「自分の声、聞きとりにくいって言われた」「オンライン会議中にこもって聞こえると指摘された」——そんな経験はありませんか?テレワークやオンラインミーティングが日常になった今、「声の質」は仕事の評価にも直結する重要なスキルになっています。
結論から言うと、オンライン会議で聞きやすい声を出すには、①適切なマイク環境の整備、②腹式呼吸を使った発声、③明瞭に届ける話し方の3つを組み合わせることが近道です。この記事では、現役ボーカル講師の知見をもとに、今日から実践できる具体的な方法を順番に解説します。機材の選び方から声のトレーニング法まで、ひととおり把握できる構成になっていますので、ぜひ最後まお読みください。
そもそも「聞きやすい声」とはどういう声か?
音声のプロが扱う周波数帯域の観点から言うと、人の声で特に明瞭度(話の聞き取りやすさ)に影響するのは500Hz〜4,000Hzの帯域です。この範囲が適切なレベルで届いていれば、相手は内容を聞き取りやすくなります。逆に、マイクの品質が低かったりエコーが混入したりすると、この帯域がマスクされて「こもって聞こえる」「何を言っているか分からない」という状態になります。
また、声の大きさ(音圧)だけでなく、滑舌・スピード・息のコントロールも聞きやすさに大きく影響します。特にオンラインでは音声が圧縮処理されるため、モゴモゴした発音はさらに不明瞭になりやすいという特徴があります。ZoomやMicrosoft Teamsなどの音声コーデックは、帯域を節約するためにノイズサプレッションや音声圧縮を行っており、発音が不明瞭だとそのアルゴリズムが余計なフィルタリングをかけてしまうことがあります。
「聞きやすい声」3つの要素
- 明瞭度:子音がはっきり聞こえる(特に「た行」「さ行」「か行」)
- 適切な音量:-12dBFS〜-6dBFSの範囲に収まっていること(録音・配信の基準値)
- 安定した息の流れ:文中で音量が極端に上下しない
この3点を意識するだけで、相手の「聞き取る負担」が大幅に減ります。
マイク環境を整える:機材と設置の基礎知識
どれだけ発声を改善しても、マイクの品質が低ければ限界があります。まず環境を整えることが先決です。
ノートPCの内蔵マイクは使わないほうがよい理由
ノートPCの内蔵マイクは、キーボードタイプ音やファン音を拾いやすく、口元から30〜50cm以上離れた位置に設置されることが多いため、音声のS/N比(シグナル対ノイズ比)が悪くなりがちです。音量を上げると同時にノイズも増幅されるという悪循環が起きます。
おすすめのマイク種類と価格帯の比較
| 種類 | 代表機種 | 価格帯(目安) | 特徴 | オンライン会議向け度 |
|---|---|---|---|---|
| USBコンデンサーマイク | Blue Yeti、RODE NT-USB Mini | 8,000〜25,000円 | 高音質・セッティング簡単 | ◎ |
| ヘッドセット(有線) | ゼンハイザー SC 60 | 5,000〜15,000円 | 口元に固定・ハウリング少 | ◎ |
| ピンマイク(ラベリア) | RODE smartLav+ | 5,000〜12,000円 | コンパクト・動きやすい | ○ |
| 完全ワイヤレスイヤホン | AirPods Pro | 30,000〜40,000円 | 手軽・ノイズキャンセル有 | △(音質は内蔵より良い) |
| ノートPC内蔵マイク | 各種ノートPC | 追加費用なし | 手軽だがノイズが多い | △ |
予算が限られている場合でも、3,000〜5,000円程度のUSBヘッドセットに変えるだけで相手の聞こえ方は大きく改善します。
マイクの設置位置と向き
コンデンサーマイクは口元から15〜20cm、やや斜め前に設置するのが基本です。正面に置くと「ポップノイズ(破裂音)」が入りやすいため、少し角度をつけるか、ポップガードを使うのがおすすめです。また、マイクをモニターに近づけすぎると、モニターのファン音を拾う場合があるので注意してください。
発声の基本:腹式呼吸で「通る声」を作る
機材を整えた次は、声そのものを改善するステップです。ここからはボーカルトレーニングの観点が重要になります。
腹式呼吸がオンライン声に効く理由
胸式呼吸(肩や胸を使う呼吸)では、声帯への空気の流れが不安定になりやすく、語尾が小さくなったり音量が揺れたりします。一方、腹式呼吸では横隔膜を下げて肺の下部から安定した息を供給できるため、声のダイナミクスが均一になり、マイクに一定の音圧を届けやすくなります。
10分でできる腹式呼吸の確認方法
- 仰向けに寝て、お腹の上に手を置く
- 鼻から4秒かけてゆっくり吸う。お腹が膨らむのを感じる
- 口から8秒かけてゆっくり吐く。お腹がへこむのを意識する
- これを5回繰り返す(所要時間:約2〜3分)
- 立った状態でも同じ感覚を再現できるか試す
立って話すときに腹式呼吸の感覚が維持できれば、発声時のブレが大幅に減ります。最初は違和感があっても、毎日5〜10分の練習を2週間続けると自然にできるようになってきます。
奥津 ユキ(ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTM(Logic)講師)より:
私が実際にレッスンで新しい生徒さんを迎えるとき、最初に「普段、会議や電話で声が届かないと言われることはありますか?」と聞くようにしています。驚くほど多くの方が「ある」と答えてくださるんです。原因を確認すると、ほぼ全員が胸式呼吸で話していて、語尾になるにつれて息が細くなっています。腹式呼吸に切り替えるだけで「声が遠くまで届く感覚が初めてわかった」とおっしゃる方も少なくありません。まずここから変えていくのが一番の近道だと感じています。
「声帯閉鎖」と息の関係
声帯(声門)がしっかり閉じた状態で息を流すと、倍音が豊かに出て「芯のある声」になります。これをボーカルの世界では「声帯閉鎖」と呼びます。声帯の閉鎖が弱いと息が漏れた「ブレス声」になり、マイクで拾ったときにサーッとしたノイズのように聞こえてしまいます。声帯閉鎖を鍛えるシンプルな練習法は「ン〜」と鼻歌を低音から高音まで一定の音量でスライドさせること(ハミングスライド)。これを1回5分、毎日続けるだけで声帯周辺筋の連携が改善されます。
滑舌と話し方の改善:聞こえやすい「届け方」のコツ
発声の土台ができたら、次は「届け方」を磨きます。いくら声量があっても、言葉がモゴモゴしていては伝わりません。
口の開き方と子音の強調
日本語の明瞭度を上げるために特に重要なのが子音の立ち上がりです。「k(カ行)」「t(タ行)」「s(サ行)」「p(パ行)」は、口の形と舌の動きが声の輪郭を作ります。普段の会話では省エネのために子音を弱めがちですが、オンライン会議では意識的に1.2〜1.5倍ほど口を大きく開けて話すだけで明瞭度がぐっと上がります。
話すスピードと「間」の使い方
オンライン音声は、ネットワークの遅延(一般的なビデオ会議の遅延は100〜300ms程度)があるため、早口だと言葉が「重なる」ように聞こえます。目安として1分間に250〜300文字(通常の会話より約20%遅め)のペースを意識すると、相手が内容を処理しやすくなります。また、文の区切りで0.5〜1秒の「間」を入れるだけで、聴衆の理解度が大きく変わります。アナウンサーが話す際の「間」の使い方は非常に参考になります。
声のトーンとピッチコントロール
声の高低(ピッチ)は感情や意図を伝える重要な要素です。一般的に、男性の話し声は100〜150Hz、女性は180〜250Hzが中心帯域と言われますが、重要な情報を伝える際はピッチを少し下げ、ゆっくり話すと「信頼感・落ち着き」が増します。逆にプレゼンの冒頭でエネルギーを出したいときは、少し高め・速めで入るという使い分けも有効です。
よくある「聞き取りにくい話し方」のパターン
- 語尾が小さくなる(文末で息が尽きる)
- 鼻声になる(口の開きが小さい・緊張による鼻腔の詰まり)
- 単調なピッチで話し続ける(抑揚がなく眠くなる)
- 「えー」「あー」などフィラー(つなぎ言葉)が多い
- 早口でまとめて言い切ろうとする
心当たりのある項目があれば、まずその1点だけを意識して話してみてください。すべてを同時に直そうとすると話すこと自体が怖くなってしまうので、一点集中が効果的です。
環境ノイズとエコーへの対策
どれだけ発声が良くても、背景のノイズやエコーがひどければ相手の集中力は削がれます。環境面の対策もセットで行いましょう。
エコー(反響)を減らす部屋づくり
コンクリートや木の床、何も置いていない壁がある部屋では、声が反響して「風呂場のような響き」になります。これを防ぐには:
- カーテンやラグ、ソファなど布製品を近くに置く(吸音効果)
- 本棚や段ボールを後ろの壁に配置する(乱反射で響きを分散)
- クローゼットの中や壁際に寄って話す(反射面を減らす)
専門的な防音パネル(例:YAMAHA 吸音パネルACP-2、約10,000〜15,000円)を設置する方法もありますが、まずは布製品の活用から試してみてください。
ソフトウェア側のノイズ処理
ZoomやTeamsには内蔵のノイズサプレッション機能があります。ただし、設定が「強」になっていると声の倍音成分まで削ってしまい、逆にこもって聞こえることがあります。「標準」か「低」に設定しておき、マイク側の音質を上げるほうが長期的に良い結果になりやすいです。
また、DAWソフト(Logic ProやAbleton Liveなど)を使い慣れている方なら、仮想オーディオデバイス(BlackholeやLoopback)を経由してEQやコンプレッサーを挟むことで、よりプロフェッショナルな音質で会議に参加することもできます。これはポッドキャスターやYouTuberがよく使う手法です。
奥津 ユキ(ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTM(Logic)講師)より:
私が現場でよく聞くのは「ソフトのノイズキャンセルに頼りすぎて、逆に声がロボットみたいになった」という失敗談です。Logic ProでDTMを学んでいる生徒さんに話すのですが、EQで200〜400Hzのこもりをほんの少し削って、2,000〜4,000Hzの明瞭帯域を1〜2dBブーストするだけで、会議の声がびっくりするほど変わります。ソフトウェア任せにするより、声の出し方と音響処理を組み合わせるのが一番効果的だと実感しています。
声のトレーニングを習慣にするための実践プラン
ここまでの内容をまとめて、「1日10〜15分でできる声のトレーニングルーティン」を提案します。継続することで、2〜4週間で変化を感じる方が多いです。
毎朝10分ルーティン(例)
| 時間 | 内容 | ポイント |
|---|---|---|
| 0〜2分 | 腹式呼吸の確認(4秒吸・8秒吐を5セット) | お腹の動きに集中 |
| 2〜4分 | ハミングスライド(低音→高音→低音) | 鼻と口の振動を感じながら |
| 4〜7分 | 五十音の明瞭発声(タ・テ・ト・サ・セ・ソなど子音強め) | 口を大きく開ける |
| 7〜10分 | 当日の会議や通話で話す内容を声に出してリハーサル | スマホで録音して聞き直す |
特に「録音して聞き直す」ステップは非常に重要です。自分の声はリアルタイムには骨伝導で聞こえているため、録音したものとは異なって聞こえます。客観的に自分の声を把握することで、改善点がはっきり見えてきます。
声の変化を感じるまでの目安期間
- 1〜3日目:腹式呼吸の感覚をつかむ段階。まだ変化は出にくい
- 1週間後:声量の安定感が増す。語尾の消えが減ってくる
- 2〜3週間後:滑舌に意識が向き始め、子音がクリアになってくる
- 1〜2ヶ月後:腹式呼吸が無意識にできるようになり、声全体の質が安定する
独学でも継続すれば確実に変化はありますが、誤った呼吸法や発声法が定着してしまうリスクもあります。特に「頑張っているのに変わらない」と感じたときは、第三者(講師)に見てもらうのが最短ルートです。
ボーカルレッスンがオンライン声の改善に効く理由
「ボーカルレッスンは歌がうまくなるためのもの」と思っている方も多いですが、実は話し声の改善にも非常に有効です。ボーカルレッスンで扱う腹式呼吸、声帯のコントロール、音程の安定、滑舌強化などは、すべてオンライン会議の「聞きやすい声」に直結します。
声楽・ボイストレーニングのレッスンでは、個人の声の癖(例:鼻声傾向、声帯の閉じが弱い、舌根が上がっている等)を講師が耳で聴いて即座にフィードバックしてくれます。これは独学では難しいところです。
歌うことが目的でなくても、「話し声をよくしたい」「人前で自信を持って話せるようになりたい」という動機でボーカルレッスンを受ける方は少なくありません。コアミュージックスクールのボーカル講座でも、そういったご要望の生徒さんを現役プロ講師がマンツーマンで丁寧に指導しています。
また、DTMを活用して自分の声を録音・分析したい方にはDTM+作曲講座を組み合わせて受講する方法もあります。Logic Proなどのソフトを使って声のEQやコンプを学べば、会議音声のクオリティアップにも応用できます。
まとめ:今日からできる3つのアクション
- マイクを変える:ノートPC内蔵マイクからUSBコンデンサーマイクまたはヘッドセットへ(予算3,000〜25,000円)
- 腹式呼吸を練習する:毎朝2〜3分、仰向けで腹の動きを確認する。2週間継続を目標に
- 録音して聞き直す:スマホのボイスメモを使い、自分の会話を客観的に把握する
これらを実践した上で「もっと根本から声を変えたい」と感じたら、ボイストレーニングのプロに相談するのが最も確実な方法です。
川口駅徒歩2分・コアミュージックスクールで無料体験レッスン受付中
コアミュージックスクールは、川口駅徒歩2分の音楽教室です。ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTMなど全9コースを現役プロ講師によるマンツーマンで指導しています。
「歌が上手くなりたい」はもちろん、「話し声を改善したい」「人前で自信を持って声を出せるようになりたい」という方も、まず無料体験レッスンでご自身の声の状態を確認してみてください。初回は講師が声の癖や呼吸の使い方を丁寧に確認し、具体的な改善点をお伝えします。
オンライン会議の声に悩んでいるなら、まずは一歩踏み出してみてください。声は練習で必ず変わります。



