ボーカルミックス完全ガイド|歌ってみた・ボカロのMIXを自分でやる方法

DTM・作曲

「歌ってみた」をYouTubeやニコニコ動画に投稿したい、自分のボーカル曲をリリースしたい——そんなとき避けて通れないのがボーカルミックス(MIX)です。どんなに良い歌声でも、MIXが悪ければ素人感が拭えません。逆に、適切なMIXを施せば、自宅録音でもプロに近いクオリティを実現できます。川口駅徒歩2分のコアミュージックスクールでは、DTMレッスンでMIXの手法も指導しています。この記事では、ノイズ除去からマスタリングまで、ボーカルMIXの全工程をステップバイステップで解説します。

コンデンサーマイクとポップガード
ボーカルMIXは「録音」と「処理」の両方が重要。良い録音があってこそ良いMIXが成立する

ボーカルMIXの全体フロー

まずは全工程の流れを把握しましょう。各工程を順番に行うことが重要で、順番を間違えると後工程で問題が起きます。

  1. ノイズ除去(リップノイズ、環境ノイズ、ポップノイズ)
  2. タイミング補正(リズムのずれを修正)
  3. ピッチ補正(音程のずれを修正)
  4. EQ(イコライザー)(帯域バランスの調整)
  5. コンプレッション(ダイナミクスの制御)
  6. ディエッサー(サ行の歯擦音を抑える)
  7. サチュレーション(倍音の付加、温かみの追加)
  8. リバーブ / ディレイ(空間の付加)
  9. ハモリ / コーラスの処理
  10. 最終バランス調整とオートメーション

ステップ1:ノイズ除去

MIXの最初のステップは、録音に混入した不要なノイズの除去です。

使用するツール

ノイズの種類 原因 除去ツール
環境ノイズ(エアコン、PC冷却ファン) 録音環境 iZotope RX Voice De-noise / Spectral De-noise
リップノイズ(口の音) 口の乾燥 iZotope RX Mouth De-click / 手動カット
ポップノイズ(「ぱ」「ば」の破裂音) 息がマイクに当たる iZotope RX De-plosive / EQでハイパスフィルター
クリッピング(音割れ) 入力レベルオーバー iZotope RX De-clip(軽度のみ)/ 再録音が理想
ブレスノイズ 呼吸音 手動でゲインを下げる / RX Breath Control

iZotope RXはボーカルMIXの業界標準ツールです。無料版の「RX Elements」でも基本的なノイズ除去は可能です。RXを持っていない場合は、DAW付属のノイズゲートとEQでもある程度の対応ができます。

ブレスノイズについては、完全に除去するのではなく、ボリュームを-6〜-10dBほど下げるのがベストです。ブレスを完全に消すと、不自然で機械的な印象になります。歌っている最中の自然な呼吸は、歌の一部です。

ステップ2:タイミング補正

ボーカルのリズムが楽器トラックとずれている箇所を修正します。

タイミング補正の手順

  1. オケ(カラオケトラック)と合わせてボーカルを通して聴く
  2. リズムがずれている箇所をマーキング
  3. DAWの「タイムストレッチ」機能またはオーディオワープ機能で、該当箇所を前後に移動
  4. あまりにも大きくずれている箇所は再録音を検討

Ableton Liveの「Warp」、Logic Proの「Flex Time」、Cubaseの「AudioWarp」がそれぞれ対応機能です。補正量が大きいとアーティファクト(音質劣化)が発生するため、最小限の補正にとどめましょう。

ステップ3:ピッチ補正

音程のずれを修正する工程です。2大ツールはMelodyneとAuto-Tuneです。

Melodyne vs Auto-Tune

項目 Melodyne Auto-Tune
処理方式 オフライン(後から編集) リアルタイム / オフライン両対応
自然な補正 ◎(ノート単位で細かく制御) ○(Graphモードで可能)
ケロケロ(Auto-Tuneエフェクト) ×(得意ではない) ◎(Retune Speed=0で簡単に)
価格 Essential: 約13,000円 Access: 約15,000円/年
DAWバンドル Studio One / Cubaseに付属 付属なし

自然な補正が目的なら Melodyneケロケロエフェクトが目的なら Auto-Tuneを選びましょう。Studio OneにはMelodyne Essentialが付属しているので、追加投資なしでピッチ補正を始められます。

ピッチ補正のコツ

  • 100%正確にしない:すべての音を完璧なピッチに補正すると機械的に聞こえる。特にビブラートやしゃくりは歌い手の個性なので残す
  • 補正量は最大でも50セント以内:それ以上ずれている音は再録音が望ましい
  • 子音は補正しない:「さ」「し」「す」などの子音部分は音程が不安定なのが自然。母音部分のみ補正する

ステップ4:EQ(イコライザー)

ボーカルの帯域バランスを整えるEQ設定を、帯域ごとに解説します。

ボーカルEQの帯域別ガイド

帯域 周波数 処理 理由
超低域 80Hz以下 ハイパスフィルターでカット ゴロゴロした不要なノイズを除去
低中域 200〜400Hz -2〜-4dBカット 「モコモコ感」の除去。近接効果による低域の膨らみを抑える
中域 500Hz〜1kHz 歌い手により調整 声の太さを担う帯域。削りすぎると薄い声に
プレゼンス 2kHz〜5kHz +1〜+3dBブースト 声の「前に出る感」を強化。オケに埋もれにくくなる
エア 10kHz〜16kHz シェルビングで+1〜+2dBブースト 抜け感・空気感の付加。女性ボーカルに特に有効

ステップ5:コンプレッション

ボーカルのダイナミクス(最も小さい音と最も大きい音の差)を圧縮し、音量を均一に近づける処理です。コンプなしのボーカルは、小さな声がオケに埋もれ、大きな声が飛び出してしまいます。

ボーカル用コンプの設定ガイド

  • スレッショルド:ピーク時に-6〜-10dBのゲインリダクションがかかる位置に設定
  • レシオ:3:1〜4:1(自然な圧縮)。ポップスでは4:1が定番
  • アタック:5〜15ms(速すぎると子音のアタックが潰れる。遅すぎると圧縮が遅れる)
  • リリース:50〜100ms(次のフレーズが来る前にゲインが戻るように)
  • ニー:ソフトニー(スレッショルド付近で徐々にかかる設定)が自然

プロのテクニック:シリアルコンプレッション。1台のコンプで大きく圧縮するのではなく、2台以上のコンプを直列につなぎ、それぞれ軽めの圧縮をかけます。1台目で-3〜-4dB、2台目で-2〜-3dBの圧縮をかけると、1台で-6dBかけるよりも自然な仕上がりになります。

ステップ6:ディエッサー

「さ」「し」「す」「せ」「そ」の歯擦音(シビランス)は、コンプで圧縮した後に特に目立ちやすくなります。ディエッサーは、この歯擦音が来たときだけ高域を自動的に抑えるツールです。

  • 周波数帯域:5kHz〜10kHzの間(歌い手の声質によって異なる)
  • スレッショルド:歯擦音が鳴ったときだけ反応する位置に設定
  • リダクション量:-3〜-6dB程度。かけすぎると「さしすせそ」が言えなくなる

ステップ7:サチュレーション

サチュレーション(飽和歪み)は、アナログ機器が持つ微妙な歪みと倍音を再現するエフェクトです。デジタル録音は「冷たい」「平面的」と感じることがありますが、サチュレーションを加えることで温かみと奥行きが生まれます。

定番プラグイン:Soundtoys Decapitator、FabFilter Saturn 2、iZotope Trash。DAW付属のサチュレーションでも十分です。Dry/Wet(原音とエフェクト音の混合比)を20〜40%程度にするのがポイント。かけすぎると歪み感が目立ちます。

ステップ8:リバーブとディレイ

空間系エフェクトはボーカルに奥行きと広がりを与えます。必ずセンドエフェクト(Aux/Busトラック)として設定し、原音(ドライ)とエフェクト音(ウェット)を別々にコントロールできるようにしましょう。

リバーブの設定ガイド

パラメータ ポップス向け バラード向け
タイプ Plate / Room Hall / Chamber
ディケイ(残響時間) 0.8〜1.5秒 2.0〜3.5秒
プリディレイ 20〜40ms 30〜60ms
EQ(リバーブ側) ローカット300Hz / ハイカット8kHz ローカット200Hz / ハイカット10kHz

ディレイの設定ガイド

  • ショートディレイ(30〜80ms):ダブリング効果。ボーカルに厚みを出す
  • 1/8ノートディレイ:テンポに同期したリズミカルなディレイ。ポップスの定番
  • 1/4ノートディレイ:よりゆったりとしたエコー。バラードやアンビエントに
  • フィードバック:20〜40%(繰り返しの回数を制御。高すぎると音が溜まる)

ステップ9:ハモリ・コーラスの処理

ハモリやコーラスパートは、メインボーカルとは異なる処理をすることで、自然な立体感を演出できます。

  • パンニング:ハモリは左右に振る(L30%/R30%程度)。メインボーカルはセンター
  • 音量:メインボーカルの-6〜-10dB下。サビで少し上げるとインパクトが出る
  • EQ:メインボーカルと被る2〜4kHz帯域を少しカット。ハモリが主張しすぎないように
  • リバーブ:メインボーカルよりもウェット感を強めに。奥行きが出て自然に

まとめ:ボーカルMIXは「引き算」の美学

ボーカルMIXで最も大切なのは、「やりすぎない」ことです。EQもコンプもリバーブも、足しすぎれば音が濁り、歌い手の個性が失われます。素の歌声の良さを最大限に引き出しつつ、オケとの調和を取るのがMIXエンジニアの仕事です。最初は時間がかかりますが、10曲、20曲と経験を積むことで、自分の耳とスキルが確実に成長していきます。

野口 悟

野口 悟(Eg・Ag・ウクレレ・DTM(logic)/作曲技法・音楽理論担当)
ボーカルMIXは最初は難しく感じると思いますが、この記事に書いてある手順を一つずつ試していけば確実に上達します。特に大事なのはEQとコンプの順番を守ること、そしてリバーブをかけすぎないこと。レッスンでは実際の音源を使いながら、一緒にMIXの工程を体験してもらっています。自分の声がプロっぽく仕上がる瞬間は本当に楽しいですよ。

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