「Cubaseを買ったはいいけど、画面を開いたら何から手をつければいいかわからない」——そんな経験をしている方は、実はとても多いです。DAW(デジタル・オーディオ・ワークステーション)の中でも機能が豊富なCubaseは、最初の壁さえ超えれば強力な制作ツールになります。インストール直後の設定から実際に1曲を完成させるまでの流れを、現役講師の現場知識を交えながら順を追って解説します。読み終わるころには「今日から始められる」という感覚を持ってもらえるはずです。

Cubaseとは?DAW選びの基礎知識
Cubaseは、ドイツのSteinberg社が開発するDAWです。1989年の初版リリースから数えると30年以上の歴史があり、現在はYamaha傘下で開発が続けられています。世界中のレコーディングスタジオやトラックメイカーに使われており、特に「MIDIエディタの操作性」と「オーディオ品質」の高さで評価されています。
Cubaseのエディション比較
Cubaseは用途・予算に応じて3つのグレードが用意されています。初心者がまず検討すべき選択肢を以下にまとめます。
| エディション | 価格(定価) | トラック数 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| Cubase Elements 13 | 約12,000円 | 最大48 | 入門向け。付属音源あり |
| Cubase Artist 13 | 約33,000円 | 最大64 | 中級向け。VST Connectを搭載 |
| Cubase Pro 13 | 約65,000円 | 無制限 | プロ仕様。MixConsole・SpectraLayers等フル搭載 |
初心者にはまずCubase Elementsから始めることをおすすめします。付属のHALion Sonic SEだけでも数百種類の音色が使えるため、「音源が足りない」という問題は起こりにくいです。慣れてきてからProへアップグレードするルートが、費用対効果の面でも合理的です。
他のDAWとの違い
DAWにはAbleton Live、Logic Pro X(Mac専用)、FL Studio、Studio Oneなど多くの選択肢があります。Cubaseが選ばれる理由のひとつは「コード・トラック」や「スケール・アシスタント」といった作曲補助機能の充実です。音楽理論をあまり知らない段階でも、自動的にコード進行のヒントをもらいながら制作を進められます。また、MIDIのクォンタイズ(タイミング補正)の精度が高く、ピアノロールエディタが直感的に使いやすい点も初心者には大きなメリットです。
インストール・初期設定を確実に終わらせる
Cubaseを快適に動かすには、インストール後の「オーディオ設定」が最重要です。ここを適切に行わないと、音が鳴らない・遅延が大きいといったトラブルが起きます。
推奨PCスペック(2024年基準)
- OS:Windows 10/11(64bit)または macOS 12 Monterey以降
- CPU:Intel Core i5第10世代相当以上、またはApple M1以上
- RAM:16GB以上(最低8GB、快適に使うなら16GBを強く推奨)
- ストレージ:SSD 256GB以上(音源ライブラリを入れるなら512GB以上)
- オーディオインターフェイス:YAMAHA AG06 MK2、Focusrite Scarlett 2i2など
ASIOドライバとバッファサイズの設定
Windowsユーザーがまず直面するのが「レイテンシ(遅延)」の問題です。標準のWindowsオーディオドライバでは遅延が大きく、リアルタイム演奏がズレて聞こえます。これを解決するのがASIO(Audio Stream Input/Output)ドライバです。
オーディオインターフェイスを持っていれば、メーカー提供のASIOドライバを使います。PCのスピーカーやヘッドフォン端子だけで始める場合は「ASIO4ALL」という無料ドライバが利用できます。Cubase内での設定手順は以下のとおりです。
- メニュー「スタジオ」→「スタジオ設定」を開く
- 「オーディオシステム」でASIOドライバを選択
- 「コントロールパネル」からバッファサイズを設定(録音時:128〜256サンプル、ミックス時:512〜1024サンプルが目安)
バッファサイズが小さいほど遅延は減りますが、PCへの負荷は増加します。録音中にノイズが入る場合はバッファを少し大きくしてみてください。サンプルレートは一般的な音楽制作では44.1kHz / 24bit、映像用途なら48kHzを使います。
古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:
私が実際にレッスンで生徒さんに最初にお伝えするのは「バッファサイズとサンプルレートを最初に固定しなさい」ということです。制作途中で変えるとプラグインの挙動が変わることがあります。録音は44.1kHz・128サンプル、ミックス時に512サンプルへ上げる、という流れを習慣にするだけで、多くのトラブルが未然に防げます。最初の設定を丁寧にやることが、後の作業スピードに直結するんです。
プロジェクト作成から音を鳴らすまでの最短ルート
設定が終わったら、いよいよ音を出してみましょう。Cubaseでは「プロジェクト」という単位で楽曲を管理します。
新規プロジェクトの作成手順
- Cubaseを起動→「新規プロジェクト」を選択
- プロジェクトの保存場所を指定(デスクトップではなく専用フォルダを作ると管理が楽)
- テンポを設定(ポップス:120〜130 BPM、バラード:70〜90 BPMが多い)
- 拍子を設定(一般的な楽曲は4/4拍子)
インストゥルメントトラックを追加して音を鳴らす
音源を鳴らすには「インストゥルメントトラック」を追加します。
- プロジェクトウィンドウ左上の「トラックを追加」→「インストゥルメント」を選択
- 音源として「HALion Sonic SE」を選ぶ(Cubase付属音源)
- ピアノ音色(Grand Piano等)を読み込む
- MIDIキーボードがあればその場で演奏可能。なければPC画面上の「仮想MIDIキーボード」(Alt+Kで表示)で音確認
ここで音が鳴れば、基本設定は成功です。鳴らない場合はオーディオ設定に戻り、出力先が正しいか確認してください。
1曲を完成させるための制作フロー
「音が鳴った」次のステップは「曲として形にすること」です。プロの現場でも、初心者でも、曲作りには共通した流れがあります。大まかなフローを把握することで、「どこで詰まっているか」が明確になります。
ステップ1:コード進行とリズムを先に決める
多くの初心者が「メロディから作ろうとして行き詰まる」という状態になります。まずコード進行とリズムパターンを先に固めることで、メロディは格段に作りやすくなります。
Cubaseの「コードトラック」を使えば、クリックひとつでコードのルート音とボイシングが視覚化されます。たとえばC→Am→F→Gという王道の循環コードを8小節ループさせ、その上にメロディを乗せる練習から始めると効率的です。
ドラムはGroove Agent SE(付属プラグイン)のプリセットを使うのがスピーディです。ジャンルに合わせたパターンが多数用意されており、BPM 120のポップスなら「Pop 4/4」カテゴリから選ぶと自然なグルーヴが得られます。
ステップ2:MIDIでメロディと伴奏を入力する
コードとリズムが決まったら、ピアノロールエディタでメロディと伴奏のMIDIを打ち込みます。ピアノロールでは横軸が時間、縦軸が音の高さ(C4=真ん中のド)を表しています。
- クォンタイズ:音符のタイミングを1/8音符や1/16音符単位に自動整列。ベロシティ(音の強さ:0〜127)も適宜調整する
- ベロシティ:強いアクセントは100前後、柔らかい音は60〜75が目安
- 音域:メロディはC4〜C5(中音域)に収めると聴き取りやすい
ステップ3:オーディオ録音(歌やギターを入れる場合)
ボーカルやギターを録音する場合は「オーディオトラック」を追加します。録音時の注意点を整理します。
- 入力レベルは−18dBFS〜−12dBFSが適切(ピークが0dBFSを超えるとクリッピングが起きる)
- マイクとの距離は15〜20cm程度を基本に、子音が割れるなら少し離す
- 録音中はモニタリングボタン(スピーカーアイコン)をONにすると、自分の声をリアルタイムで確認できる
ボーカルの録音と歌唱テクニックを同時に伸ばしたい方には、コアミュージックスクールのボーカル講座でマンツーマン指導を受けることも選択肢のひとつです。
ステップ4:ミックスで音を整える
すべてのパーツが録音・入力できたら「ミックス」で音のバランスを整えます。初心者が最初に覚えるべき操作は3つです。
| 操作 | 目的 | 初心者向け目安 |
|---|---|---|
| フェーダー(音量) | 各楽器の音量バランスを調整 | ドラムをリファレンスに各楽器を合わせる |
| パン(定位) | 左右の広がりを作る | ボーカル・キック・スネアはセンターが基本 |
| EQ(イコライザー) | 不要な周波数をカット | ボーカルは80Hz以下をハイパスカット |
マスタートラックには「Limiter」を挿して、最終出力が0dBFSを超えないよう設定します。Cubaseに付属のMaximizer(Loudness Maximizer)を使えばワンステップでマスタリング的な処理ができます。
古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:
私が現場で時間をかけているのは、実はミックスよりも「アレンジの引き算」です。初心者の方は音を足しすぎる傾向があります。レッスンでは「8小節ループで聴き疲れないか?」を必ずチェックしてもらっています。楽器を1本ずつソロにして、その楽器がなくなっても曲が成立するなら思い切ってカット。不要な帯域—たとえば200Hzあたりのこもりや、8kHz以上の耳障りな高域—をEQで除去するだけで、プロっぽい音に近づくことが多いです。
ステップ5:書き出し(オーディオミックスダウン)
完成した楽曲をMP3やWAVで書き出すには「ファイル」→「書き出し」→「オーディオミックスダウン」を使います。
- WAV 44.1kHz / 16bit:CD品質。配布・ストリーミング提出に適切
- MP3 320kbps:ファイルサイズ重視の場合
- 「リアルタイム書き出し」はOFFでOK(ほとんどの場合は高速書き出しで問題なし)
初心者がつまずきやすいポイントと解決策
実際のレッスン現場で頻繁に出てくるトラブルと、その解決策をまとめます。
よくあるトラブルQ&A
- Q. 音が全く出ない
- → スタジオ設定のASIOドライバ選択と、MixConsoleのマスターフェーダー位置を確認。モニタリングボタンのON/OFFも要チェック。
- Q. 録音するとズレる(レイテンシ)
- → バッファサイズを128サンプルまで下げる。それでも改善しない場合はオーディオインターフェイスの購入を検討。
- Q. CPU使用率が高くてプツプツ音が入る
- → 使っていないトラックをフリーズ(トラック右クリック→「フリーズ」)する。重いプラグインをFreezeすることでCPU負荷を大幅に下げられる。
- Q. MIDIキーボードを繋いでも音が出ない
- → スタジオ設定の「MIDIポート設定」でキーボードが「In」として認識されているか確認。トラックの「MIDIインプット」が正しいデバイスを向いているか確認。
- Q. 保存したはずのプロジェクトが開けない
- → プロジェクトファイル(.cpr)と同フォルダの「Audio」「Images」フォルダを一緒に保管していない可能性がある。プロジェクト専用フォルダを作る習慣を。
上達を加速させるための学習ロードマップ
Cubaseは機能が膨大なため、「何でもやろう」とすると挫折しやすいです。段階的なゴール設定が継続のカギです。
3ヶ月で1曲仕上げるロードマップ
- 1〜2週目:インストール・初期設定・音出し確認。付属のデモ曲を再生して構造を観察する(目標:音が鳴る環境を作る)
- 3〜4週目:8小節のループを作る。コードトラック+ドラム+ベースの3トラック構成(目標:リズム感のある土台を作る)
- 2ヶ月目:16〜32小節へ拡張。メロディ追加・ボーカルまたはギター録音(目標:Aメロ・サビの骨格完成)
- 3ヶ月目:ミックス・マスタリング・書き出し。SNSやSoundCloudへ公開(目標:1曲完成)
このロードマップを参考に、週3〜4時間の練習時間を確保できれば3ヶ月での1曲完成は現実的な目標です。もちろん個人差はありますが、「完成させる」経験を早めに積むことが次の曲の質を上げる最短ルートです。
独学とレッスンの使い分け
Cubaseの操作基礎はYouTubeや公式マニュアルでも学べますが、「自分の曲に対するフィードバック」は独学では得にくい部分です。特に以下のような悩みが出てきた段階では、プロ講師のマンツーマンレッスンが効果的です。
- 「コード進行が単調で、どう変化をつければいいかわからない」
- 「ミックスしても音が混濁してプロの音に近づかない」
- 「作りかけの曲が増えるばかりで完成しない」
- 「音楽理論を体系的に学んでDTM制作に活かしたい」
コアミュージックスクールのDTM・作曲講座では、CubaseをメインDAWとして使った実践的な指導を行っています。操作の疑問から楽曲のフィードバックまで、一人ひとりのペースに合わせたカリキュラムで進めるスタイルです。
体験レッスンのご案内
コアミュージックスクールは川口駅徒歩2分という通いやすい立地で、現役プロ講師によるマンツーマンレッスンを提供しています。DTM・作曲講座はCubaseを中心に、初心者から「音楽理論も含めてしっかり学びたい」という方まで幅広く対応しています。
「まずどんな雰囲気か確認したい」という方には、無料の体験レッスンをご用意しています。実際にCubaseを操作しながら、自分の制作したい音楽のジャンルや目標をヒアリングし、最適な学習プランをご提案します。
- 場所:埼玉県川口市(川口駅徒歩2分)
- 対象:Cubase完全未経験者〜中級者
- 内容:初期設定の確認・音出し・簡単な音楽制作体験
- 担当:古賀 稔宏 講師(ギター・ウクレレ・DTM・作曲技法・音楽理論)
ご興味のある方は、無料体験レッスンの申し込みページからお気軽にお申し込みください。「何を準備すればいいかもわからない」という段階でも、手ぶらで参加していただける環境を整えています。
まずは一度、コアミュージックスクールの公式サイトでレッスン内容や講師プロフィールをご確認ください。音楽制作の第一歩を、経験豊富な講師と一緒に踏み出してみましょう。



