ドラムンベース制作入門|高速ブレイクビーツの作り方をDTM講師が解説

DTM・作曲

「ドラムンベースを自分で作ってみたいけど、あの複雑なブレイクビーツをどう打ち込めばいいのかわからない」——そんな悩みを持つ方は少なくありません。170〜180BPMという超高速テンポ、シンコペーションだらけのリズム、分厚いベースライン。構造を知らずに耳コピしようとすると、途方に暮れてしまいます。

ドラムンベース制作入門|高速ブレイクビーツの作り方をDTM講師が解説
DTM・作曲の学習イメージ

DTM初〜中級者がドラムンベース(Drum and Bass / DnB)の制作を始めるために必要な基礎知識から、実際のブレイクビーツ打ち込み手順、音作りのコツまでを順を追って解説します。使用DAWはCubaseを想定しますが、考え方はAbleton LiveやFL Studioでも共通して応用できます。

結論から先にお伝えすると、DnBのドラムは「ハーフタイム感覚で考える」ことが最大のコツです。170BPMの楽曲でも、スネアは2拍・4拍(4分音符換算で85BPMのグルーヴ)に落ちてくるため、体で感じる速さは実際のBPMの半分程度です。この感覚を掴むだけで、打ち込みのハードルが一気に下がります。

ドラムンベースとは?ジャンルの基本を押さえる

ドラムンベースは1990年代初頭のイギリス・ロンドンで生まれた電子音楽ジャンルです。ジャングル(Jungle)から発展し、Goldie、LTJ Bukem、Roni Sizeといったアーティストたちが確立しました。現在もNeural DNB、Liquid DNB、Neurofunk、Jump-Upなど多数のサブジャンルに分かれ、世界中で制作・リリースされています。

DnBの基本スペック

要素 一般的な数値・仕様
テンポ(BPM) 165〜180 BPM(標準は174〜176 BPM)
拍子 4/4拍子
スネア位置 2拍目・4拍目(ハーフタイム感)
ベース帯域 40〜200Hz中心、サブベースは60Hz以下
キックの基音 50〜80Hz付近
スネアのスナッピー帯域 2〜5kHz付近を強調

DnBの最大の特徴は、キックとスネアがシンプルな4つ打ちではなく、複雑にシャッフルされた「ブレイクビーツ」を基盤にしている点です。元々は1970年代のファンクやソウルのレコードからブレイク(ドラムソロ部分)をサンプリングし、ピッチを上げてテンポを速くすることで生まれたサウンドです。

ブレイクビーツの構造を理解する

DnBのブレイクビーツを打ち込むには、まずその「元ネタ」となったパターンの構造を理解することが近道です。最も有名なブレイクビーツは「Amen Break」と呼ばれるもので、The Winstons(1969年)の楽曲「Amen, Brother」のドラムソロをサンプリングしたものです。DnBだけでなく、ドラムステップ系の電子音楽全般に影響を与えた歴史的なフレーズです。

Amen Breakの基本パターン(16分音符グリッド上)

Amen Breakを16分音符のグリッドに落とし込むと、以下のような構造になっています(1小節を16等分したグリッドで、1〜16の番号で示します)。

  • キック(BD): 1、3、9、13グリッドに配置(メインの重心)
  • スネア(SD): 5、13グリッドを中心に、シャッフルした位置に散る
  • ハイハット(HH): 細かく刻む8分・16分パターン+オープンHHで表情を出す

重要なのは「キックとスネアの位置を暗記する」のではなく、「なぜそこにあるとグルーヴが生まれるのか」をDAW上で体感しながら覚えることです。打ち込んでは再生し、1音ずつ追加・削除を繰り返すことで、リズムの重力が肌感覚でわかるようになります。

ステップ打ち込みの実践手順(Cubase使用時)

  1. テンポを174 BPMに設定し、4小節のドラムトラックを作成する
  2. ピアノロールを開き、クォンタイズを「1/16」に設定する
  3. まずキックとスネアだけを最小限に打ち込み、ループ再生でグルーヴを確認する
  4. ゴーストノート(弱いベロシティのヒット)を加えてヒューマナイズする
  5. ハイハットとオープンHHを加えて密度を上げる
  6. 一部のノートを16分音符の半分(32分音符位置)にズラしてシャッフル感を演出する

ベロシティの設定は非常に重要です。メインのキック・スネアは100〜120程度、ゴーストノートは30〜60程度に設定すると、機械的にならずリアルなブレイクビーツらしさが出ます。

古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:

私が実際にレッスンでDnBのブレイクビーツを教えるとき、最初に必ずやってもらうのが「175BPMで1小節ループを鳴らしながら、自分で手を叩いてスネアの位置を探す」という作業です。頭で考えるより先に体でビートを感じてから打ち込むと、ゴーストノートの入れどころや強弱の付け方が自然と見えてきます。Cubaseのドラムエディターはベロシティを色で確認できるので、視覚的にも理解が進みやすいです。

DnB制作に必要なツールと環境

DnBを制作するうえで「最低限必要なもの」と「あると表現の幅が広がるもの」を整理しておきましょう。初期投資を最小限にしながらでも、十分なクオリティのデモを仕上げることは可能です。

最低限必要な環境

カテゴリ 具体例・相場 備考
DAW Cubase Elements(約15,000円)、Ableton Live Intro(約9,000円) 無料版(GarageBand等)でも基礎練習は可
ヘッドフォン Sony MDR-7506、Audio-Technica ATH-M40x(各1〜2万円台) 低域の確認に密閉型が向く
オーディオインターフェース Focusrite Scarlett Solo(約15,000〜20,000円) モニタリング精度が上がる
ドラム音源 XLN Audio Addictive Drums 2、Native Instruments Battery 4 DAW付属音源でも代用可
サンプルパック Loopmasters “Drum & Bass” シリーズ(3,000〜8,000円程度) 既存サンプルを活用するのが最速

音源・サンプルの選び方

DnBのキック音は「パンチ感のある50〜80Hzの基音」と「2〜5kHzのアタック音」が共存しているものを選びます。スネアはリバーブが深すぎず、2kHz付近にスナッピーの張りがあるものが、高速テンポでも各ヒットが埋もれません。フリーのサンプルパックも多数公開されており、Splice、Loopmasters、FreeSoundなどを活用するのも現実的な選択肢です。

ベースラインの作り方:DnBサウンドの核心

DnBをDnBたらしめるのは、ブレイクビーツと同じくらい重要な「重厚なベースライン」です。主に2種類のベースラインアプローチがあります。

① サブベース(Subass)中心のアプローチ

60Hz以下の超低域を中心にしたサブベースは、スピーカーやクラブシステムで体に響く「圧」を生み出します。シンセサイザーのオシレーターを正弦波(Sine波)またはわずかに倍音を加えた三角波(Triangle波)に設定し、音程をゆっくり動かすスタイルです。Serum、Vital(無料)、Massive XなどのシンセでLFOを使ってピッチをうねらせると、典型的なDnBのサブベース感が得られます。

② ミッドベース(Reese Bass)のアプローチ

Reese Bassは、2つのオシレーターをほんの少しデチューンさせて重ね、うなりを生み出す手法です。Kevin Saundersonの楽曲「Just Want Another Chance」(1988年)で使われたことで広まり、Neurofunkサブジャンルの定番音色になっています。作り方のポイントは以下の通りです。

  • オシレーター1:のこぎり波(Sawtooth)、基準ピッチ
  • オシレーター2:のこぎり波、+5〜10セントデチューン
  • フィルター:ローパスフィルター(LPF)をカットオフ800〜1200Hz付近に設定
  • LFO:フィルターカットオフをゆっくりモジュレート(0.5〜2Hz程度)
  • エフェクト:わずかなコーラスとディストーション(Driveを軽めに)

ベースとキックの住み分け

DnBのミックスで最も重要な作業のひとつが、キックとベースの帯域の住み分けです。キックが60〜80Hzに基音を持つ場合、ベースのサブは50〜55Hz以下に絞るか、あるいはキックが鳴るタイミングでベースをサイドチェインコンプレッサーで一瞬下げると、両者がクリアに聞こえます。Cubaseでは「Compressorプラグイン → サイドチェイン入力をキックチャンネルに設定」することで実現できます。

古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:

私が現場で一番時間をかけているのが、キックとベースのサイドチェイン調整です。レッスンでも「ミックスが濁る」と悩む生徒さんの大半は、この低域の住み分けができていないことが原因です。Cubaseのコンプレッサーでサイドチェインを設定したあと、アタックタイムを5〜10ms、リリースタイムを80〜120ms前後から試すと、キックのパンチ感を残しながらベースが自然に引いてくれます。数値はBPMによって変わるので、耳で確認しながら1msずつ動かすことをおすすめします。

アレンジ・構成の考え方

DnBのトラックは、クラブ再生を前提とした構成が基本です。一般的な楽曲構成(約5〜7分)は以下のようになっています。

DnB楽曲の標準的な構成例

セクション 小節数の目安 内容
イントロ 8〜16小節 ドラムのみ、またはアトモスフェリックなパッド
ビルドアップ 8〜16小節 フィルター上昇、ライザー、テンションを高める
ドロップ(Aメロ相当) 32小節 フルビート+ベース+メロディ解禁
ブレイク 8〜16小節 ビートが抜け、次のドロップへの期待を高める
2回目ドロップ 32〜64小節 バリエーションを加えた展開、クライマックス
アウトロ 8〜16小節 徐々にフェードアウトまたはストリップアウト

DnBのドロップは「32小節(2小節のパターン×16回ループ)」が最もよく使われる単位です。飽きさせないために、8小節ごとに微細な変化(パーカッションの追加、フィルターのかかり方を変える、ハイハットパターンを変える等)を加えると、長尺でも聴き手を引きつけられます。

メロディ・ハーモニーの扱い

Liquid DNBサブジャンルでは叙情的なメロディが重視されますが、Neurofunk系ではハーモニーよりも「音色のデザイン」や「グルーヴの複雑さ」が前面に出ます。初心者の場合は、まずCマイナーやAマイナーなどの自然なマイナーキーで4〜8小節のベースラインとシンプルなリードメロディを作ってから、ブレイクビーツを乗せる流れで進めると、全体のまとまりが出やすいです。

ミキシング・マスタリングの基本指針

DnBはクラブやフェスのPAシステムで再生されることを想定したジャンルです。そのため、ミックスの段階からラウドネスと低域のバランスを意識した作業が求められます。

各帯域の目安とよくある問題

  • 20〜60Hz(サブベース帯域):モノラルに近い状態で再生されることが多い。ヘッドフォンだけで判断せず、モノラムで確認する習慣をつける
  • 200〜400Hz(中低域):ここが過剰になると「モコッとした」濁りの原因になる。EQでキックとベース以外の不要な中低域をカット
  • 2〜5kHz(存在感帯域):スネアやリードシンセのアタック感に直結。ここが弱いと楽曲全体が遠く聞こえる
  • 10kHz以上(空気感帯域):ハイハットやサイン波的なリードに関わる。過剰だと刺さる、不足だと曇る

マスタリングの目標ラウドネス

ストリーミング配信(Spotify、Apple Music等)のラウドネス基準はおおむね−14 LUFS(Spotify)です。ただしDnBのような低域重視ジャンルはピークレベルが出やすいため、マスタリングリミッターでTrue Peakを−1 dBTPに設定し、全体のRMSを−6〜−9 dBRMS程度に収めることを目標にするとバランスがとりやすいです。

また、DnBはモノラル再生(クラブのフロアモニター含む)でも低域が破綻しないよう、ミックス段階でモノラルチェックを必ず行う習慣をつけましょう。

上達のロードマップ:初心者がDnB制作を身につけるまで

DnBはリズム・音作り・ミキシングすべてに高い水準が要求されるジャンルです。一方で、コツを掴んだ段階から制作が急速に楽しくなる「気づきのジャンル」でもあります。以下に実践的な学習の目安を示します。

フェーズ別の所要時間目安

フェーズ 目標 所要時間の目安
Phase 1 ブレイクビーツを1パターン打ち込んでループ再生できる 1〜2週間(1日30分〜1時間)
Phase 2 サブベースとReese Bassを作り、ドラムと合わせられる 2〜4週間
Phase 3 ドロップ32小節の完成+サイドチェイン設定 1〜2ヶ月
Phase 4 フルトラック(5分程度)のアレンジ完成 2〜3ヶ月
Phase 5 ミキシング・マスタリングを行い配信クオリティに 3〜6ヶ月以降

もちろん個人差はありますが、週3〜4回DAWを開いて実践的に手を動かし続けることが最も大切です。孤独に悩み続けるより、経験者のフィードバックを早めに受けることで、停滞期間を大幅に短縮できます。

独学で詰まりやすいポイント3選

  • ①リズムが「機械的すぎる」問題:ベロシティとノートの微妙なズラし(ヒューマナイズ)の感覚は、実際の演奏経験やフィードバックがないと身につきにくい
  • ②低域が「モコモコ」になる問題:モニター環境に依存するため、スピーカーとヘッドフォンの両方で確認する習慣や、スペクトラムアナライザーの読み方を覚える必要がある
  • ③アレンジが「単調」になる問題:音楽理論のコード進行やテンションの付け方を知らないままだと、ドロップが32小節で飽きてしまう構造になりやすい

これらの壁は、DTM専門の講師によるマンツーマン指導で効率よく乗り越えられます。コアミュージックスクールのDTM+作曲講座では、Cubaseを使った音作りからアレンジ・ミキシングまでを一貫して学べる環境を提供しています。

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レッスンでは生徒一人ひとりの制作スタイルや目標に合わせてカリキュラムを組むため、「ブレイクビーツの打ち込みだけ集中的に練習したい」「サブベースの音作りを一から教わりたい」といった具体的なニーズにも対応できます。DAWはCubaseを使用しており、操作の基本から実践的なテクニックまでを現場感のある指導で学べます。

また、DTM・作曲以外にもボーカル講座など全9コースを開講しており、歌ものトラック制作にも発展させやすい環境が整っています。

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