「MIDIキーボードを買いたいけど、鍵盤の数はどれがいいの?」「安いもので十分?それとも多機能なほうがいい?」——DTMを始めようとするとき、最初につまずくのが機材選びです。種類が多すぎて何を選べばいいか分からず、購入をためらっている方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、初心者には25〜49鍵、ある程度弾ける方や本格的な制作を目指す方には61鍵以上がおすすめです。用途と置き場所に合わせて鍵盤数を決めることが、失敗しない最大のコツです。この記事では、鍵盤数ごとの特徴と代表的なモデルを比較しながら、あなたにぴったりの1台を選ぶポイントをくわしく解説します。
コアミュージックスクールのDTMレッスンでは、DTM・作曲講座を担当する古賀 稔宏講師が、Cubaseと組み合わせたMIDIキーボードの使い方を日々指導しています。その現場経験をもとに、購入前に知っておきたい実践的な知識をまとめました。
MIDIキーボードとは?DTMでの役割をおさらい
MIDIキーボードとは、音源を内蔵せず、MIDI信号をDAWソフトやシンセサイザーに送ることに特化した鍵盤楽器です。それ自体からは音が出ず、Cubase・Ableton Live・Logic Proなどのソフトウェアと組み合わせて初めて音が鳴ります。
DTM制作でMIDIキーボードが活躍する場面は大きく3つあります。
- リアルタイム入力:弾いた音をそのままDAWに録音する
- ステップ入力のサポート:ピアノロール編集時に音程確認をしながら打ち込む
- コード・メロディの作曲補助:頭の中のイメージを素早く音として確認する
マウスだけでも打ち込みはできますが、MIDIキーボードがあると作曲のスピードと表現力が大きく変わります。ベロシティ(鍵盤を弾く強さ)やアフタータッチといった演奏ニュアンスをリアルタイムで記録できるため、機械的になりがちなDTMサウンドに人間らしさを加えられるのが最大のメリットです。
鍵盤数別の特徴比較|25鍵・49鍵・61鍵・88鍵どれを選ぶ?
MIDIキーボードを選ぶうえで最初に決めるべきなのが「鍵盤数」です。以下の表で4つのサイズを比較してみましょう。
| 鍵盤数 | オクターブ数 | 価格帯(目安) | こんな人向け | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| 25鍵 | 約2オクターブ | 3,000〜15,000円 | 超コンパクト派・出先での作業・打ち込み中心 | 弾ける音域が狭く、演奏は不向き |
| 37鍵 | 約3オクターブ | 8,000〜20,000円 | デスクスペースが限られる人・持ち運びしたい人 | コード+メロディで音域がギリギリになることも |
| 49鍵 | 約4オクターブ | 10,000〜35,000円 | DTM入門〜中級・作曲メインの人 | ピアノ練習には鍵盤数が不足 |
| 61鍵 | 約5オクターブ | 20,000〜60,000円 | バンドアレンジ・ピアノを並行して学ぶ人 | 場所をとる・重量が増す |
| 88鍵 | 7.25オクターブ | 30,000〜200,000円以上 | ピアノ経験者・クラシック〜ジャズまで幅広く弾く人 | 大型で高額・初心者にはオーバースペックになりやすい |
25鍵・37鍵|コンパクト重視ならこれ
机のスペースが限られている方や、ノートPCと一緒に持ち運びたい方に向いています。代表モデルはArturia MiniLab 3(25鍵・約12,000円)やKORG nanoKEY Studio(25鍵・約18,000円)。ノブやパッドが充実しているモデルが多く、ソフトシンセのパラメーター操作やビートメイキングに向いています。
ただし、弾ける音域が狭いため、コードを左手で押さえながらメロディを右手で弾くような演奏スタイルには不向きです。オクターブシフトボタンで音域を切り替えながら使う必要があります。
49鍵|DTM入門に最もバランスがいい
4オクターブあれば、左手のコードと右手のメロディラインを同時に弾けます。DTMでの作曲・打ち込み用途なら49鍵がもっとも汎用性が高く、初心者からインターメディエイトまで長く使えます。
代表モデルとして挙げられるのはAKAI Professional MPK249(49鍵・約30,000円)やNative Instruments Komplete Kontrol A49(49鍵・約25,000円)。ドラムパッドやノブを備え、DAWとの連携機能が充実しているモデルが多いのも49鍵帯の特徴です。
61鍵|バンドアレンジや鍵盤演奏も視野に入れるなら
ピアノを並行して練習したい方、あるいはオーケストラアレンジや複数楽器のMIDI打ち込みを本格的にやりたい方には61鍵がおすすめです。Roland A-800PRO(61鍵・約35,000円)やYamaha P-125(88鍵・電子ピアノ兼用)なども選択肢に入ります。
88鍵|ピアノの演奏品質を求めるなら
88鍵モデルはピアノと同じ鍵盤数を持ち、ハンマーアクション(鍵盤を弾く際の重さ・反発感)を再現した機種が多いです。DTM専用というよりは「ピアノの練習もしながらDTMもやりたい」という方向け。Roland FP-30X(88鍵・約65,000円)やKAWAI ES120(88鍵・約75,000円)などが知名度の高いモデルです。価格帯が上がりますが、ピアノタッチの再現度が高く、指の独立性を鍛えるうえでも優位性があります。
古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:
私がレッスンで生徒さんによくお伝えするのは、「まず49鍵から入ってみてください」という話です。Cubaseでコードを鳴らしながらメロディラインを確認する作業が4オクターブあると格段にやりやすくなります。25鍵から始めた方が「オクターブシフトが面倒でやる気がなくなった」とおっしゃることもありますので、DTM専用でも49鍵前後を選んでおくと後悔が少ないと感じています。
MIDIキーボード選びで見るべきスペック5つ
鍵盤数が決まったら、次は細かいスペックを確認します。見落としがちなポイントを5つに絞って解説します。
① 鍵盤のタッチ感(セミウェイテッド vs アンウェイテッド)
鍵盤には大きく分けて3種類の感触があります。
- アンウェイテッド(シンセアクション):軽くて弾きやすい。シンセやオルガンの演奏、素早い打ち込みに向く
- セミウェイテッド:中程度の重さ。DTMでの作曲と演奏の両立に適している
- フルウェイテッド(ハンマーアクション):ピアノに近い重さ。ピアノ演奏の練習に最適だが、DTM作業には少し重すぎる場合も
DTMメインであればセミウェイテッドが使い勝手よく、ピアノ経験者はフルウェイテッドを好む傾向があります。
② ベロシティ感度とアフタータッチ
ベロシティとは、鍵盤を弾く強さ(0〜127の128段階)のことです。感度が悪いモデルでは、弱く弾いても強く弾いても差が出にくく、表現力が落ちます。特に弦楽器やピアノ音源で繊細なダイナミクスを出したい場合は、ベロシティカーブ調整機能があるモデルを選ぶと重宝します。
アフタータッチ(鍵盤を押し込む追加圧力)はビブラートやモジュレーションに使える機能で、上位モデルに搭載されています。必須ではありませんが、表現の幅が広がります。
③ DAWとの連携(プラグイン・コントローラー機能)
DAWとの親和性も重要です。たとえばNative Instruments製品はNIのソフトシンセ群と連携しやすく、AKAIのMPKシリーズはAbleton Liveとの相性がよいとされています。Cubaseユーザーの場合、Mackie ControlやHUI対応のモデルを選ぶとトランスポートコントロール(再生・停止・録音ボタン)がそのまま使えて便利です。
④ パッド・ノブ・フェーダーの有無
ドラムパッド(8〜16個)があればビートメイキングに、ノブやフェーダーがあればソフトシンセのパラメーター操作に役立ちます。ただし、機能が増えると価格も上がるため、自分の用途に本当に必要かどうかを先に考えましょう。作曲・メロディ入力メインなら鍵盤品質に予算を集中させたほうが満足度が上がりやすいです。
⑤ 接続方式(USB-A / USB-C / MIDI DIN)
現在の主流はUSB接続(バスパワー)で、PCに挿すだけで電源が取れて便利です。MacBookなどUSB-Cしかない場合はアダプターが必要になることも。また、ハードシンセと組み合わせたい場合はMIDI DIN端子(5ピン)の有無も確認しましょう。
予算別おすすめMIDIキーボード比較表
以下に代表的なモデルをまとめます。価格はおおよその市場価格(2024年時点)です。
| モデル名 | 鍵盤数 | タッチ感 | パッド/ノブ | 価格(目安) | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| Arturia MiniLab 3 | 25鍵 | アンウェイテッド | あり(パッド8、ノブ8) | 約12,000円 | ソフトシンセ多数付属・コスパ高 |
| AKAI MPK Mini mk3 | 25鍵 | アンウェイテッド | あり(パッド8) | 約12,000円 | コンパクトで持ち運びしやすい |
| Native Instruments Komplete Kontrol A49 | 49鍵 | セミウェイテッド | あり(ノブ8) | 約25,000円 | NIプラグインとの連携が優秀 |
| AKAI Professional MPK249 | 49鍵 | セミウェイテッド | あり(パッド16、ノブ8) | 約30,000円 | パッドの品質が高くビートメイクにも |
| Roland A-800PRO | 61鍵 | セミウェイテッド | あり(ノブ8、フェーダー8) | 約35,000円 | 鍵盤タッチの品質が高い |
| Roland FP-30X | 88鍵 | ハンマーアクション | なし | 約65,000円 | ピアノ練習との兼用に最適 |
1万円台で選ぶなら
ArturiaのMiniLab 3はAnalog Lab付属で、購入直後からさまざまな音色を使えます。「とにかくDTMを試したい」という入門段階にはコスパが高い選択肢です。
2〜3万円台で選ぶなら
Native Instruments Komplete Kontrol A49は、プラグインのブラウジングや音色切り替えが鍵盤上で完結するため、作業効率が上がります。Cubase・Ableton Liveどちらとも相性がよいです。
3万円以上で長く使うなら
Roland A-800PROやFP-30Xは鍵盤のタッチ品質が高く、10年単位で使い続けられる耐久性があります。予算に余裕があれば最初から上位モデルを選ぶほうがトータルコストを抑えられる場合もあります。
古賀 稔宏(ギター・ウクレレ・DTM(Cubase)・作曲技法・音楽理論 講師)より:
私が現場でCubaseを使った編曲作業をするとき、ノブやフェーダーがあるMIDIキーボードは確かに便利なのですが、実際にはソフト側のGUI操作で事足りることも多いです。それよりも、私が時間をかけて判断するのは「鍵盤のタッチ感が自分の弾き方に合っているか」という点です。セミウェイテッドでも機種によって重さがかなり違うので、できれば楽器屋さんで実際に触ってから購入することをおすすめしています。
MIDIキーボードをCubaseで使う設定の基本
購入後に「繋いだのに音が出ない」という相談はレッスンでもよくあります。Cubaseでの基本設定を簡単に確認しておきましょう。
STEP1:デバイス設定でMIDIキーボードを認識させる
Cubaseを起動した状態でMIDIキーボードをUSB接続すると、多くの場合は自動認識されます。認識されない場合は「スタジオ設定(Studio Setup)」→「MIDIポートの設定」からキーボードのポートがアクティブになっているか確認しましょう。
STEP2:インストゥルメントトラックを作成する
プロジェクトウィンドウで右クリック→「インストゥルメントトラックを追加」→HALion Sonic SEなどのソフトシンセを選択します。このトラックが選択された状態でMIDIキーボードを弾けば音が出ます。
STEP3:モニタリングをオンにする
トラック左側の「モニタリング(スピーカーアイコン)」をオンにしないとリアルタイムで音が鳴りません。録音中は自動でオンになる設定もあるため、Cubaseの「設定」→「録音」内の「自動モニタリング」も合わせて確認するとスムーズです。
レイテンシーへの対処
鍵盤を弾いてから音が出るまでの遅延を「レイテンシー」と呼びます。DAWのオーディオインターフェースのバッファサイズを128〜256サンプル程度に設定することで、多くの場合は気にならないレベル(10ms以下)に収まります。バッファサイズを下げすぎると音が途切れるため、自分のPCスペックに合わせて調整しましょう。
よくある失敗と対策|購入前に知っておくべきこと
失敗例1:鍵盤が小さすぎて弾きにくい
25鍵モデルの中には「ミニ鍵盤」仕様のものがあり、通常の鍵盤幅(約22.5mm)より狭い仕様(約15mm程度)になっています。手が大きい方は弾きにくさを感じることがあるため、購入前に「ミニ鍵盤か標準鍵盤か」を必ず確認しましょう。
失敗例2:付属ソフトを使いこなせず放置してしまう
MIDIキーボードには有名なDAWやプラグインが付属していることがあります(Ableton Live Lite、Analogs Lab、Komplete Startなど)。ただし、それらを使いこなすには一定の学習時間が必要です。付属品に引きずられてメインのDAWと行き来が増え、混乱するケースもあるため、まずは1つのDAWに集中することをおすすめします。
失敗例3:音が出ないまま放置して挫折する
DTMでもっともつまずきやすいのが「音が出ない」「設定がわからない」という初期の壁です。Cubaseを使っていれば日本語マニュアルやフォーラムが充実していますが、それでも独学だと時間がかかります。こういった場合は、実際にレッスンで解決するのがもっとも早い方法です。
MIDIキーボードを活かすために|DTMレッスンという選択肢
機材が揃っても「何から始めればいいかわからない」「思うように曲が作れない」という状態が続くと、モチベーションが下がってしまいます。MIDIキーボードをただの入力デバイスとして使うのではなく、作曲・編曲の武器として活かすには、基礎的な音楽理論やDAW操作の知識が不可欠です。
コアミュージックスクールのDTM・作曲講座では、MIDIキーボードを使ったリアルタイム入力の方法から、Cubaseを活用したコードワーク・アレンジ・ミキシングまでをマンツーマンで学べます。ピアノが弾けなくても、楽譜が読めなくても、自分のペースで進められるカリキュラムを用意しています。
また、DTMと並行してボーカルやギター・ウクレレを学びたい方には、ボーカル講座など他のコースとの掛け持ち受講も可能です。楽器の演奏力があると、DTMでのリアルな打ち込みやアレンジの幅がさらに広がります。
まとめ|MIDIキーボードはこう選ぶ
最後に、選び方のポイントを整理します。
- DTMでの打ち込みメイン→ 49鍵・セミウェイテッドのスタンダードモデル(予算2〜3万円)
- 省スペース・持ち運び重視→ 25鍵・標準鍵盤サイズのコンパクトモデル(予算1〜1.5万円)
- ピアノ練習も並行したい→ 61〜88鍵・ハンマーアクション(予算3〜7万円)
- ビートメイク・シンセ操作もしたい→ パッド・ノブ付きの多機能モデル
鍵盤数と予算のバランスが合えば、機材はどれを選んでも制作の入り口として十分機能します。大切なのは「購入して終わり」にならないこと。実際に弾いて、鳴らして、少しずつ作品を作っていくことが上達への近道です。
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