「Pretender」や「I LOVE…」を聴くたびに、あの突き抜けるような高音に心を奪われる方は多いでしょう。Official髭男dism(以下ヒゲダン)のボーカル・藤原聡さんの歌声は、男性ボーカリストの中でも特に「高くて、しかも感情的」という点で際立っています。「あの高音を自分でも出してみたい」「カラオケで歌うと声がつぶれてしまう」——そんな悩みを持つ方に向けて、この記事では藤原聡さんの発声の特徴と、実践的な高音域の出し方を詳しく解説します。
結論から言うと、藤原聡さんの歌声の核心は「ミックスボイス(ミドルボイス)の高度な活用」と「息の圧力コントロール」にあります。単純に「地声を張り上げる」や「裏声に逃げる」ではなく、その中間を器用に使い分けているのが最大の特徴です。以下では、発声の仕組みから練習ステップまで具体的に掘り下げていきます。
藤原聡の歌声の特徴を発声学的に分析する
まず藤原聡さんの歌声を発声学の観点から整理してみましょう。彼の音域はおよそA2(110Hz)〜E5(659Hz)と非常に広く、男性平均のコンフォートゾーンであるC3〜C4(約130〜262Hz)を大幅に超える高音を日常的に使っています。「Pretender」のサビでは繰り返しE4〜G4(330〜392Hz)の音域が連続し、「I LOVE…」ではB4(494Hz)付近の音を長くキープする場面があります。
ミックスボイスとは何か
人間の発声は大きく3つのレジスターに分けられます。
- チェストボイス(胸声):声帯全体が振動する低〜中音域の地声
- ミックスボイス(ミドルボイス):声帯の一部を使い、地声と裏声の中間の響きを作る
- ヘッドボイス/ファルセット(頭声):声帯の端だけが振動する高音の裏声
藤原聡さんが多用するのは2番目のミックスボイスです。特にサビの高音部分では「地声っぽい芯」を保ちながら軽やかに高音に到達しているのがわかります。喉頭筋(甲状披裂筋と輪状甲状筋のバランス)をうまく調整することで、声帯の振動面積を段階的に減らしながらも、音圧を保っています。
ビブラートとエモーショナルな揺らぎ
藤原さんのもう一つの特徴が、フレーズの語尾で使うビブラートです。速すぎず(1秒間に約5〜6回の揺れ)、深すぎないビブラートは、情感を込めながらも音程が安定して聞こえる効果を生みます。また、ところどころに入るしゃくり(音程を下から上げるアプローチ)やフォール(音を滑らかに下げる)が、機械的にならない人間味のある歌声を作っています。
高音域が出ない根本的な原因3つ
「藤原聡さんみたいに歌いたいのに、高音が出ない」という悩みには、大きく分けて3つの原因があります。自分がどのタイプかを把握することが、最短ルートへの第一歩です。
| 原因 | 症状 | 主な対策 |
|---|---|---|
| ①喉の締め・力み | 高音で声が詰まる、喉が痛くなる | 喉を開ける発声、軟口蓋の挙上 |
| ②呼吸の不安定 | 高音でかすれる、息が続かない | 腹式呼吸・息のコントロール練習 |
| ③声区の固定化 | 地声と裏声の間で「ひっくり返る」 | ミックスボイスのブリッジ練習 |
特に男性に多いのが①と③の組み合わせです。地声で頑張りすぎて喉を締め、結果的にE4(330Hz)あたりで声が割れてしまうパターンです。藤原聡さんの歌声を目指す場合、この「地声の過剰な張り上げ」から卒業することが最初の関門になります。
奥津 ユキ(ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTM(Logic)講師)より:
私が実際にレッスンで見ていると、ヒゲダンの曲を練習している生徒さんの多くが「地声でサビを乗り越えようとして喉を痛める」というパターンに陥っています。特に「Pretender」のサビ直前、E4〜F4あたりで急に力みが出て、その後の音程が崩れてしまうケースが非常に多いです。高音は「頑張って出す」のではなく「力を抜いて乗せる」感覚に切り替えることが、一番の近道だといつもお伝えしています。
ミックスボイスを身につけるための段階的練習法
ここからが実践パートです。ミックスボイスは1日や2日で習得できるものではありませんが、正しいアプローチを続ければ多くの方が3〜6ヶ月で体感的な変化を感じられます。以下のステップを順番に踏んでいきましょう。
Step 1:腹式呼吸の定着(1〜2週間)
発声の土台は呼吸です。仰向けに寝てお腹に手を置き、鼻からゆっくり吸って腹部が膨らむのを確認します。吸気4秒・保持2秒・呼気8秒のリズムを1日10セット行いましょう。立った状態で同じことができるようになれば合格です。
腹式呼吸が定着すると、横隔膜が安定した「息の土台」を作ってくれるため、高音を出す際に喉への負担が大幅に減ります。
Step 2:ハミングでブリッジを探す(2〜4週間)
「ハミング(鼻歌)」は喉への負荷が低い状態でミックスボイスの感覚を探るのに最適な練習です。
- 口を軽く閉じ、「んーーー」と低音から始める
- 少しずつ音程を上げていく(ピアノやアプリで確認するとなおよい)
- 声が「ひっくり返りそうになる」音程(E4〜G4付近)でも、なめらかに上がり続けるよう意識する
- 「ひっくり返る感覚」が消えてきたら、口を少し開けて「ナーーー」に切り替える
この「ひっくり返りそうな音域」を声楽ではブリッジ(換声点・パッサッジョ)と呼びます。男性の場合はE4(330Hz)〜G4(392Hz)あたりがブリッジになることが多く、ここを滑らかに通過できるようになることが「ミックスボイス習得」の実感につながります。
Step 3:「ウ母音」スケール練習(毎日5〜10分)
日本語の母音の中で最も喉への負担が少ないのが「ウ」です。口をすぼめながら「ウ―ウ―ウ―」とスケール(音階)を上行・下行することで、喉を締めずに音程を変える感覚を養えます。DAWアプリ(GarageBandやLogic Pro X)でピアノロールを表示しながら音程を確認するか、スマートフォンの「Perfect Piano」などのアプリを活用すると効率的です。
Step 4:ヒゲダン楽曲でのフレーズ練習(1〜3ヶ月)
発声の基礎ができてきたら、実際の楽曲を使った練習に移ります。おすすめの順番は以下のとおりです。
| 曲名 | 練習ポイント | 目安BPM | 難易度 |
|---|---|---|---|
| ノーダウト | Aメロの息の使い方、ブリッジ通過 | 約120 | ★★☆☆☆ |
| 115万キロのフィルム | メロの跳躍音程、ビブラート導入 | 約92 | ★★★☆☆ |
| Pretender | サビのミックスボイス連続、感情表現 | 約95 | ★★★★☆ |
| I LOVE… | 高音維持・B4付近のロングトーン | 約80 | ★★★★★ |
「ノーダウト」はテンポが速く音域が比較的安定しているため、初めてミックスボイスを試す練習曲として使いやすいです。「I LOVE…」はスローテンポながら高音のキープ時間が長く、息のコントロール能力が強く問われる上級曲です。
藤原聡のような「感情表現」を再現するテクニック
音程やミックスボイスの習得だけでは、藤原聡さんの歌声に近づけません。彼の歌の魅力の半分は感情表現にあります。ここでは技術的に再現できるポイントに絞って解説します。
「しゃくり」の使い方
藤原さんは音符の頭を少し低い音程から入り、すぐに本来の音程に滑らかに上げる「しゃくり」を効果的に使っています。「Pretender」の「君の心に咲いた」の「き」の入りなどが典型的な例です。これは音程をわずか(約半音〜1音分)下から入ることで生まれる「人間らしい息づかい」で、練習では意図的に少し低めから入ることを意識するところから始めましょう。
語尾の「フォール」と「ビブラート」の切り替え
フレーズの語尾で使うテクニックとして、「フォール(音を下に滑らせる)」と「ビブラート(音を揺らす)」があります。藤原さんは歌詞の感情的な重さによってこれを使い分けており、寂しさや後悔を伴うフレーズではフォールを多用し、高揚するフレーズではビブラートを使う傾向があります。自分の歌を録音して聴き返し、語尾の処理をチェックしてみましょう。
マイクの持ち方と距離感
ライブやカラオケでの再現度を上げるには、マイクワークも重要です。高音の強いフレーズではマイクをやや遠ざけ(5〜10cm)、柔らかく囁くようなフレーズでは近づける(2〜3cm)ことで、音量差をコントロールしやすくなります。自宅で練習する場合、カラオケ用ダイナミックマイク(SHURE SM58などが定番)を使って実際に手に持った状態で練習することをおすすめします。SM58の実勢価格は1万円前後で、長く使えるスタンダードな1本です。
奥津 ユキ(ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTM(Logic)講師)より:
感情表現の部分でよく生徒さんから相談されるのが、「頑張って感情を乗せようとすると、かえって声が硬くなる」という悩みです。私が現場でお伝えしているのは、まず歌詞を一度「話しかけるように」声に出してみることです。歌うモードを一度外して、日常会話のトーンで歌詞を読んでみると、しゃくりやフォールが自然と出てきます。藤原聡さんの歌が「しゃべっているみたい」と感じる理由も、この”会話的なアプローチ”が根底にあるからだと思っています。
自宅でできる効率的な練習環境の整え方
練習の質を上げるために、環境整備も大切です。以下に最低限揃えておきたいアイテムと費用の目安をまとめました。
| アイテム | 用途 | 費用目安 |
|---|---|---|
| ダイナミックマイク(SHURE SM58等) | 本番に近い環境での練習 | 約10,000円 |
| ピッチ矯正アプリ(Voicetoner等) | リアルタイム音程確認 | 無料〜月600円 |
| DAWソフト(Logic Pro X等) | 録音・自分の歌の分析 | 約28,000円(買い切り) |
| 防音イヤーマフ or 防音パネル | 近隣への配慮・集中環境 | 3,000〜15,000円 |
| カラオケ音源(JOYSOUNDアプリ等) | 採点機能で音程確認 | 月600〜1,000円 |
特に「自分の歌を録音して聴き返す」習慣は、独学で上達するうえで最も効果の高い行動の一つです。DAWを使えればDTM・作曲の学習と並行して自分の歌声を編集・分析できるため、一石二鳥の投資と言えます。
独学の限界とボイストレーニングを活用すべきタイミング
ここまで独学での練習法を解説してきましたが、「何ヶ月やっても高音がつぶれる」「自分の声のどこが問題かわからない」という状況になった場合は、プロ講師によるフィードバックが大きな突破口になります。
独学の主な限界は次の3点です。
- 自分の声を客観的に聴けない:録音でも、聴き慣れた自分の声のクセには気づきにくい
- 間違った発声フォームの固定化:誤った筋肉の使い方が定着すると、修正に時間がかかる
- モチベーション維持が難しい:成果が見えにくい時期は継続が困難になりやすい
ボイストレーニングの相場は、個人レッスン1回(60分)で5,000〜15,000円程度が多く、スクールでは月2〜4回のコースが一般的です。独学期間と組み合わせながら通うことで、コストを抑えつつ確実に上達できます。
コアミュージックスクールのボーカル講座では、現役プロ講師がマンツーマンでレッスンを行っており、ヒゲダン楽曲のような高音域を使うJポップも得意分野の一つです。生徒一人ひとりの声質や課題に合わせたアドバイスが受けられるため、「どうしても高音が出ない」というお悩みを持つ方に特に向いています。
まとめ:藤原聡の歌い方を自分のものにするために
この記事で解説した内容を改めて整理します。
- 藤原聡さんの高音の核心はミックスボイスの活用と息の圧力コントロール
- 高音が出ない原因は主に「喉の力み」「呼吸の不安定」「声区の固定化」の3つ
- 練習は腹式呼吸→ハミング→スケール→楽曲練習の順番で段階的に進める
- 感情表現の再現には「しゃくり」「フォール」「ビブラート」の意図的な使い分けが有効
- 自分の歌を録音して聴き返す習慣が上達の最大の近道
- 独学で壁を感じたらプロのフィードバックを活用する
大切なのは「正しいアプローチを継続すること」です。高音域は才能ではなく、正しい筋肉の使い方と息のコントロールによって後天的に開発できます。焦らず、楽しみながら取り組んでみてください。
コアミュージックスクールでは、川口駅徒歩2分の立地で現役プロ講師によるマンツーマンのボーカルレッスンを提供しています。「ヒゲダンの曲を気持ちよく歌いたい」「高音をきれいに出したい」という目標をお持ちの方は、ぜひ一度無料体験レッスンにお越しください。初心者の方から経験者の方まで、現在の状態に合わせた内容でレッスンをご用意しています。まずはお気軽にご相談ください。
コアミュージックスクール公式サイトでは、ボーカル以外にもピアノ・ギター・DTMなど全9コースの情報をご覧いただけます。音楽を楽しむ第一歩を、川口から始めてみませんか。



