「ボーカルフライってどうやって出すの?」「エッジボイスと何が違うの?」と疑問を持ちながら練習している方は多いのではないでしょうか。SNSや動画サービスでプロ歌手の歌声を聴いて「あの独特のガサガサした声をマスターしたい」と思ったとき、具体的な練習法がわからず手が止まってしまいがちです。

結論からお伝えすると、ボーカルフライとエッジボイスは声帯の鳴らし方が根本的に異なる別の技術です。ボーカルフライは声帯をごく弱く閉じて低周波数帯(おおむね70〜100Hz以下)でポコポコと音を鳴らす状態を指し、エッジボイスは声帯をしっかり閉じたまま高速かつ激しく振動させることで生まれるザラつきのある金属的な響きを指します。どちらも「声帯の閉鎖力をコントロールする」という共通の土台があるため、セットで練習すると上達が早くなります。
発声メカニズムの違いから具体的な練習ステップ、実際の楽曲への応用まで、順を追って解説します。コアミュージックスクールのボーカルレッスンで日々生徒さんに伝えている現場目線の情報を交えながらご紹介しますので、ぜひ最後まで読んでみてください。
ボーカルフライとエッジボイスの違いを正しく理解する
まず「何が違うのか」を明確にしておきましょう。混同したまま練習すると、長時間やっても目標の音に近づけないまま終わってしまうことがあります。
ボーカルフライとは
ボーカルフライ(Vocal Fry)は英語で「油で揚げるときの音」を意味します。声帯を最も弱い張力で閉じ、呼気をごく少量だけ流すことで声帯がゆっくりポコポコと振動する状態です。振動数は通常の会話声(男性で約100〜150Hz、女性で約200〜250Hz)よりはるかに低く、50〜80Hz前後まで落ちます。声のレジスターとしては「モーダルレジスター(地声)」のさらに下に位置する「パルスレジスター」とも呼ばれます。
一般的には
- 歌いだしや歌い終わりの装飾音として使う
- 囁き声に色気を加えるスタイリングとして使う
- 声帯閉鎖の感覚をつかむウォームアップとして使う
といった場面で活用されます。
エッジボイスとは
エッジボイス(Edge Voice)は声帯をしっかり閉じた状態で高速振動させることで生まれる、金属的・ザラザラとした響きです。「ボイスエッジ」「ボーカルエッジ」とも呼ばれ、ロックやメタル、R&Bのシャウトに代表されるガリガリした声質の基盤になります。振動速度は速く、倍音成分が豊富に発生するため音圧感や迫力につながります。
下表に2つの特徴を整理しました。
| 項目 | ボーカルフライ | エッジボイス |
|---|---|---|
| 声帯の閉じ方 | ごく弱く閉じる | しっかり閉じる |
| 振動数の目安 | 50〜80Hz前後 | 100Hz〜(音程による) |
| 音のイメージ | ポコポコ・ガラガラ | ギャリギャリ・ゴリゴリ |
| 息の量 | ごく少量 | 少〜中程度 |
| 主な用途 | 装飾・ウォームアップ | シャウト・表現の幅を広げる |
| 声帯への負荷 | 比較的低い | 中程度(過度な力みは注意) |
発声のメカニズム:声帯で何が起きているのか
正しい練習には、声帯がどのように動いているのかをある程度理解しておくことが大切です。難しい医学用語を覚える必要はありませんが、「声帯の閉鎖」「声帯の張力」「気流圧」という3つのキーワードを押さえておくと上達スピードが変わります。
声帯の閉鎖と気流圧の関係
声帯は喉頭(こうとう)内にある2枚のひだ状の筋肉組織です。呼気が下から押し上げると声帯が振動し、その振動数(Hz)が音程に対応します。声帯をしっかり閉じるほど高い気流圧が必要になり、声は力強く倍音豊かになります。逆に閉じる力を緩めると低い気流圧でも振動しやすくなり、ボーカルフライのような低周波の「ポコポコ音」が生まれます。
筋肉の名称を知っておくと練習のヒントになる
声帯を閉じるために主に働くのは「内側輪状披裂筋(ないそくりんじょうひれつきん)」と「横披裂筋(おうひれつきん)」です。エッジボイスを出すときはこれらの筋肉が強く収縮しています。一方、ボーカルフライでは声帯の張力(甲状披裂筋の緊張)を最小限に下げた状態を作ります。筋肉の名前は覚えなくても大丈夫ですが、「喉の奥で声帯を”ぎゅっ”と寄せる感覚」をイメージすると練習がスムーズです。
奥津 ユキ(ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTM(Logic)講師)より:
私が実際にレッスンで生徒さんを見ていると、ボーカルフライとエッジボイスを混同して「どちらの音も出ない」という状態で来られる方がとても多いです。声帯の閉じ具合のイメージが曖昧なまま闇雲に練習しているケースがほとんどで、まずは「口をほぼ閉じた状態でため息をつくように力を抜いてポコポコさせる」感覚から始めてもらうと、ボーカルフライはほとんどの方が5〜10分以内に出せるようになります。
ボーカルフライの出し方:ステップ別練習法
「理論はわかったけど、実際にどう練習すればいいの?」という方のために、段階的な練習ステップを紹介します。所要時間の目安も添えているので、練習スケジュールの参考にしてください。
ステップ1:完全に脱力してため息をつく(1〜2分)
肩・首・顎の力をすべて抜いた状態で、ゆっくりとため息をついてみましょう。そのため息の終わり際に「あ゛〜」とかすかなガラガラ音が出ることがあります。これがボーカルフライに近い状態です。まずはこの感覚を体で覚えることが最初のゴールです。
ステップ2:「あ゛」を意図的に出す(5〜10分)
ステップ1で感じた感覚を意図的に再現してみます。口をわずかに開け、舌をリラックスさせたまま、息をほんの少しだけ漏らすイメージで「あ゛」と発声します。喉を絞めず、力まず、息だけで声帯を揺らすイメージです。「お」の口の形のほうがやりやすいと感じる方も多いので、試してみてください。
ステップ3:音を持続させる(10〜15分)
「あ゛」が出たら、その音を3〜5秒間持続させてみましょう。息が途中で止まってしまう場合は、横隔膜を使ってごくゆっくり息を送り続けることを意識します。このとき1回の練習で無理に長く続けようとすると喉に余計な力が入るので、3〜5秒を繰り返す方が効果的です。
ステップ4:音程をほんの少し動かしてみる(15〜20分)
持続ができたら、そのまま音程を半音〜1音程度上下させてみます。ボーカルフライのまま音程変化をつけると「声帯閉鎖を保ちながら張力を調整する」感覚が磨かれ、後述するエッジボイスの習得にも直結します。
エッジボイスの出し方:ステップ別練習法
エッジボイスは「声帯をしっかり閉じて、そこに息を当てて鳴らす」感覚です。ボーカルフライを習得した後に練習すると、声帯の閉鎖感覚がすでにあるためスムーズに移行できます。
ステップ1:「ギ」「ゲ」の子音で感覚をつかむ(5分)
声帯をぐっと閉じてから「ギッ」「ゲッ」と短く鋭く発音すると、声帯が勢いよく振動する瞬間を感じられます。この「弾ける感覚」がエッジボイスの入り口です。
ステップ2:「ニャーー」で伸ばす(10分)
猫の鳴き声を真似るように「ニャーーー」と伸ばすと、自然と声帯が閉じた状態を維持しやすくなります。「ニ」の子音が声帯を閉じるサポートをしてくれるからです。この音を鼻腔に共鳴させながら、少しずつ音圧を上げていきましょう。
ステップ3:シャウト音節で練習する(15分)
音節「アー」「エイ」を使って、徐々に音圧(声のデシベル)を上げながら歌い上げる練習をします。このとき喉ではなく腹筋で音圧を支えることを意識してください。1回の連続練習は15〜20分以内にとどめ、終わったら必ず常温水を飲んでウォームダウンを行いましょう。
エッジボイス習得の目安時間
- ボーカルフライが出せる状態から始めた場合:2〜4週間(毎日15〜20分の練習)
- まったくゼロから始めた場合:1〜2か月(同条件)
- 週1回のボーカルレッスン+自主練習を組み合わせた場合:1〜3か月で歌中に使えるレベルへ
歌での具体的な使い方:実際の楽曲で学ぶ
技術を習得しても、実際の曲の中で自然に使えなければ意味がありません。ここでは具体的なアーティスト・楽曲を例に挙げて解説します。
ボーカルフライの使い方例
宇多田ヒカルさんは多くの楽曲でフレーズの語尾にボーカルフライを自然に乗せています。たとえば「First Love」の歌い終わりにある息混じりの余韻部分がその典型です。また海外アーティストではBillie Eilishが会話するように歌うスタイルの中でボーカルフライを多用しており、「bad guy」のAメロに特徴的なガラつきが聴き取れます。
歌の中で使うポイントは以下の3つです。
- フレーズの語尾:音が下降して終わる部分の最後の0.5〜1秒をフライにフェードアウトさせる
- 歌い出し:最初の音の前に短くフライを入れてからメロディに入ると色気が増す
- ブレス前:息を吸う直前の瞬間にフライを挟むと表情豊かに聴こえる
エッジボイスの使い方例
エッジボイスを活用する代表的なジャンルはロック・ハードロックです。ONE OK ROCKのTakaさんがサビの高音部分でエッジを混ぜた歌い方をしており、「Wherever You Are」のクライマックスや「We are」のシャウトフレーズで確認できます。R&B・ポップでも使われており、米津玄師さんの「Lemon」では低音域のサビ後半に微細なエッジが乗っています。
歌での活用ポイントは以下のとおりです。
- サビの感情的なピーク:高音域のロングトーンにエッジを混ぜると感情表現が増す
- アクセントの音節:1フレーズの中で特に強調したい音にエッジを入れる
- シャウト前の助走:シャウトの直前の音にエッジをかけると声が割れにくい
奥津 ユキ(ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTM(Logic)講師)より:
私が現場で繰り返し見てきたのは、エッジボイスを「ずっとかけ続けなければいけない」と思い込んでいる生徒さんのケースです。実際には1フレーズの中で使う音節は1〜2か所程度で十分で、それだけで歌全体の表情がガラッと変わります。毎回フルでエッジをかけようとすると喉が疲弊しますし、かえって音楽的に不自然に聴こえることが多い。「ここぞ」の1音だけに使う練習をすると、音楽的なセンスと喉の保護が両立できます。
練習時に注意すべきこと・喉のケア
声帯を使う技術である以上、練習量や体調管理には十分に気をつけてください。正しいケアをすることで上達スピードも安全性も上がります。
喉を傷めないための基本ルール
- 必ずウォームアップしてから:リップロールやハミングなど5〜10分のウォームアップ後に練習を始める
- 1回の練習は15〜20分以内:特にエッジボイスは声帯に中程度の負荷がかかるため、長時間連続は避ける
- 水分補給:常温または体温に近い温度の水を練習前後にコップ1杯ずつ飲む(冷水は声帯の血行を妨げるため避ける)
- 痛みがあるときは即中止:喉の痛み・かすれがある日は練習しない
- 睡眠と湿度管理:乾燥した環境では声帯の粘膜が乾きやすいため、部屋の湿度を50〜60%に保つ
NG行動とよくある失敗パターン
| NG行動 | なぜ問題か | 正しい対応 |
|---|---|---|
| 喉を絞って無理に音を作る | 声帯への過負荷・炎症リスク | 息のコントロールから音を作る |
| 毎日1時間以上連続で練習する | 声帯結節のリスクが上がる | 15〜20分×複数回に分散する |
| 体調不良時に無理をする | 回復が遅れ長期間歌えなくなる | 完全に声を休ませる |
| カフェイン・アルコール後に練習する | 声帯が乾燥しやすくなる | 練習前2時間はカフェイン・アルコールを控える |
ボーカルフライ・エッジボイスをさらに活用するために
ここまでの内容を実践すれば、基礎的な発声は習得できるはずです。しかし「歌の中で自然に使えるようになる」「表現の引き出しとして定着させる」ためには、声帯閉鎖以外の周辺技術も併せて磨くことが重要になります。
合わせて習得したい関連技術
- ミックスボイス(ミドルボイス):地声と裏声を混ぜた音域を使えるようにすると、エッジをかけられる音域の幅が格段に広がります。
- ブレスコントロール:横隔膜を使った腹式呼吸が安定すると、ボーカルフライの持続時間とコントロール精度が上がります。
- 共鳴腔の使い方:頭声・胸声・鼻腔共鳴を使い分けることで、エッジボイスに深みとキャラクターが生まれます。
- リズムの精度:エッジを入れるタイミングはミリ秒単位の話です。BPM120前後の曲から練習して、リズムに乗せてエッジを入れる感覚を育てましょう。
DAWを使ったセルフモニタリング
自分の声を客観的に聴くためにDAW(デジタルオーディオワークステーション)を活用するのも効果的です。GarageBandやLogic Proなどで自分の練習を録音し、波形を確認することで「エッジがかかっているかどうか」を視覚的に判断できます。エッジボイスは倍音成分が豊富なため、スペクトラムアナライザーで見ると2kHz〜8kHz帯の成分が増えていることが確認できます。DTM・作曲講座ではLogic Proを使った音声分析も扱っているので、声のセルフチェックに興味がある方にも役立てていただける内容です。
コアミュージックスクールのボーカルレッスンで習得をサポート
ボーカルフライとエッジボイスは、独学でも基礎は習得できます。しかし「本当に正しい音が出ているか」「喉に余計な負荷がかかっていないか」を自分だけで判断するのには限界があります。誤ったフォームで続けると、声帯への負担が蓄積して長期間歌えなくなるリスクもゼロではありません。
コアミュージックスクールのボーカル講座では、現役講師によるマンツーマン指導で「今の自分に必要な課題」を的確にフィードバックします。発声の悩みはひとりひとり異なるため、個別対応のレッスンは効率よく上達するための近道になります。
レッスン概要は以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 場所 | 川口駅(JR京浜東北線)徒歩2分 |
| 形式 | 完全マンツーマン |
| 対象 | 初心者〜上級者、年齢不問 |
| 扱うジャンル | ポップス・ロック・R&B・ジャズ など |
| 体験レッスン | 無料で受付中 |
「まず自分の声を聴いてもらいたい」「エッジボイスが出ているか確認してほしい」という方も、無料体験レッスンからお気軽にご参加いただけます。実際に声を出してみることで、どの段階から練習を始めると効率的かが明確になります。
ボーカルフライやエッジボイスは、身につければ歌の表現力を大きく広げてくれる技術です。しかし焦りや誤った練習は逆効果になることもあります。コアミュージックスクールでは、現役プロ講師があなたのペースに合わせて丁寧にサポートします。川口駅からすぐの立地で通いやすい環境も整っていますので、ぜひ一度足を運んでみてください。


