ボカロ調楽曲の作り方|ハイテンポ・特徴的コード進行をDTMで再現する方法

DTM・作曲

「あのボカロっぽいサウンドをDTMで作りたいけど、どこから手をつければいいかわからない」——そう感じている方は多いはずです。ボーカロイド楽曲(いわゆる”ボカロ曲”)には、BPM160〜200前後のハイテンポ、独特のコード進行、そして人間の歌唱では難しい音程跳躍が組み合わさった固有の文法があります。DTM初心者〜中級者の方に向けて、ボカロ調楽曲を構成する音楽的要素を具体的な数値・手順とともに解説します。

ボカロ調楽曲の作り方|ハイテンポ・特徴的コード進行をDTMで再現する方法
DTM・作曲の学習イメージ

まず結論からお伝えすると、ボカロ調サウンドを再現する3つのポイントは「①BPM設定とグリッド活用」「②借用和音・ノンダイアトニックを多用したコード進行」「③ボーカルシンセのピッチ・フォルマント調整」です。これらを順に押さえることで、ジャンルの”核”を効率よく習得できます。

ボカロ楽曲の音楽的特徴を数値で理解する

ボカロ楽曲には、他のポップスジャンルと明確に異なる数値的特徴があります。まず確認しておきましょう。

テンポ(BPM)の傾向

ジャンル 一般的なBPM帯 ボカロとの差
J-POP(一般) 70〜130 BPM かなり遅め
アニソン 130〜165 BPM やや近い
ボカロ(ハイテンポ系) 160〜200 BPM 基準値
ボカロ(バラード系) 70〜100 BPM 緩急の幅が大きい

ハイテンポ系ボカロ曲の代表的なBPM設定として、170〜185 BPMが最も多く見られます。この速度では16分音符が1拍あたり4つ収まり、ボーカルラインに「詰め込み感」が生まれます。これがボカロ特有の”早口フレーズ”の気持ちよさの源です。

音域と音程跳躍の特徴

人間のボーカルでは歌唱困難な音程跳躍(例:1オクターブ以上の瞬間移動)も、ボーカロイドソフトでは難なく打ち込めます。メロディラインに意識的に長9度・短10度といった大跳躍を組み込むことで、”人間離れした疾走感”が演出できます。また、メロディの音域は女声ボカロであればC4〜G5(ミドルCから上のG)程度を基本に、サビで一気にA5やB5に上げるダイナミクス設計が多用されています。

コード進行の法則:借用和音とノンダイアトニックの使い方

ボカロ楽曲をコード進行の観点から分析すると、いくつかの”定番パターン”が浮かび上がります。ただし、単純なコピーではなく「なぜその和音を使うのか」を理解することが、オリジナル曲への応用力につながります。

よく使われる進行パターン

以下は、ハイテンポ系ボカロ楽曲のAメロ〜サビで頻出するコード進行の例です(キー:Cメジャー基準)。

  • パターン①(王道ボカロ進行):Am → F → C → G → Am → F → G → E(♭VII借用)
  • パターン②(切なさ強調):Dm → G → Em → Am → F → G → A(平行短調への転調含む)
  • パターン③(疾走感重視):C → G → Am → Em → F → C → Dm → G(ダイアトニックのみだが16分刻みのリズムで速度感UP)

特に注目したいのが「♭VII(フラットセブン)借用」です。CメジャーキーにBb(シ♭・レ・ファ)を混ぜることで、瞬間的に”ロック感”や”疾走感”が加わります。この借用和音は、ボカロ楽曲のサビ転換部に非常によく登場します。

転調の多用

ボカロ楽曲では、Aメロ・Bメロ・サビでそれぞれ異なるキーへ転調するケースも珍しくありません。特に「半音上げ転調(例:CメジャーからC♯メジャーへ)」をサビ手前に置くことで、感情の高揚感を増幅させる手法は定番です。DAWのピアノロール上でMIDIデータをそのまま半音上にシフトするだけで試せるので、まず実験してみることをおすすめします。

古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:

私が実際にレッスンで生徒さんに伝えているのは、「借用和音は”色”として使う」という感覚です。CubaseのコードパッドでAm進行を鳴らしながら、♭VIIのBbをワンクリックで試してもらうと、音の変化に驚く方がとても多いです。理論を覚えるより先に「耳でその変化を楽しむ」体験をすることで、コード選びの直感が育ちます。進行を覚えるより、まず音の色の違いを感じてみてください。

DAWセットアップ:Cubaseでボカロ調トラックを作る手順

ここからは具体的なDAW操作の流れを解説します。使用するDAWはCubase(バージョン12/13)を想定しています。他のDAWでも基本的な考え方は共通です。

Step 1:プロジェクト設定

  • テンポ:175 BPM(まず175で試すと多くのボカロ曲に近い感覚が得られます)
  • 拍子:4/4拍子(変拍子を使う場合は慣れてから)
  • サンプルレート:44,100 Hz(48,000 Hzでも可)
  • ビット深度:24bit
  • クオンタイズ:16分音符グリッド(8分音符では詰め込み感が出にくい)

Step 2:ドラムパターンの構築

ハイテンポのボカロ楽曲では、ドラムが楽曲全体のグルーヴを支配します。基本パターンは以下の通りです。

  • キック:1拍目・3拍目に配置(4つ打ちは避けた方がボカロらしさが出る)
  • スネア:2拍目・4拍目(強め、-6dB程度のベロシティ統一)
  • ハイハット:8分または16分で刻む(16分刻みで疾走感が増す)
  • クラッシュ:コード変わり目の頭に配置

ドラムはサンプル音源(例:Addictive Drums、Steven Slate Drums)を使うと、打ち込みでもリアルな音質が得られます。音量バランスの目安として、キックのピークを-6dBFS前後に設定し、そこを基準に他パートを積み上げると整いやすいです。

Step 3:ピアノ・シンセリードの打ち込み

ボカロ楽曲ではピアノやシンセリードが「メロディの副旋律」として機能することが多いです。メインボーカルと3度〜5度のハーモニーで重ねると、厚みと疾走感が両立します。音色選びのポイントは以下の通りです。

  • シンセリード:サスティンを短め(100ms以下)に設定し、アタックを際立たせる
  • ストリングス:pad系よりも短いリリース(300〜500ms)で歯切れよく
  • ベースライン:ルート音を8分で刻み、コード変わり目の前に5度音を挟む

Step 4:ボーカルシンセ(VOCALOID・SynthV等)の設定

ボーカロイドソフトはVOCALOID6やSynthesizer Vが現在の主流です。打ち込みの際に意識したい設定値を以下にまとめます。

パラメータ 推奨値(ハイテンポ系) 効果
ピッチビブラート(深さ) 10〜20%程度 機械感を残しつつ自然に
ジェンダーファクター(フォルマント) -20〜0の間 声の質感調整
ダイナミクス(Dynamics) 50〜80の間で抑揚をつける 棒読み感を軽減
クリアネス(Clearness) 50〜70 子音の明瞭度を上げる
ノートの長さ 16分音符単位を基本に 詰め込み感・早口感の演出

ボーカルパートの打ち込みで特に時間をかけたいのが「歌詞の母音・子音タイミング」です。日本語は子音が短く母音が長い言語のため、高速テンポで打ち込む際に音節がつぶれやすくなります。各ノートを微調整し、子音開始のタイミングを実際の拍より数ms早めに設定すると、速い曲でも歌詞が聞き取りやすくなります。

ミックスのポイント:ボカロ楽曲らしい音圧と抜け感

どれだけ良い打ち込みができても、ミックスが弱いと完成度は上がりません。ボカロ楽曲特有の「音が詰まっているのに抜けて聞こえる」サウンドには、いくつかの具体的なテクニックがあります。

EQ処理の基本

  • ボーカルシンセ:200Hz以下をカット(ローカット)し、2kHz〜5kHz帯を2〜3dBブーストで存在感を上げる
  • ドラム(キック):60〜80Hzのサブベースを強調、500Hz付近を1〜2dBカットして抜けを改善
  • シンセリード:1kHz〜3kHz帯を活かして中域に存在感を持たせる
  • ストリングス・パッド:400Hz以下をローカット、8kHz以上もハイカットして帯域整理

コンプレッサーとリミッターの活用

ボカロ楽曲の音圧は、リスニング環境がスマートフォンや動画サイトを前提としているため、ラウドネス値をYouTubeの基準(-14 LUFS)やSpotifyの基準(-14 LUFS)に合わせて調整するのが現代的なアプローチです。マスタートラックにはFabFilter Pro-LやOzone(iZotope)といったプラグインが定番で使われています。

リバーブとディレイの使い方

ボカロ楽曲ではリバーブを薄めにかけて「ドライ感」を残す傾向があります。ルームリバーブのプリディレイを20〜30ms程度に設定し、デッキャイタイムを1秒以内に抑えると、音の分離感が保てます。ボーカルシンセには短めのステレオディレイ(1/16音符=テンポシンク)を薄くかけると、サビでの広がりが演出できます。

古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:

私が現場で実際に時間をかけているのは「EQでの帯域整理」です。特にボカロ楽曲はトラック数が多くなりがちで、ボーカルと同じ中域(1kHz〜3kHz帯)をシンセやギターが奪い合うことがよくあります。Cubaseのチャンネルストリップでまずローカットをかけてから、ソロで音を聴くよりも必ず”全体再生中に”EQを動かすようにしています。そうすることで、各パートの”居場所”が感覚的につかめるようになります。

ボカロ楽曲制作の学習ロードマップと所要時間

実際にボカロ楽曲を1曲仕上げるまでにどれくらいの時間がかかるのか、段階別に整理しました。あくまで目安ですが、計画を立てる参考にしてください。

フェーズ 作業内容 目安時間(初回)
1. 構成・コード決め Aメロ・Bメロ・サビの構成設計、コード進行の決定 2〜5時間
2. メロディ打ち込み ボーカルシンセへの歌詞・音程入力 3〜8時間
3. 伴奏トラック制作 ドラム・ベース・シンセ・ピアノの打ち込み 5〜15時間
4. ミックス・マスタリング EQ・コンプ・リバーブ調整、音圧仕上げ 3〜10時間
合計(初回) 13〜38時間

初回は時間がかかりますが、2〜3曲制作するうちに各フェーズの作業が体に馴染み、半分程度の時間で完成できるようになる方が多いです。特にコード進行とドラムパターンは”テンプレート”として保存しておくと、次回以降の制作効率が大幅に上がります。

必要な機材・ソフトの目安費用

  • DAW(Cubase Elements):約13,000円〜(Cubase Pro は約66,000円)
  • ボーカルシンセ(Synthesizer V Studio Pro):約10,780円(ボイスバンク別途)
  • オーディオインターフェイス:8,000〜30,000円(Steinberg UR22C等)
  • モニターヘッドフォン:8,000〜20,000円(SONY MDR-7506、Audio-Technica ATH-M50x等)
  • 合計概算:39,780円〜(既にPCがある場合)

ボーカロイドソフトはSynthesizer V(SynthV)が音質面・操作性ともに現在非常に評価が高く、日本語に最適化されたボイスバンクも充実しています。VOCALOID6との比較では、SynthVの方がAI歌声合成の品質が高いと言われることが多いです。

上達を加速するために意識したい3つのポイント

独学でも一定レベルまで到達できるのがDTM・ボカロ制作の魅力ですが、次のような壁にぶつかる方は少なくありません。

①「なんとなく作れる」から抜け出す音楽理論

コード進行を感覚で選べるようになるには、スケール・ダイアトニックコード・借用和音の基礎を一度体系的に学ぶことが近道です。特に「なぜその和音を選んだか」を言語化できると、作曲の再現性が上がります。DTM・作曲講座では、こうした音楽理論と実際のDAW操作を組み合わせてマンツーマンで学べます。

②ミックスの「なんか違う」を解消する耳トレ

市販曲と自分の楽曲を聴き比べたとき、「なんか違う」と感じる原因の多くはEQ処理と音量バランスです。好きなボカロ楽曲のスペクトラムアナライザー表示を見ながら、自分のプロジェクトと比較する練習を繰り返すと、耳が鍛えられます。

③ボーカルシンセの「棒読み感」をなくす調声技術

ボカロ楽曲の品質を大きく左右するのが調声(チューニング)のクオリティです。音符の長さ・ピッチカーブ・ブレスの有無など、細かな設定が積み重なって”表情”が生まれます。ボーカル表現の基礎となる発声・フレージングの感覚を磨きたい方には、ボーカル講座での発声体験も、調声の質を上げるヒントになります。

コアミュージックスクールでボカロ・DTM制作を学ぶ

ここまで読んで「実際に作ってみたいが、どこから始めればいいかまだわからない」という方や、「独学で限界を感じてきた」という方には、プロ講師によるマンツーマンレッスンが大きな助けになります。

コアミュージックスクールは、JR川口駅から徒歩2分の場所にある音楽教室です。DTM・作曲技法・音楽理論を専門とする現役講師が、生徒一人ひとりのペースと目標に合わせてカリキュラムを組んでいます。

レッスンでは、ボカロ楽曲制作に特化した内容として以下のような指導が受けられます。

  • Cubaseを使ったプロジェクト設定から書き出しまでの一連の流れ
  • コード進行の選び方・借用和音の実践的な使い方
  • ドラム・ベース・シンセの打ち込みとサウンドデザイン
  • ボーカルシンセ(SynthV等)の調声テクニック
  • ミックス・マスタリングの基礎と音圧調整

「まずどんな雰囲気か知りたい」という方のために、無料体験レッスンもご用意しています。実際にDAWに触れながら講師と話せる機会ですので、ぜひ気軽にお申し込みください。川口駅近くにお住まいの方はもちろん、埼玉・東京方面からも通いやすい立地です。

ボカロ楽曲制作は、知識と実践の積み重ねで確実に上達できる分野です。コード進行・テンポ設定・調声・ミックスという4つの柱を、一つずつ丁寧に積み上げていきましょう。疑問や行き詰まりを感じたとき、プロの視点からのアドバイスが大きな突破口になるはずです。

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