DTMでEDMを作る方法|ドロップ・ビルドアップの作り方を徹底解説

DTM・作曲

フェスやクラブで流れるEDM(Electronic Dance Music)を自分でも作ってみたい——そう思ったことはありませんか?EDMはDTMとの相性が抜群に良いジャンルで、ギターやベースが弾けなくても、DAWとシンセサイザーさえあれば本格的な楽曲を作ることができます。川口駅徒歩2分のコアミュージックスクールでも、EDM制作に興味を持つ生徒さんが増えています。この記事では、EDMの基礎知識から、ドロップやビルドアップといった核心部分の作り方まで、ステップバイステップで徹底解説します。

DJブースとEDMフェスティバルの様子
EDMはDTMで完結できる音楽ジャンルの代表格。自宅からフロアを揺らす一曲を生み出そう

EDMのジャンル分類を知ろう

「EDM」はエレクトロニック・ダンス・ミュージックの総称であり、その中にはさまざまなサブジャンルが存在します。まずは主要なジャンルの特徴を理解しましょう。作りたい音楽の方向性を明確にすることが、制作の第一歩です。

ジャンル BPM 特徴 代表アーティスト
House 120-130 4つ打ちキック、グルーヴィなベースライン、温かみのあるシンセ Disclosure, Duke Dumont
Techno 125-150 反復的で硬質なキック、ミニマルな構成、暗いトーン Charlotte de Witte, Amelie Lens
Trance 128-150 壮大なメロディ、長いビルドアップ、感情的なブレイクダウン Armin van Buuren, Above & Beyond
Future Bass 140-170 揺れるコード、LFOウォブル、ボーカルチョップ Flume, San Holo
Dubstep 140-150(ハーフタイム70-75) 重低音のウォブルベース、ハーフタイムビート、攻撃的なドロップ Skrillex, Excision
Progressive House 126-132 緩やかな展開、レイヤードされたシンセ、壮大なドロップ Deadmau5, Eric Prydz

EDMの曲構成(アレンジメント)

EDMの曲構成にはある程度の「テンプレート」が存在します。この型を理解することで、プロレベルの展開力を持つ楽曲を作れるようになります。一般的なEDMは以下の構成です。

Intro(16〜32小節)→ Buildup(8〜16小節)→ Drop(16〜32小節)→ Breakdown(16〜32小節)→ Buildup 2(8〜16小節)→ Drop 2(16〜32小節)→ Outro(16〜32小節)

各セクションの役割を詳しく見ていきましょう。

Intro(イントロ)は、DJがミックスしやすいように設計するセクションです。キックとハイハットだけで始まり、徐々にパーカッションやベースラインを足していきます。BPMとキーの情報をリスナーの耳に馴染ませる役割があります。

Buildup(ビルドアップ)は、ドロップに向けてテンションを高めていくセクションです。ここの出来がドロップのインパクトを左右します。後で詳しく解説します。

Drop(ドロップ)は、楽曲のクライマックスです。メインのシンセリフ、重いキック、サイドチェインがかかったベースラインが一気に放出されます。EDMにおけるサビに当たる部分です。

Breakdown(ブレイクダウン)は、ドロップの後に設けるクールダウンのセクションです。パッドやボーカル、ピアノなどで穏やかな雰囲気を作り、次のビルドアップへの「溜め」を作ります。

キック(4つ打ち)の音作り

EDMの土台はキックドラムです。ジャンルによって求められるキックの音色は大きく異なりますが、基本的な音作りの考え方を覚えておけば、どのジャンルにも応用できます。

キックの3つの要素

EDMのキックはトランジェント(アタック)ボディ(パンチ)サブ(低域の余韻)の3要素で構成されます。

  • トランジェント(2kHz〜8kHz):キックの「カチッ」というアタック感。小さなスピーカーでもキックの存在が感じられる成分です。EQでこの帯域をブーストすると前に出てきます
  • ボディ(80Hz〜200Hz):キックの「ドン」という胴鳴り。150Hz付近にピークを持つHouseキック、100Hz付近にピークを持つTechnoキックなど、ジャンルで異なります
  • サブ(20Hz〜60Hz):体で感じる重低音。フェスやクラブのサブウーファーから再生される帯域です。ここが強すぎるとミックスが濁るので注意

キック制作の実践手順

既存のキックサンプルをそのまま使うのも全く問題ありませんが、自分で加工できるとオリジナリティが増します。以下の手順を試してみてください。

  1. サンプル選び:Splice、Cymatics、KSHMR Essentialsなどからジャンルに合ったキックを選ぶ。まずは3〜5個候補を出す
  2. EQ処理:30Hz以下をハイパスでカット(サブウーファー以下は不要)。200〜400Hzの「モコモコ帯域」を-2〜-4dBカット
  3. コンプレッション:アタックタイム10〜30ms(トランジェントを通す)、リリースタイム100〜200ms、レシオ4:1程度
  4. サチュレーション:軽くサチュレーションをかけて倍音を付加。SoundtoyのDecapitatorやiZotope Trashが定番
  5. レイヤリング:トップ(アタック担当)とボトム(サブ担当)を別サンプルから取り、レイヤーする。位相の確認を忘れずに
DAWでEDMを制作している画面
EDMのキック作りはサンプル選びから始まる。レイヤリングでオリジナリティを出そう

サイドチェインコンプレッションの設定

サイドチェインはEDMの「呼吸感」を生み出す最重要テクニックです。キックが鳴るたびにベースやパッドの音量を一瞬下げることで、キックの存在感を際立たせつつ、楽曲にポンピング感(うねり)を与えます。

サイドチェインの設定手順

  1. ベーストラック(またはパッドトラック)にコンプレッサーを挿す。DAW付属のもので十分です(Logic Pro: Compressor、Cubase: Compressor、Ableton: Compressor)
  2. サイドチェインの入力ソースをキックトラックに設定。これでキックの音量がコンプのトリガーになります
  3. パラメータ設定
    • スレッショルド:-30dB前後(キックの音量に合わせて調整)
    • レシオ:∞:1(リミッター的な設定)またはDAWの「Range」で-10〜-20dBに設定
    • アタック:0.1〜1ms(できるだけ速く)
    • リリース:100〜300ms(4つ打ちの場合、次のキックが来る前に音量が戻る長さ)
  4. リリースを曲に合わせて微調整。BPM 128の4つ打ちなら、1拍の長さは約469ms。リリースを200ms前後にすると、キックの「裏」で音が戻り始める自然なポンピングになります

プロのTips:最近はサイドチェイン専用プラグイン(Xfer LFOTool、Cableguys VolumeShaper、Nicky Romero Kickstart 2)を使うのが主流です。これらはキックの信号ではなく、カーブを描いてボリュームを制御するため、より正確にポンピングの形を作れます。LFOToolなら1/4ノートのプリセットを選び、カーブの形を微調整するだけで完璧なサイドチェインが得られます。

ビルドアップの作り方

ビルドアップはドロップへの期待感を最大限に高めるセクションです。うまく作れるかどうかで楽曲全体のクオリティが決まると言っても過言ではありません。ビルドアップの構成要素を一つずつ見ていきましょう。

1. スネアロール / クラップロール

最も基本的なビルドアップ要素です。4分音符のスネア→8分→16分→32分とノートを細かくしていくことで、テンションを段階的に高めます。

  • 最初の4小節:4分音符でスネア
  • 次の2小節:8分音符に倍速化
  • 次の1小節:16分音符に倍速化
  • 最後の1小節:32分音符でフィルイン
  • ベロシティを後半に向けて徐々に上げる(60→127)
  • ピッチを少しずつ上げるのも効果的(+2〜+5セミトーン)

2. ライザー(Riser)

ホワイトノイズやシンセの上昇音で「シュワーーーッ」と上がっていくサウンドです。ビルドアップの「背景」を埋める重要な要素。

  • ノイズライザー:ホワイトノイズをオートメーションでフィルターを開いていく。ローパスフィルターのカットオフを500Hz→15kHzまで8小節かけて上昇
  • ピッチライザー:シンセの音をピッチベンドで1〜2オクターブ上昇させる。Serum等でピッチエンベロープを使うと正確にコントロール可能
  • サンプルライザー:Splice等のライザーサンプルをそのまま使う。最も手軽で品質も高い

3. フィルターオートメーション

メインのシンセやベースラインにローパスフィルターをかけ、カットオフを徐々に開いていくテクニックです。音がだんだん明るくなり、「開放される」感覚を演出します。

  • ビルドアップ開始時:カットオフ 200〜500Hz(こもった状態)
  • ビルドアップ終了時:カットオフ 15〜20kHz(フルオープン)
  • レゾナンスを20〜40%に設定すると、フィルターの動きが強調されて効果的

4. ドラムの引き算

意外に重要なのが「音を抜く」テクニックです。ビルドアップの途中でキックを止めたり、ハイハットを消したりすることで、ドロップでそれらが戻ったときの衝撃が増大します。

  • ビルドアップの後半4小節でキックを止める
  • 最後の1小節で全てのドラムを止め、ライザーとスネアロールだけにする
  • ドロップの直前に0.5〜1拍の完全な無音(「ブレイク」)を入れると、ドロップの爆発力が最大になる

5. リバーブの活用

ビルドアップでリバーブのディケイタイムを徐々に長くし、ドロップの瞬間にリバーブをカット(ドライに戻す)するテクニックも定番です。空間が「広がって→一気に引き締まる」感覚が、ドロップのインパクトを倍増させます。

EDMフェスティバルのステージ
ビルドアップからドロップへの展開は、フロアを爆発させる最大の武器

ドロップ(メインセクション)の作り方

ドロップはEDMの顔であり、リスナーが最も記憶する部分です。以下の要素を組み合わせて、インパクトのあるドロップを作りましょう。

メインシンセリフ(リード)の作成

ドロップのメインメロディは、シンプルで覚えやすいものが理想です。Martin GarrixやAviciiの代表曲を分析すると、ドロップのメロディは4〜8音程度のシンプルなフレーズであることがわかります。

  • 音数は少なく:4〜8音のシンプルなフレーズを繰り返す
  • リズムは明確に:シンコペーションを使いつつも、頭拍にアクセントを置く
  • 音域はC4〜C6あたり:低すぎるとキックやベースと被り、高すぎると耳障りに
  • シンセの選択:Serum、Massive、Sylenth1のスーパーソウ(Supersaw)が王道

Supersawの作り方(Serumの場合)

  1. オシレータAにSawwave(ノコギリ波)を設定
  2. Unisonを7〜16ボイスに設定
  3. Detuneを0.15〜0.30に設定(広がりが出る)
  4. Blendを中央付近に
  5. フィルターをローパスに設定し、カットオフを適度に閉じる(高域のキツさを抑える)
  6. リバーブとディレイを軽くかけて空間を作る
  7. 同じ設定でオシレータBも追加し、+7セミトーン(5度上)または+12セミトーン(1オクターブ上)にデチューン

ベースラインの設計

ドロップのベースラインは、キックとの共存がカギです。

  • サブベース:サイン波ベースで40〜80Hz帯を担当。キックのサブ帯域と被らないよう、キックが鳴る瞬間はサイドチェインで避ける
  • ミッドベース:歪んだシンセベースで100〜500Hz帯を担当。FM変調やウェーブテーブルで個性を出す
  • ベースのルート音はコード進行に従い、シンプルな8分音符やシンコペーションパターンで

EDM制作におすすめのシンセとサンプルパック

カテゴリ 名前 価格帯 特徴
シンセ Xfer Serum $189(Splice月額$9.99) EDMの定番。ウェーブテーブル方式で音作りの自由度が最高
シンセ Native Instruments Massive X $149 太いベースサウンドが得意。Dubstep/Bass Musicに強い
シンセ LennarDigital Sylenth1 €139 CPU負荷が軽く美しいSupersaw。House/Tranceの定番
シンセ(無料) Vital 無料〜$80 Serumに匹敵する機能を持つ無料シンセ。初心者に最もおすすめ
サンプルパック Splice Sounds 月額$9.99〜 月額制で100音以上DL可。EDMキック・ライザーが豊富
サンプルパック Cymatics 無料パックあり 無料パックの品質が高い。メール登録でDL可能
FX Xfer LFOTool $49 サイドチェイン・トレモロ・オートパンを1台で
FX Cableguys ShaperBox 3 $99 フィルター・ボリューム・パン等のLFO制御がオールインワン

EDM制作の実践ワークフロー(8ステップ)

ここまでの知識を踏まえて、実際にEDMを1曲作る流れをまとめます。

  1. リファレンス曲を選ぶ:作りたいジャンルのプロの楽曲を3曲ほど選び、DAWに読み込む。構成・音色・展開を分析する
  2. テンポとキーを決める:ジャンル表を参考にBPMを設定。キーはAm、Cm、Fmなどマイナーキーが定番
  3. ドロップから作り始める:曲の核であるドロップのメインリフを最初に作る。8小節のループでOK
  4. コード進行を決める:EDMでは4コードの繰り返しが多い。定番は Am-F-C-G や Fm-Db-Ab-Eb
  5. ドラムパターンを組む:4つ打ちキック + オフビートハイハット + 2拍4拍にクラップ/スネアが基本
  6. ベースラインを作る:サブベース + ミッドベースのレイヤー。サイドチェインを忘れずに
  7. ビルドアップとブレイクダウンを作る:ドロップの素材を「引き算」してブレイクダウンを作り、そこからビルドアップを設計
  8. イントロとアウトロを追加:DJミックスを意識して、最低16小節のキック+ハイハットのイントロ/アウトロをつける

ミックスダウンのポイント

EDMのミックスでは、低域の処理が特に重要です。

  • キックとベースの住み分け:キックのサブ帯域が50Hz中心なら、ベースは60〜80Hzにピークを置く。EQでお互いの帯域を少しカットし合う(周波数スロッティング)
  • ハイパスフィルター:キック・ベース以外の全トラックに80〜150Hzのハイパスをかける。低域の濁りを排除
  • リミッター:マスターに透明感のあるリミッター(FabFilter Pro-L 2等)を挿し、-1.0dBをシーリングに設定。LUFS -8〜-6を目安にラウドネスを稼ぐ(ストリーミング向けなら-14 LUFS程度に抑えるのも一案)
  • モノ互換性の確認:クラブのサウンドシステムはモノ再生が多い。定期的にモノで確認し、音が消えるトラックがないかチェック

まとめ:EDMは「型」を知れば作れる

EDM制作は難しそうに見えますが、曲構成のテンプレート、サイドチェインの設定、ビルドアップの要素など、「型」を理解すれば着実にクオリティを上げることができます。まずはドロップの8小節ループから始めて、徐々に前後のセクションを作り足していくアプローチがおすすめです。

野口 悟

野口 悟(Eg・Ag・ウクレレ・DTM(logic)/作曲技法・音楽理論担当)
EDMは音楽理論の知識がなくても始められるジャンルですが、コード進行やスケールの基礎を知っていると、メロディの引き出しが格段に増えます。当スクールのDTMレッスンでは、EDMに必要なシンセの音作りからサイドチェインの設定まで、Logic Proの画面を見ながら実践的にお教えしています。まずは好きなEDMの曲を「コピー」してみることから始めましょう。

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