かつてはガット(羊の腸)で作られていたため、今でも「ガットギター」と呼ばれることがあります。高音弦はクリアナイロンの単線、低音弦はナイロン芯に銀メッキ銅線を巻いた構造です。ナイロン弦はスチール弦に比べて張力が低く、指への負担が圧倒的に少ないのが特長です。音色は温かく丸みがあり、「ポロン」とした柔らかい響きが特徴です。
指が痛くなりにくいという点で初心者に優しいクラシックギターですが、ネックがアコギより太いため、手の小さい方はコードを押さえるときに指を大きく広げる必要があります。また、ナイロン弦はチューニングが安定するまでに時間がかかる(新品の弦は数日間伸び続ける)という性質もあります。この点はスチール弦のほうが安定が早いです。
ネック幅とフレットの違い
演奏のしやすさに直結するのがネック幅です。クラシックギターのナット幅(ネックの上端の幅)は約50〜52mm、アコギは約42〜44mmが標準です。約1cmの差は数字では小さく感じますが、実際に握ってみると印象がまったく違います。クラシックギターのネックは明らかに太く、これは指1本1本をきちんと独立して動かすクラシック奏法に適した設計です。一方、アコギの細めのネックはコードの押さえ替えが素早くでき、ストロークやピック弾きに有利です。
フレット数にも違いがあります。クラシックギターは12フレットでボディと接合するのが伝統的で、ハイポジションへのアクセスはやや不便です。アコギは14フレット接合が標準で、より高い音域まで使いやすくなっています。演奏するジャンルによってどちらが便利かは変わりますが、ポップスやロックを弾きたい方は14フレット接合のアコギのほうが使い勝手が良いでしょう。
音色とサウンドキャラクター
アコギのサウンドは一言でいえば「明るく華やか」です。スチール弦特有の高音の倍音が豊富で、ストロークで弾くとシャリシャリとしたきらびやかな音が部屋中に響きます。コード弾きで伴奏をするとき、ボーカルに埋もれない存在感を発揮します。録音やライブでも、バンドの中で独自のポジションを確立できるサウンドです。
クラシックギターのサウンドは「温かく柔らかく深い」と表現されます。ナイロン弦特有の丸い音色は、クラシック音楽の独奏はもちろん、ボサノバやフラメンコ、ジャズのバッキングにも最適です。指の当て方や爪の角度で音色を繊細にコントロールできるため、「同じ楽器でまったく違う表情の音を出せる」という奥深さがあります。音量はアコギより控えめですが、その分、繊細な表現力では群を抜いています。
| 比較項目 | アコースティックギター | クラシックギター |
|---|---|---|
| 弦の種類 | スチール弦 | ナイロン弦 |
| 音色 | 明るく華やか | 温かく柔らか |
| ナット幅 | 約42〜44mm | 約50〜52mm |
| 指への負担 | やや大きい(慣れが必要) | 少ない(初心者に優しい) |
| 得意なジャンル | ポップス・ロック・フォーク・カントリー | クラシック・ボサノバ・フラメンコ・ジャズ |
| 奏法 | ピック弾き・指弾き | 指弾き(爪弾き)中心 |
| 初心者向け価格帯 | 2万〜5万円 | 3万〜6万円 |
| ピックの使用 | ◎ 一般的 | △ あまり使わない |
ジャンル別おすすめギターの選び方
弾き語りでポップスやJ-POPをやりたい方には、迷わずアコースティックギターをおすすめします。コードストロークの歯切れの良さ、カポタストとの相性、そして弾き語り用のTAB譜やコード譜がアコギを前提に書かれていることが多いためです。YouTubeの弾き語り動画の大多数がアコギを使っていることからも分かるように、ポップスの弾き語りとアコギは切っても切れない関係にあります。
クラシック音楽を学びたい方、ボサノバやフラメンコに興味がある方にはクラシックギターが最適です。これらのジャンルはナイロン弦の柔らかな音色が不可欠であり、スチール弦では本来の味わいが出せません。また、ソロギター(メロディと伴奏を同時に弾くスタイル)にも、弦間が広く指の独立した動きがしやすいクラシックギターが適しています。
ジャズギターを志す方は、実はどちらでもスタートできます。ジャズのコンボではフルアコやセミアコのエレキギターが主流ですが、ボサノバ寄りのジャズならクラシックギター、スウィングジャズならアコギ、という選択肢もあります。まずは好きなジャズギタリストの使用楽器を調べてみるのも良いでしょう。
価格帯と予算の目安
初心者向けギターの価格帯は、アコギもクラシックギターもおおむね2万〜6万円程度です。ただし注意したいのは、あまりに安い楽器(1万円以下)は品質にばらつきが大きく、弦高が高すぎて押さえにくかったり、チューニングが安定しなかったりすることがあるという点です。少なくとも2万円台以上の国内メーカー品(ヤマハ、モーリスなど)を選べば、品質面で大きな外れはありません。
中級者以上であれば、アコギなら5万〜15万円、クラシックギターなら10万〜30万円あたりが「良い楽器を実感できる」価格帯です。特にクラシックギターは手工品(ルシアー制作)の世界が広がっており、数十万〜数百万円の楽器も珍しくありません。まずは手頃な価格帯でスタートし、上達に応じてグレードアップするのが賢い選択です。
初心者が最初の1本を選ぶための3つの質問
質問1:どんな音楽を弾きたいですか?
ポップスやロックの弾き語り→アコギ。クラシック、ボサノバ、フラメンコ→クラシックギター。「とりあえずいろんな曲を弾いてみたい」という方はアコギのほうが汎用性が高いです。
質問2:ピックを使いたいですか?
ピック弾きがメインならアコギ一択です。クラシックギターのナイロン弦はピックとの相性があまり良くなく、本来の音色が活かせません。指弾きに興味がある方はどちらでも楽しめますが、指弾きの表現力を深く追求するならクラシックギターのほうが向いています。
質問3:指の痛みが心配ですか?
指への負担の少なさを最優先するなら、クラシックギターのナイロン弦がおすすめです。特に小さなお子さんやシニアの方で「指が痛いのは絶対にイヤ」という場合は、クラシックギターからスタートするのが無理なく続けられる選択です。アコギでもエクストラライトゲージの弦に変えることで負担を軽減できますが、ナイロン弦の柔らかさには及びません。
🎸 野口講師からのコメント
「アコギとクラシックギター、僕はどちらも弾きますが、それぞれの魅力はまったく別物です。弾き語りの気持ちよさはアコギが圧倒的ですし、一音一音の表現力ではクラシックギターに敵いません。迷っている方には体験レッスンで両方触ってもらうのが一番です。5分弾いただけで”こっちだ!”と分かることが多いですよ。」




