DTMを始めたいけれど、どのDAW(Digital Audio Workstation)を選べばいいかわからない——そんな方にまずおすすめしたいのがPreSonus Studio Oneです。無料版の「Prime」が用意されており、費用ゼロで本格的な音楽制作を始められます。川口駅徒歩2分のコアミュージックスクールでも、Studio Oneを使ったレッスンを行っています。この記事では、Studio Oneの全エディション比較からインストール手順、画面の見方、付属音源の活用法、そして最初の1曲を完成させるまでの流れを徹底解説します。
Studio Oneとは?他のDAWとの違い
Studio Oneは、アメリカのPreSonus社が開発するDAWソフトウェアです。2009年の初版リリース以来、着実にユーザーを増やし、2026年現在ではCubase、Logic Pro、Ableton Liveと並ぶ四大DAWの一角を占めています。最大の特徴はドラッグ&ドロップ中心の直感的なワークフローと、無料版(Prime)の存在です。
多くのDAWが無料版を廃止したり機能を大幅に制限したりする中、Studio One Primeは基本的な録音・編集・ミキシング機能をすべて備えており、「まず触ってみる」ハードルが極めて低いのが魅力です。音楽制作の経験がゼロでも、今日からすぐに始められます。
Studio Oneが支持される5つの理由
- 動作が軽い:他のDAWと比較してCPU負荷が低く、エントリークラスのPCでもスムーズに動作します。8GB RAMのノートPCでも快適に使えるケースが多いです
- ドラッグ&ドロップの徹底:音源、エフェクト、ループ素材、MIDIパターンなど、あらゆるものをドラッグ&ドロップで配置できます。右クリックメニューを探し回る必要がありません
- シングルウィンドウ設計:ミキサー、エディター、ブラウザがすべて1つのウィンドウに統合されています。マルチディスプレイがなくても効率的に作業できます
- マスタリング機能の内蔵(Professional版):他のDAWでは別途マスタリングソフトが必要になることが多いですが、Studio One Professionalには「プロジェクトページ」というマスタリング専用画面が内蔵されています
- 頻繁なアップデート:PreSonusは年に複数回のアップデートを行い、ユーザーのフィードバックを積極的に反映します。2025年にリリースされたバージョン7では、AIアシスト機能やクラウドコラボレーション機能が追加されました
エディション比較:Prime・Artist・Professional
Studio Oneには3つのエディションがあります。自分の目的と予算に合わせて選びましょう。
| 機能 | Prime(無料) | Artist(約12,000円) | Professional(約52,000円) |
|---|---|---|---|
| トラック数 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
| オーディオ録音 | ○ | ○ | ○ |
| MIDI編集 | ○ | ○ | ○ |
| 付属エフェクト | 9種類 | 37種類 | 54種類 |
| 付属インストゥルメント | Presence XT(基本音色) | Presence XT + Mai Tai + Mojito | 全音源 + Sample One XT |
| サードパーティVST/AU | × | ○ | ○ |
| コードトラック | × | ○ | ○ |
| マスタリング(プロジェクトページ) | × | × | ○ |
| スクラッチパッド | × | × | ○ |
| Sound Variations | × | × | ○ |
結論として、DTM初心者はまずPrime(無料版)で始めて、サードパーティプラグインを使いたくなったらArtistへ、本格的なマスタリングまで一貫して行いたくなったらProfessionalへアップグレードするのがベストです。アップグレード価格も用意されているので、段階的にステップアップできます。
インストール手順(Windows / Mac対応)
Studio One Primeのインストールは非常にシンプルです。以下の手順に沿って進めましょう。
ステップ1:PreSonusアカウントの作成
PreSonus公式サイトにアクセスし、右上の「My Account」からアカウントを作成します。メールアドレスとパスワードを設定するだけで完了です。Googleアカウントでのサインインにも対応しています。
ステップ2:Studio One Primeのダウンロード
アカウントにログインした状態で「Studio One」のページに移動し、「Prime」の「Download」ボタンをクリックします。Windows版(約300MB)またはMac版のインストーラーがダウンロードされます。
ステップ3:インストールと初回起動
- ダウンロードしたインストーラーを実行
- 利用規約に同意し、インストール先を選択(デフォルトのままでOK)
- インストール完了後、Studio Oneを起動
- PreSonusアカウントでログインを求められるので、先ほど作成したアカウント情報を入力
- 「Studio One Prime」のアクティベーションが自動で行われる
ステップ4:付属コンテンツのインストール
初回起動時に、付属の音源データやループ素材のインストールを求められます。すべてインストールすることを強く推奨します。合計で約2〜3GBの空き容量が必要ですが、これらの素材があるとないとでは制作の効率が大きく変わります。特にPresence XTの音色ライブラリは、ピアノ、ストリングス、ベース、ドラムなど基本的な楽器をカバーしており、追加購入なしで幅広いジャンルに対応できます。
画面構成を理解しよう
Studio Oneの画面は大きく5つのエリアに分かれています。最初にこの構成を理解しておくと、操作に迷うことがなくなります。
1. アレンジビュー(中央メインエリア)
楽曲のタイムライン全体を表示するメインの作業エリアです。ここにオーディオやMIDIのイベント(クリップ)が横方向に並びます。上部のルーラーで現在位置や小節数を確認でき、ドラッグで再生位置を移動できます。複数トラックを縦に重ねて表示し、各トラックの内容を視覚的に把握できます。
2. インスペクター(左側パネル)
選択中のトラックの詳細情報を表示します。音量、パン、インサートエフェクト、センドエフェクトなどをここで設定できます。「i」キーで表示/非表示を切り替えられます。
3. ブラウザ(右側パネル)
音源、エフェクト、ループ素材、ファイルなどを検索・プレビューできるパネルです。「F5」キーで表示を切り替えます。ここから目的の素材を見つけて、アレンジビューにドラッグ&ドロップするのがStudio Oneの基本ワークフローです。ブラウザは以下のタブで構成されています。
- Instruments:インストゥルメント(音源プラグイン)の一覧
- Effects:エフェクトプラグインの一覧
- Loops:ループ素材の一覧(タグで検索可能)
- Files:PCのファイルシステムから直接オーディオファイルを読み込み
- Pool:現在のソング内で使用中のファイル一覧
4. ミキサー(下部パネル)
従来のミキシングコンソールを再現したパネルです。各トラックのフェーダー、パンノブ、ソロ/ミュートボタン、インサートスロット、センドスロットが並びます。「F3」キーで表示を切り替えます。
5. エディター(下部パネル/ミキサーと切り替え)
MIDIイベントをダブルクリックするとピアノロールエディターが開き、ノートの追加・削除・移動・長さ変更が行えます。オーディオイベントをダブルクリックするとオーディオエディターが開き、波形の編集やストレッチが可能です。「F4」キーで表示を切り替えます。
付属音源を使いこなす
Studio Oneの付属音源は、価格帯を考えると驚くほど高品質です。特に以下の音源は積極的に活用しましょう。
Presence XT(サンプルプレイヤー)
Studio One全エディションに付属するマルチティンバーサンプルプレイヤーです。ピアノ、エレキギター、アコースティックギター、ベース、ストリングス、ブラス、ウッドウインド、ドラム、パーカッション、シンセパッドなど、約200種類の音色を収録しています。
Prime版でも十分な数の音色が使えますが、Artist/Professional版ではさらに拡張された音色ライブラリが付属します。音色の切り替えはブラウザの「Instruments」タブからプリセットを選ぶだけ。レイヤーやスプリットにも対応しており、複数の音色を重ねた複雑な音作りも可能です。
Mai Tai(アナログモデリングシンセ)※Artist以上
2基のオシレーター、マルチモードフィルター、3基のLFO、4基のエンベロープを搭載するバーチャルアナログシンセです。EDM、ポップス、アンビエントなど幅広いジャンルで使えるリード、パッド、ベース音色を作れます。プリセットも豊富で、そのまま使える実用的な音色が300以上収録されています。シンセサイザーの仕組みを学ぶ教材としても最適です。
Mojito(モノフォニックシンセ)※Artist以上
シンプルなモノフォニック(単音)シンセサイザーです。太いベースラインやリードサウンドを作るのに特化しています。パラメータが少ないため、シンセ初心者でも扱いやすく、それでいて驚くほど太い音が出ます。アシッドベースやファンキーなリードなど、アナログシンセ的なサウンドが得意です。
Impact XT(ドラムサンプラー)※Artist以上
16パッドのドラムサンプラーで、直感的なビートメイキングが可能です。各パッドにサンプルをドラッグ&ドロップするだけでキットを組み、ピッチ、フィルター、エンベロープ、エフェクトを個別に設定できます。付属のドラムキットプリセットだけでもロック、ポップス、エレクトロニカ、ヒップホップなど多彩なジャンルをカバーしています。
最初の1曲を作ろう:ステップバイステップ
ここからは実際にStudio Oneで1曲作る流れを、具体的な手順とともに解説します。ジャンルはシンプルなポップスを想定しますが、手法自体はどのジャンルにも応用できます。
ステップ1:新規ソングの作成
- Studio Oneを起動し、「新規ソング」を選択
- テンプレートは「Empty Song」を選択
- ソング名を入力(例:「My First Song」)
- サンプルレートは44100Hz(CD品質。特に理由がなければこれでOK)
- 解像度は24bit(16bitより余裕のあるダイナミクスレンジ)
- テンポは120BPM(後から変更可能)
- 「OK」をクリックして作成
ステップ2:ドラムトラックを作る
まずは曲の骨格となるドラムトラックから始めます。
- ブラウザ(F5)の「Instruments」タブからPresence XTを見つける
- Presence XTをアレンジビューの空きスペースにドラッグ&ドロップ → 自動でインストゥルメントトラックが作成される
- Presence XTの音色リストから「Studio Kit」などのドラムキットを選択
- ピアノロールエディター(ダブルクリックで開く)でキック、スネア、ハイハットを打ち込む
- 基本パターン例(4/4拍子、1小節):キックは1拍目と3拍目、スネアは2拍目と4拍目、ハイハットは8分音符刻み
- パターンを4〜8小節コピーして繰り返す(Ctrl+D / Cmd+Dで複製)
ステップ3:ベースラインを追加
- 同様にPresence XTの新しいインスタンスをドラッグ&ドロップし、ベース音色を選択
- コード進行を決める(初心者おすすめ:C – Am – F – G、いわゆるI-vi-IV-Vパターン)
- 各コードのルート音を8分音符で打ち込む。オクターブを変えたり、経過音を入れたりすることで動きが出る
- ベロシティ(音の強さ)を適度にバラつかせると人間味が出る。すべて同じ強さは機械的に聞こえるので注意
ステップ4:コード楽器を重ねる
- ピアノまたはエレピの音色でコードを打ち込む
- コードボイシングは密集配置(ルート・3度・5度・7度を近い音域で重ねる)が聞きやすい
- リズムはシンプルな全音符や2分音符から始め、慣れたらシンコペーションを入れる
ステップ5:メロディを考える
- シンセリードやピアノ音色で、コード進行に沿ったメロディを打ち込む
- 最初はスケール内の音だけで構成し、慣れたら経過音やアプローチノートを加える
- メロディのリズムにバリエーションをつける(長い音符と短い音符の組み合わせ)
ステップ6:曲の構成を組み立てる
イントロ(4小節)→ Aメロ(8小節)→ Bメロ(8小節)→ サビ(8小節)→ 間奏(4小節)→ Aメロ2 → Bメロ2 → サビ2 → アウトロ(4小節)のような構成にします。各セクションで楽器を足し引きして変化をつけましょう。
ステップ7:ミキシング
- ミキサー(F3)を開く
- 各トラックのフェーダーでバランスを調整。ボーカルがある場合はボーカルを中心に
- パンニングで楽器を左右に振り分ける(キック・スネア・ベースはセンター、ギターやキーボードは左右に)
- 付属のEQで各楽器の帯域を整理する(不要な低域をカットするだけでもスッキリする)
- リバーブをセンドエフェクトとして設定し、全トラックから適度に送る(空間を統一するため)
ステップ8:書き出し(エクスポート)
- 「ソング」メニュー →「ミックスダウンをエクスポート」を選択
- フォーマットはWAV(44.1kHz / 24bit)が標準。MP3で書き出す場合は320kbpsを選択
- 「リアルタイム処理」のチェックは通常オフでOK(処理速度が速くなる)
- 保存先を指定して「OK」→ 完成ファイルが生成される
覚えておくべきショートカットキー
Studio Oneでの作業効率を劇的に向上させるショートカットを紹介します。これらを体に染み込ませるだけで制作スピードが倍以上になります。
| ショートカット | 機能 | 使用頻度 |
|---|---|---|
| Space | 再生 / 停止 | ★★★★★ |
| Ctrl+Z / Cmd+Z | 元に戻す | ★★★★★ |
| Ctrl+D / Cmd+D | イベントを複製 | ★★★★★ |
| 1 / 2 / 3 | 矢印ツール / 範囲ツール / 分割ツール | ★★★★☆ |
| F3 | ミキサー表示切替 | ★★★★☆ |
| F4 | エディター表示切替 | ★★★★☆ |
| F5 | ブラウザ表示切替 | ★★★★☆ |
| Ctrl+Shift+N | 新規トラック作成 | ★★★☆☆ |
| P | ペイントツール(MIDIノート描画) | ★★★☆☆ |
| Q | クオンタイズ(ノートの位置補正) | ★★★☆☆ |
他のDAWからの乗り換えポイント
すでに他のDAWを使っている方がStudio Oneに乗り換える場合、いくつか押さえておくべきポイントがあります。
Cubaseから乗り換える場合
CubaseのプロジェクトファイルはStudio Oneで直接開くことはできませんが、MIDIファイルとオーディオファイルはインポート可能です。Cubaseの「トラックプリセット」に相当するのがStudio Oneの「FXチェーン」で、エフェクトの組み合わせを保存・再利用できます。操作体系はCubaseと似ている部分が多く、比較的スムーズに移行できるでしょう。
GarageBandから乗り換える場合
GarageBandはMac専用ですが、GarageBandで作成したプロジェクトをMIDIとオーディオに分けて書き出し、Studio Oneに読み込むことは可能です。GarageBandの感覚的な操作に慣れている方は、Studio Oneのドラッグ&ドロップワークフローに馴染みやすいはずです。
FL Studioから乗り換える場合
FL Studioのパターンベースのワークフローに慣れている方は、Studio Oneのリニアなタイムライン編集に最初は戸惑うかもしれません。しかし、Studio OneにもMIDIパターンのループ機能があり、FL Studioに近い感覚で作業することも可能です。FL Studioのプロジェクトを直接読み込むことはできませんが、ステムで書き出してインポートすれば移行できます。
Studio Oneの推奨スペック
Studio Oneは比較的軽いDAWですが、快適に動作させるための推奨スペックを確認しておきましょう。
| 項目 | 最低要件 | 推奨スペック |
|---|---|---|
| CPU | Intel Core i3 / AMD Ryzen 3 | Intel Core i7 / AMD Ryzen 7以上 |
| RAM | 4GB | 16GB以上 |
| ストレージ | 40GB空き | SSD 256GB以上 |
| ディスプレイ | 1366×768 | 1920×1080以上 |
| OS | Windows 10 / macOS 12 | Windows 11 / macOS 14 |
まとめ:Studio OneでDTMの世界へ踏み出そう
Studio Oneは、無料版から始められる手軽さと、プロフェッショナル版の本格的な機能を兼ね備えた、DTM初心者にとって最良の選択肢の一つです。ドラッグ&ドロップ中心の直感的な操作、軽快な動作、充実した付属音源——これらの要素が、音楽制作のハードルを大きく下げてくれます。
もちろん、DAWは道具にすぎません。大切なのは、実際に曲を作り、完成させ、発表することです。最初の1曲は拙くて当然。何曲も作るうちに、自然とスキルが向上していきます。Studio One Primeをダウンロードして、今日から音楽制作の第一歩を踏み出しましょう。
Studio Oneは僕のレッスンでもおすすめすることが多いDAWです。特にPrime(無料版)の存在は大きくて、「まずは無料で始めてみよう」と生徒さんに気軽に薦められます。操作の直感性が高いので、DAW特有の「何をどうすればいいかわからない」というストレスが少ないのも良いところ。まずはとにかく触ってみて、わからないことがあればレッスンで一緒に解決していきましょう。





