ドラムの演奏でひときわ目立つ瞬間が「フィルイン」です。曲のセクションが変わるとき――たとえばAメロからBメロへ、Bメロからサビへ切り替わる直前に入る「タカタカ、ドン!」というフレーズ。これがフィルインです。基本ビートを叩けるようになった次のステップとして、フィルインは最も達成感を感じやすいテクニックの一つでしょう。
しかし、いざフィルインを入れようとすると「リズムが崩れる」「元のビートに戻れない」「かっこよく聞こえない」という壁にぶつかる方が多いです。この記事では、フィルインの基本的な考え方から、初心者でもすぐに使えるパターン10選、そしてフィルインを曲の中で自然に使いこなすためのコツまでを詳しく解説します。
フィルインの基礎知識
フィルインとは何か
フィルイン(Fill-In)は、直訳すると「埋める」という意味です。基本ビートの「隙間を埋める」装飾的なフレーズであり、主に以下の3つの役割を持っています。①曲のセクション(Aメロ、Bメロ、サビなど)の切り替えを知らせる合図 ②楽曲にアクセントや変化をつけて単調さを防ぐ ③バンド全体の盛り上がりをリードする。つまり、フィルインは「次のセクションに行くよ」とバンドメンバーやリスナーに伝える、ドラマーの重要なコミュニケーション手段なのです。
フィルインを入れるタイミング
ポップスやロックの多くの曲は、4小節または8小節のフレーズで構成されています。フィルインは通常、フレーズの最後の1拍〜2拍(8小節フレーズなら7〜8小節目)に入れます。最も一般的なのは、8小節目の3拍目と4拍目でフィルインを叩き、次のセクションの1拍目でクラッシュシンバルを「ジャーン」と鳴らすパターンです。この「フィル→クラッシュ」のセットは、ドラムの最も基本的な流れです。
クラッシュシンバルの着地
フィルインの最後は、次のセクションの1拍目でクラッシュシンバルとバスドラムを同時に叩いて「着地」します。これが決まると非常に気持ちいいのですが、フィルインに集中するあまり着地のタイミングがずれてしまう初心者が非常に多いです。フィルインそのものよりも、着地の1拍目を正確に叩くことを最優先に練習してください。
初心者でもかっこよく決まるフィルパターン10選
以下のパターンは、右手(R)と左手(L)の手順で記載しています。すべて4拍目(または3〜4拍目)に入れるフィルです。BPM80から練習を始め、安定してきたらテンポを上げてください。
【レベル1】シンプルフィル(最初に覚える3つ)
パターン1:4拍目に4つ打ち
4拍目を16分音符で「タカタカ(RLRL)」とスネアで叩くだけの最もシンプルなフィルです。基本ビートを3拍まで普通に叩き、4拍目だけフィルに切り替えます。これだけでも曲に変化が生まれます。まずはこのパターンを完全にマスターしましょう。
パターン2:スネア連打
3拍目と4拍目でスネアを8分音符で「タンタンタンタン(RLRL)」と4回叩きます。パターン1より長いフィルですが、手順が単純なので安定しやすいのが特徴です。ロックの定番フィルで、多くのプロドラマーも頻繁に使用しています。
パターン3:ハイタム→ロータム→スネア
4拍目を16分音符で「ドコドコ」と叩きますが、ハイタム→ロータム→スネア→スネア(またはフロアタム)と太鼓を移動します。タムを使うことで音程差が生まれ、一気にドラムらしいフィルになります。タム間の移動で腕がぶつからないよう、手の軌道を意識してください。
【レベル2】使い勝手のいい定番フィル(4つ)
パターン4:タム回し
3拍目と4拍目でハイタム→ハイタム→ロータム→フロアタム、と順番にタムを叩き下ろすフィルです。「ドコドコドン」と音が高い方から低い方へ移動する王道パターンで、J-POPからロックまであらゆるジャンルで使われています。
パターン5:スネア→タム交互打ち
スネア→ハイタム→スネア→ロータムと交互に叩きます。16分音符で「タドタド(RLRL)」というリズムになります。スネアの「パン」という音とタムの「ドン」という音が交互に来るため、リズミカルで躍動感のあるフィルになります。
パターン6:フロアタム強調フィル
4拍目の頭でフロアタムを「ドン!」と1発叩き、残りの16分音符3つをスネアで「タカタ」と叩きます。フロアタムの重低音がアクセントになり、サビ前などの「ここぞ」という場面で効果的です。
パターン7:3連符フィル
4拍目を3連符(1拍を3等分)で「タカタ」と叩きます。16分音符のフィルとは違うグルーヴが生まれ、独特のうねりを出せます。手順はRLRが基本です。ジャズやブルース系の曲でよく使われますが、ポップスに入れても新鮮な響きになります。
【レベル3】ステップアップフィル(3つ)
パターン8:1小節フィル
8小節目を丸ごとフィルインにするパターンです。スネア4発→ハイタム4発→ロータム4発→フロアタム4発、と16分音符で各太鼓を4打ずつ叩き下ろします。拍の頭にアクセントを入れると、より力強いフィルになります。サビの入りなど、大きな場面転換で使います。
パターン9:バスドラム入りフィル
手のフィルに足(バスドラム)を組み合わせるパターンです。スネア→スネア→バスドラム→スネア、というパターンを16分音符で行います。手足の独立が求められるので難易度は上がりますが、音の厚みが格段に増します。
パターン10:ゴーストノート入りフィル
強弱をつけたフィルです。弱く叩く音(ゴーストノート)と強く叩く音(アクセント)を織り交ぜて、「タたタた」というニュアンスを出します。すべての音を同じ音量で叩くよりも、はるかに音楽的でかっこいいフィルになります。
| パターン | 長さ | おすすめジャンル | 難易度 |
|---|---|---|---|
| 1. 4つ打ち | 1拍 | 全ジャンル | ★☆☆☆☆ |
| 2. スネア連打 | 2拍 | ロック、ポップス | ★☆☆☆☆ |
| 3. タム移動 | 1拍 | ロック、ポップス | ★★☆☆☆ |
| 4. タム回し | 2拍 | 全ジャンル | ★★☆☆☆ |
| 5. 交互打ち | 2拍 | ポップス、ファンク | ★★☆☆☆ |
| 6. フロアタム強調 | 1拍 | ロック、ハードロック | ★★☆☆☆ |
| 7. 3連符 | 1拍 | ジャズ、ブルース、バラード | ★★★☆☆ |
| 8. 1小節フィル | 4拍 | ロック、メタル | ★★★☆☆ |
| 9. バスドラム入り | 1〜2拍 | ロック、ファンク | ★★★★☆ |
| 10. ゴーストノート入り | 2拍 | ファンク、R&B、ポップス | ★★★★☆ |
フィルインを曲の中で自然に使うコツ
テンポキープが最優先
フィルインの最大の敵は「走る(テンポが速くなる)」ことです。かっこいいフィルを叩こうとして気合が入ると、無意識にテンポが速くなりがちです。メトロノームを使って、フィルインの前後でテンポが変わらないことを必ず確認しましょう。フィルインが上手いドラマーとは「派手なフィルを叩ける人」ではなく「フィルの前後でテンポが全くブレない人」です。
フィルは短い方がかっこいい
初心者はつい長いフィルを入れたがりますが、実際の楽曲では1拍〜2拍のシンプルなフィルの方が圧倒的に多く使われています。短いフィルでもタイミングが正確であれば十分にかっこいいですし、基本ビートを崩すリスクも小さくなります。まずはパターン1〜3を完璧にしてから、徐々に長いフィルに挑戦しましょう。
曲に合わせて練習する
メトロノームでの基礎練習が安定したら、好きな曲に合わせてフィルインを入れる練習に移りましょう。最初はドラムパートが聴きやすい曲を選び、原曲のドラマーがどのタイミングで・どんなフィルを入れているか分析しながら真似するのが効果的です。ONE OK ROCKの「The Beginning」やBACK NUMBERの「高嶺の花子さん」は、フィルインがわかりやすくておすすめです。
🥁 講師・森山のワンポイントアドバイス
「フィルインの練習を始めると “もっと派手なフィルを叩きたい!” という気持ちが出てきますよね。気持ちはよくわかりますが、まずは簡単なパターンを完璧なタイミングで叩けることが大事です。プロのドラマーでも、曲中で使うフィルの8割はシンプルなものです。派手なフィルは “ここぞ” の場面で1回使うから効果がある。レッスンではその使い分けも一緒に学んでいきましょう。」
まとめ:フィルインでドラムがもっと楽しくなる
フィルインは、ドラムの楽しさを一気に広げてくれるテクニックです。基本ビートを叩くだけでは味わえない「見せ場」を作ることができ、バンドの中での存在感も格段に増します。まずはパターン1の「4つ打ち」から始めて、1つずつレパートリーを増やしていきましょう。10パターンをすべてマスターすれば、ほとんどの曲に対応できるようになります。
コアミュージックスクールのドラムレッスンでは、基本ビートからフィルイン、さらにはオリジナルのフィルを自分で作れるようになるところまで、段階的に指導しています。電子ドラム完備の防音スタジオで、思い切り叩いてみてください。





