DTMで楽曲制作をしていると、「プリセットの音ばかり使ってしまう」「自分だけのオリジナルサウンドを作りたい」と思うことがありませんか?シンセサイザーの音作り(サウンドデザイン)は、DTMの醍醐味であり、オリジナリティを出すための最大の武器です。
この記事では、シンセサイザーの仕組みから具体的な音色の作り方まで、川口のコアミュージックスクールのDTM講師が初心者にもわかりやすく解説します。
シンセサイザーの基本構造
すべてのシンセサイザーは、基本的に以下の5つの要素で構成されています。これを理解すれば、どんなシンセでも音作りの考え方は同じです。
1. オシレーター(Oscillator / OSC)
音の「素材」を生み出す部分です。波形の種類によって基本的な音色が決まります。
| 波形 | 特徴 | 音の印象 | 向いている音色 |
|---|---|---|---|
| サイン波(Sine) | 倍音がない純粋な音 | 丸い、やわらかい | サブベース、ピュアなトーン |
| ノコギリ波(Saw) | すべての倍音を含む | 明るい、ブリリアント | リード、パッド、ストリングス、Supersaw |
| 矩形波(Square) | 奇数倍音のみ | 太い、中空的 | ベース、レトロサウンド、8bit風 |
| 三角波(Triangle) | 少ない奇数倍音 | サイン波よりやや明るい | サブベース、フルート風 |
| ノイズ(Noise) | すべての周波数がランダム | シャー、ザー | ハイハット、風の効果音、スネアのレイヤー |
2. フィルター(Filter)
音の「形を削る」部分です。オシレーターが生み出した音から、特定の周波数帯域を削ります。
- ローパスフィルター(LPF):最も一般的。高音域をカットし、こもった〜明るいの範囲で音色を変化させる
- ハイパスフィルター(HPF):低音域をカットし、音を細く・軽くする
- バンドパスフィルター(BPF):特定の帯域のみ通す。電話風、ラジオ風のサウンド
Cutoff(カットオフ)はフィルターが効き始める周波数。Resonance(レゾナンス)はカットオフ付近を持ち上げるパラメータで、上げるとキュルキュルした独特の音になります。
3. アンプ(Amplifier / AMP)
音の「音量」を決める部分です。単に音量を上下するだけでなく、エンベロープ(後述)と連動して音の立ち上がりや消え方を制御します。
4. エンベロープ(Envelope / ADSR)
音の「時間変化」を決める部分です。4つのパラメータで音の形を決めます。
| パラメータ | 意味 | 短いと | 長いと |
|---|---|---|---|
| Attack(アタック) | 鍵盤を押してから最大音量になるまでの時間 | パーカッシブ、鋭い | ゆっくり立ち上がる、パッド的 |
| Decay(ディケイ) | 最大音量からSustainレベルまで下がる時間 | すぐ減衰、プラック的 | ゆっくり減衰 |
| Sustain(サステイン) | 鍵盤を押し続けている間の音量レベル | すぐ消える | 鳴り続ける |
| Release(リリース) | 鍵盤を離してから無音になるまでの時間 | すぐ止まる、スタッカート | 余韻が残る |
5. LFO(Low Frequency Oscillator)
音の「揺れ」を作る部分です。人間の耳に聞こえないほど遅い周期の波を使って、他のパラメータを自動的に上下させます。
- LFO → ピッチ:ビブラート(音程の揺れ)
- LFO → フィルターカットオフ:ワウワウ効果
- LFO → 音量:トレモロ(音量の揺れ)
- LFO → パン:オートパン(左右の揺れ)
合成方式の種類
| 合成方式 | 仕組み | 特徴 | 代表的なシンセ |
|---|---|---|---|
| 減算合成 | 倍音豊富な波形をフィルターで削る | 最も基本。直感的に音作りできる | Diva、Serum、Vital |
| FM合成 | 波形同士を掛け合わせて倍音を生成 | 金属的・ベル的な音。複雑な倍音 | FM8、Dexed(無料) |
| ウェーブテーブル | 波形テーブルの位置をスイープして音色変化 | 進化する音色。EDMで人気 | Serum、Vital、Pigments |
| 加算合成 | サイン波を積み重ねて音色を構築 | 自由度が非常に高い。オルガン的 | Razor、Alchemy |
| グラニュラー | オーディオを微細な粒に分解して再構築 | 環境音・テクスチャー系 | Pigments、Portal |
初心者は「減算合成」から始めましょう。オシレーター→フィルター→アンプの流れが直感的に理解でき、すべての合成方式の基本になります。
音色別の作り方:具体的パラメータ設定
パッドサウンド(やわらかく広がる音)
- オシレーター:ノコギリ波 × 2(デチューン ±5〜15cent)+ サイン波をサブオシレーターとして追加
- フィルター:ローパス、Cutoff 40〜60%、Resonance 10〜20%
- アンプエンベロープ:A=500ms〜1s、D=0、S=100%、R=1〜2s
- フィルターエンベロープ:軽くかける(A=1s、D=2s、S=50%)でカットオフがゆっくり開く
- LFO:フィルターに軽くかける(Rate=0.5〜1Hz、Depth=10〜20%)
- エフェクト:リバーブ(Hall、長め)+ コーラスで広がり
リードサウンド(メロディ用の目立つ音)
- オシレーター:ノコギリ波 ×1 or 矩形波 ×1(モノフォニック設定)
- フィルター:ローパス、Cutoff 70〜90%、Resonance 20〜40%
- アンプエンベロープ:A=0〜10ms、D=200ms、S=70%、R=200ms
- グライド/ポルタメント:ON(Time=50〜100ms)でピッチがなめらかに移動
- LFO:ピッチに軽くかける(Rate=5〜6Hz、Depth=5〜10cent)でビブラート
- エフェクト:ディレイ(1/8 or dotted 1/8)+ ディストーション(軽め)
ベースサウンド(低域を支える太い音)
- オシレーター:ノコギリ波 + サイン波(1オクターブ下)をレイヤー。モノフォニック
- フィルター:ローパス、Cutoff 30〜50%、Resonance 0〜15%
- アンプエンベロープ:A=0ms、D=300ms、S=80%、R=50〜100ms
- フィルターエンベロープ:強くかける(A=0、D=200ms、S=20%)でアタック時に「ブン」とフィルターが開く
- エフェクト:コンプレッション(しっかり)、サチュレーション(軽め)で太さ追加。リバーブはかけない
プラックサウンド(弾くような短い音)
- オシレーター:ノコギリ波 or ウェーブテーブル
- フィルター:ローパス、Cutoff 20〜40%、Resonance 30〜50%
- アンプエンベロープ:A=0ms、D=100〜300ms、S=0%、R=100ms
- フィルターエンベロープ:強くかける(A=0、D=100〜200ms、S=0%)でカットオフが素早く閉じる
- エフェクト:ディレイ(1/16 or 1/8、フィードバック多め)でリズミカルに
おすすめシンセプラグイン
| プラグイン | 価格 | 合成方式 | 特徴 | おすすめ度 |
|---|---|---|---|---|
| Vital | 無料〜 | ウェーブテーブル | 無料版でもフル機能。Serum代替として人気 | ◎ 初心者に最もおすすめ |
| Serum | 約22,000円 | ウェーブテーブル | EDMの定番。プリセット・チュートリアル豊富 | ◎ |
| Diva | 約25,000円 | アナログモデリング | 最もアナログに近い音。温かく太い音色 | ○ アナログ好きに |
| Pigments | 約22,000円 | 複合型 | VA+WT+Granular+サンプル。UIが美しい | ○ |
| Surge XT | 無料 | 複合型 | オープンソース。多機能で高品質 | ○ 無料でVital以外を試したい方 |
プリセット改造テクニック
ゼロから音を作るのは難しいので、まずはプリセットを改造することから始めましょう。
- 気に入ったプリセットを選ぶ
- フィルターのCutoffを動かしてみる:音の明るさが変わる感覚を掴む
- ADSRを変えてみる:AttackやDecayを変えると音の「形」が変わる
- エフェクトのON/OFFを試す:リバーブやディレイが音にどう影響するか確認
- オシレーターの波形を変える:根本的な音色が変わる
- 改造したら「Save as」で別名保存:元のプリセットを残しておく
この「プリセット改造→パラメータの効果を理解→ゼロから音作り」の流れが、最も効率的な学習パスです。
シンセの音作りは「理屈」と「耳」の両方が必要です。この記事で理屈を掴んだら、あとは実際にツマミをいじって耳で確認する繰り返し。レッスンでは画面を一緒に見ながら「このパラメータを動かすとこう変わる」を体感してもらっています。LogicのAlchemyやフリーのVitalを使って、まずはパッドとベースの音作りから始めてみましょう!





