シティポップ楽曲制作の完全ガイド|80sから現代シティポップの作り方

DTM・作曲

「シティポップを自分で作ってみたいけど、どこから手をつければいいかわからない」——そんな悩みを抱えているDTM初心者・中級者の方は多いのではないでしょうか。山下達郎や竹内まりや、大貫妙子らが生み出した80年代シティポップは、近年SNSや海外ストリーミングを通じて世界的なリバイバルブームを迎え、現代の若いクリエイターたちの間でも制作意欲を刺激し続けています。

シティポップ楽曲制作の完全ガイド|80sから現代シティポップの作り方
DTM・作曲の学習イメージ

80年代オリジナルシティポップから現代シティポップ(City Pop Revival)まで、楽曲制作の具体的な手順をDAW操作・コード理論・サウンドメイクの観点から解説します。BPMの選び方、コード進行の仕組み、使用音源・エフェクト設定の数値まで踏み込んだ内容になっていますので、初めて本格的なシティポップに挑戦する方にも実践的な道標として活用していただけます。

まず結論からお伝えすると、シティポップ制作の核心は「コード進行の豊かさ」「グルーヴの心地よさ」「音場の広がり」の3点に集約されます。この3つを意識しながら各工程を進めるだけで、楽曲の完成度は大きく変わります。

シティポップとは何か?80s〜現代の変遷を整理する

シティポップは1970年代後半から80年代にかけて日本で生まれた音楽ジャンルです。都市生活の洗練されたイメージを軸に、AOR(Adult Oriented Rock)、ソウル、ファンク、ボサノバ、フュージョンなど多彩なジャンルを融合させたサウンドが特徴です。

80年代シティポップの定義と特徴

80年代シティポップの代表的な特徴を整理すると、以下のようになります。

  • BPM:おおむね88〜108程度の落ち着いたテンポが多い(「Plastic Love」は約122BPMとやや速め)
  • コード:メジャー7th・9th・add9など拡張コードの多用
  • リズム:タイトなドラムとスラップベースによるファンクグルーヴ
  • サウンド:アナログシンセ(Oberheim OB-Xa、Roland Juno-106など)と生楽器の融合
  • 歌詞テーマ:夏、海、夜の都市、ドライブ、恋愛など

現代シティポップ(City Pop Revival)との違い

2020年代の現代シティポップは、オリジナルをリファレンスにしつつも、現代のDAWプロダクションで再解釈されています。VaporwaveやLo-fiヒップホップの影響を受けたローファイな質感、サンプリング文化との融合、海外アーティストによるアプローチも加わり、サウンドの幅は広がっています。

項目 80年代シティポップ 現代シティポップ
録音手法 アナログテープ・スタジオ生録 DAW中心・宅録も多い
ドラム 生ドラム or LinnDrum等のリズムマシン サンプルパック・MIDIドラム
シンセ アナログシンセ実機 ソフトシンセ(Arturia, Native Instruments等)
ミックス感 中域が豊かで暖かみがある Lo-fi処理や倍音強調も活用
BPM傾向 88〜122 BPM 85〜115 BPM(やや落ち着き気味)

シティポップの「核心」コード進行と音楽理論

シティポップの最大の魅力のひとつが、コードの豊かさです。ポップスで頻出のI-V-VIm-IVの単純な進行ではなく、テンションコードやノンダイアトニックコードを積極的に取り入れることで、独特のおしゃれな雰囲気が生まれます。

定番コード進行パターン

シティポップ制作でよく使われる代表的なコード進行を紹介します。キーはCを例に挙げています。

  • パターン①(バラード系):Cmaj7 → Am7 → Dm7 → G7
    安定感があり、メロウな曲想に向いています。各コードに7thを付けるだけで一気にシティポップらしさが増します。
  • パターン②(グルーヴ系):Fmaj7 → Em7 → Am7 → Dm7 → G7sus4 → G7
    sus4コードでテンションを溜めてから解決する動きが特徴的です。
  • パターン③(転調・セカンダリードミナント活用):Cmaj7 → E7 → Am7 → D7 → Dm7 → G7
    E7(AmへのV7)、D7(GへのV7)というセカンダリードミナントが色彩を豊かにします。

テンションノートの扱い方

9th(長2度上)、11th(完全4度上)、13th(長6度上)といったテンションノートは、コードの色彩を豊かにする重要な要素です。ただし、全パートに入れると音が混濁するため、ボイシングには注意が必要です。一般的には以下のルールが参考になります。

  • ベースは基音(ルート)または5thをシンプルに弾く
  • ピアノ・ギターでテンションを含むボイシングを担当
  • ストリングスやシンセパッドで9thや11thを上部に配置

古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:

私が実際にレッスンで生徒さんに伝えているのは、「テンションコードを使う前に、まずシンプルなダイアトニックコードで骨格を固める」という手順です。Cubaseのコードトラックを使って骨格を確認してから、各コードに7thや9thを足していくと、どのテンションが機能しているか耳で判断しやすくなります。いきなり全部テンションコードにすると響きが混乱しがちなので、1コード1ポイントずつ試していくのがコツです。

リズムセクション:グルーヴの作り方

シティポップのグルーヴは「タイト&スウィング感の絶妙なバランス」にあります。機械的に正確なだけでもなく、過度にルーズでもない。この塩梅がシティポップらしさを左右します。

ドラムパターンの基本構造

80年代シティポップのドラムは、スネアのバックビート(2・4拍)とハイハットの細かいカッティングが特徴です。現代の制作では以下のような設定で再現することが多いです。

  • BPM:95〜105程度(メロウな曲は88前後)
  • スネア:2・4拍に入れ、クオンタイズは約85〜90%(わずかにルーズにする)
  • ハイハット:16分音符刻みで、アクセントのベロシティを100、弱拍を65〜75程度に設定
  • キック:1拍目と3拍目&拍の裏をパターンに。LinnDrum風のパンチのある音を使うと80s感が増す

ベースラインの作り方

シティポップのベースはファンク・ソウルの影響を受けたスラップ奏法やシンコペーションが多用されます。DAWで打ち込む際のポイントを挙げます。

  • コードのルートを1拍目に置きつつ、5thや7thをオクターブ違いで絡める
  • シンコペーション(拍の裏への音の移動)を意識的に入れる
  • 音源はNative Instruments「Scarbee Funk Guitarist」やSpectrasonics「Trilian」が定番
  • EQで80〜100Hz帯域を少し持ち上げ、400〜600Hzのこもりをカット

ドラムとベースのタイミング調整

グルーヴ感を出すうえで重要なのが、ドラムとベースのポケット(タイミングの一致感)です。完全にクオンタイズをかけるより、ドラムとベースを同じタイミングでわずかに後ろにずらす(約5〜10ms程度)だけで、人間味のあるグルーヴが生まれます。CubaseのQuantize設定でStrengthを80〜85%にするのが一つの目安です。

サウンドメイク:シンセ・ギター・ストリングスの音作り

シティポップのサウンドを決定づけるのは、各楽器の音色と帯域分けです。ここでは主要楽器別の音作りのポイントを解説します。

アナログシンセ系サウンド(ソフトシンセで再現)

80年代のシティポップで使われたRoland Juno-106やOberheim OB-Xaの音色は、現代ではソフトシンセで十分に再現できます。代表的な選択肢は以下のとおりです。

ソフトシンセ 特徴 価格帯(参考)
Arturia Juno-60 V Juno-106に近いコーラス感、パッドに最適 単体約9,000円〜
Arturia OB-Xa V 暖かみのあるポリシンセサウンド 単体約9,000円〜
Arturia V Collection(バンドル) 上記含む多数のシンセを収録 約39,000円〜
u-he Repro-5 Prophet-5の精密なエミュレーション 約20,000円〜
Surge XT(無料) 多機能・無料で使えるオープンソースシンセ 無料

シンセパッドを作る際は、コーラスエフェクトをかけてステレオ感を広げ、アタックタイムを80〜150ms程度に設定するとふわっとした広がりが生まれます。

エレクトリックギターの役割と音作り

シティポップにおけるギターは、カッティングリズムギターとクリーントーンのコードワークが中心です。フェンダー系のシングルコイルサウンド(ストラトキャスター、テレキャスター)がよくマッチします。実際の制作では以下が参考になります。

  • アンプシミュレーター(Amplitube、Neural DSP等)でクリーン〜クランチに設定
  • コンプレッサーでアタックをタイトにする(アタック10ms、リリース60ms程度)
  • ステレオコーラス(depth 40〜60%、rate 0.8〜1.2Hz)でJuno的な揺らぎを付加
  • カッティングリズムは16分音符ベースで、ゴーストノートを交えると生々しさが出る

ストリングスとホーンセクション

シティポップのアレンジに欠かせない弦楽器・管楽器は、音源選びと打ち込み方の両方が重要です。VSL(Vienna Symphonic Library)やSPITFIREのALBION ONEなどが定評ありますが、Spectrasonics Omnisphereのプリセットもシティポップ用途に十分です。

ストリングスのMIDI打ち込みでは、ベロシティに変化をつけ(強音100〜110、弱音55〜70)、フレーズの最初の音符を少し前(約-10ms)にオフセットして鳴らすと、人間的なアタック感が生まれます。

ミックス・マスタリング:シティポップらしい音場の作り方

楽曲の完成度は、ミックスの段階で大きく変わります。シティポップらしい「広がり」と「暖かみ」を出すための具体的なアプローチを解説します。

EQ・コンプの基本設定

  • キック:60〜80Hz周辺をブースト(+2〜3dB)、300〜400Hzをカット(-2dB)してスッキリさせる
  • スネア:200Hz前後の胴鳴りを活かしつつ、5kHz付近を+2dBでスネアの抜けを強調
  • ボーカル:3〜5kHz帯域を+2〜3dBで存在感を出し、100Hz以下はハイパスフィルターでカット
  • シンセパッド:2kHz以上をロールオフしてブライト感を抑え、背景に溶け込ませる

リバーブとディレイの使い方

シティポップの音場は「広いがクリア」であることが理想です。リバーブの使い方は以下を参考にしてください。

  • ドラム:Roomリバーブ(Decay 0.4〜0.6秒)で空間感を付加。過度にかけない
  • ボーカル:Plate系リバーブ(Decay 1.2〜1.8秒)+Pre-delay 20〜30ms。ボーカルが埋もれないようにWetを15〜25%に抑える
  • シンセ・ギター:Hall系リバーブ(Decay 2〜3秒)でゆったりとした広がりを出す
  • ディレイ:クォーターノートや付点8分音符のタップディレイをギターやシンセに薄くかけると奥行きが生まれる

マスタリング段階のポイント

自宅制作でのマスタリングでは、ラウドネスの過剰な追求は禁物です。ストリーミング配信の基準値(Spotify:-14 LUFS、Apple Music:-16 LUFS)を目安にし、ダイナミクスを潰し過ぎないことが大切です。リミッターのTrue Peakは-1.0dBFS以下を守ることで、配信プラットフォームでのクリッピングを防ぎます。

古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:

私が現場のミックス作業で特に時間をかけるのが、リバーブのPre-delay設定です。レッスンでも「リバーブをかけたのに音がぼやける」という相談をよく受けます。Pre-delayを15〜30ms入れるだけで、ドライの音がリバーブよりわずかに先行して聴こえるため、音像が前に出てきてクリアさが保てます。Cubaseに付属のRoomWorksでも十分この効果を得られるので、まず手元のDAWで試してみてほしいです。

ボーカル録音とメロディラインの仕上げ方

シティポップの楽曲において、ボーカルは作品の印象を決定的に左右します。ここでは録音から仕上げまでの実践的なポイントを解説します。

メロディラインの特徴と作り方

シティポップのメロディは、音域が広すぎず「歌いやすい」ことが多いです。音域的にはミドルレンジ(C4〜C5付近)を中心に、サビで少し上に伸びる構成が典型的です。メロディ作成時のチェックポイントを挙げます。

  • コードトーン(ルート・3rd・5th)にメロディの着地点を合わせる
  • アプローチノート(半音上・下からのスライド)を活用してジャズ的なニュアンスを出す
  • 言葉(歌詞)のアクセントとメロディのリズムを合わせることで歌いやすさが増す
  • サビのピークノートは高すぎず、聴き手が「一緒に歌えそう」な高さが理想

ボーカルレコーディングの基本環境

宅録環境でも十分なクオリティのボーカルを録れます。最低限必要な機材の目安をまとめます。

機材 おすすめ例 参考価格
コンデンサーマイク Audio-Technica AT2020、sE Electronics sE2200 10,000〜30,000円
オーディオインターフェース Focusrite Scarlett Solo/2i2、MOTU M2 10,000〜25,000円
リフレクションフィルター sE Electronics Reflexion Filter Pro 10,000〜20,000円
ヘッドフォン Sony MDR-7506、Audio-Technica ATH-M50x 10,000〜20,000円

ボーカルの録音が終わったら、Cubase等でピッチ補正(Variaudio)とタイミング補正を施します。過度に補正しすぎると不自然になるため、ニュアンスを残したうえで気になる箇所だけ修正するのがポイントです。ボーカルについてより詳しく学びたい方は、コアミュージックスクールのボーカル講座も参考にしてください。

シティポップ制作の学習ロードマップと目安時間

「シティポップ制作を身につけるまでにどれくらいかかるか」という点は多くの方が気になるポイントです。以下に、経験レベル別の目安をまとめます。

経験レベル別の習得目安

レベル 状態 習得目安時間 主な学習内容
初心者 DAW未経験・楽器演奏なし 6〜12ヶ月 DAW基本操作、コード理論入門、MIDI打ち込み
中級者 DAW1〜2年・曲を数曲作った経験あり 3〜6ヶ月 シティポップ特有の編曲技法、ミックス基礎
上級者 複数ジャンルの制作経験あり 1〜3ヶ月 細部の音色作り、マスタリング、スタイルの確立

もちろんこれは目安であり、週に何時間練習できるか、独学か講師指導かによっても大きく変わります。一般的に、独学より講師に習ったほうが「なぜその音になるのか」という理解が深まるため、回り道が少なくなります。

独学と講師指導の比較

  • 独学のメリット:費用が低く、自分のペースで進められる
  • 独学のデメリット:誤った習慣が定着しやすく、行き詰まりやすい
  • 講師指導のメリット:疑問をその場で解決できる、フィードバックが的確、モチベーションが維持しやすい
  • 講師指導のデメリット:費用がかかる(月1〜2回のレッスンで月額8,000〜15,000円程度が一般的)

DTMと作曲を体系的に学びたい方には、コアミュージックスクールのDTM+作曲講座も選択肢のひとつです。使用DAWはCubaseを中心に対応しており、コード理論・編曲・ミックスまで一貫して学べます。

まとめ:シティポップ制作に必要なことを一歩ずつ

シティポップ楽曲制作に必要な要素を以下の流れで解説しました。

  • 80年代〜現代シティポップの定義と違いの整理
  • テンションコードを使ったコード進行とハーモニーの作り方
  • グルーヴを生むドラム・ベースの打ち込み手法
  • シンセ・ギター・ストリングスの音作りと機材選び
  • ミックス・マスタリングでの音場の整え方
  • ボーカル録音とメロディラインの仕上げ
  • 習得目安時間と学習方法の比較

シティポップ制作は、知識と実践の積み重ねが大切です。最初から完璧な1曲を作ろうとするのではなく、まず1セクション(Aメロ+コード進行)だけを完成させることから始めましょう。小さな達成感がモチベーションを維持し、少しずつ完成度を高める力になります。

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