「オーディオインターフェースは必須です」と書いている記事と、「まったく不要です」と書いている記事が、検索結果に並んでいる。どちらも自信満々なので、読んだほうは判断できません。金額が2万円を超える買い物なので、余計に決められない。
先に、事実として確かなことをお伝えします。ColorSing公式FAQのどこにも、オーディオインターフェースが「必須」だという記述はありません。 それどころか、使うと起きる副作用のほうが公式に明記されています。
そのうえで結論を言うと、歌だけを配信する大多数の方には、不要です。 必要になるのは、はっきりした4つの条件のどれかに当てはまったときだけ。この記事では、その条件を声の側から具体的にお伝えします。
この記事は、コアミュージックスクールのボーカル講師・奥津ユキ(ボーカル/ピアノ/サックス/フルート/DTM)の監修のもと作成しています。
結論:公式に「必須」の記述はありません
ColorSing公式FAQを通して確認できるのは、次のことです。
- 公式が配信に求めているのはマイク付きの有線イヤホンであって、オーディオインターフェースではない
- 公式が接続例として名前を挙げている構成は3つあり、そのうちオーディオインターフェースを使うのは1つだけ(AG03 + AT2020)
- 公式が「推奨」という言葉を使っているのは、OBS配信をする場合だけ
- アクセサリー起因の不具合はサポート対象外であり、動作確認済みの製品も「動作を保証するものではない」
つまりオーディオインターフェースは、ColorSingにおいて「必要な装備」ではなく「特定の目的がある人が選ぶ道具」です。
そもそも、何をする機械なのか
誤解されやすいのですが、オーディオインターフェースは「音を良くする機械」ではありません。 主な役割は次の3つです。
- マイクの信号を、端末が扱える形に変換する
- 入力の大きさを、つまみ(ゲイン)で調整できるようにする
- 複数の音(声・楽器・BGM)を混ぜて、まとめて送り出す
ここを押さえると、判断がぐっと楽になります。「入力の大きさに困っていない」「混ぜたい音がない」なら、この機械が解決する問題を、あなたはまだ持っていないということです。
必要な機材や始め方を、始める前に確認できる窓口があります。 質問できる内容と、連絡後の流れを見る →
【図解】オーディオインターフェースが入る場所
「何をする機械なのか」は、音の通り道の中に置いてみると分かりやすくなります。
オーディオインターフェースが入るのは、①の経路のうちマイクとColorSingのあいだです。声を拾ってからアプリに渡すまでの区間を、スマホの代わりに担当する機械だと考えてください。②の経路(自分のイヤホンに返ってくる音)にも関わるため、導入すると「自分の声が二重に聞こえる」といった、それまで無かった調整が発生します。詳しくはAG03MK2の接続手順をご覧ください。
【公式仕様】使うと起きる副作用が3つあります
ここは、ほかの記事があまり書かない部分です。ColorSing公式FAQには、オーディオインターフェースを使ったときの注意点がはっきり書かれています。
副作用①:ガイド音がリスナーにも聞こえてしまう
これがいちばん大きな落とし穴です。オーディオインターフェース経由でアプリの音を入力すると、ガイド音量を上げたぶんが、そのままリスナーにも聞こえます。
機材を使わない構成なら、ガイド音(歌のお手本メロディ)は自分だけに聞こえます。だから安心して頼れる。ところが機材を入れた瞬間、ガイドに頼るほどリスナーの耳にもガイドが流れることになります。「機材を良くしたのに、配信の印象が悪くなった」という、いちばん残念なパターンです。
副作用②:アプリ側の音量が低いと、何も聞こえなくなる
アプリからの音量設定が低いと、ガイド音だけでなくBGMも自分の声の返しも聞こえなくなります。機材側とアプリ側の2か所で音量を管理することになるので、調整の難易度が上がります。
副作用③:ノイズキャンセリングに誤処理される可能性
オーディオインターフェース経由で入れた外部の音は、ColorSingのノイズキャンセリングに誤って処理される可能性があると公式が案内しています。音質が気になる場合はノイズキャンセリングをオフにしてください、というのが公式の対処法です。
ノイズキャンセリングは初期状態でオンなので、機材を導入したら必ず一度この設定を確認してください。設定は「その他詳細設定」の中にあり、イヤホンが接続されていないと表示されません。
公式が「推奨」と書いている、唯一のケース
公式がオーディオインターフェースの利用を推奨しているのは、OBSを使った配信をする場合のみです。
この構成ではスマホとPCが1台ずつ必要で、PCのマイクから音声を拾います。ところがカラオケのBGMはスマホから流れるので、そのままPCのマイクで拾うと音質が悪くなる。だからオーディオインターフェースを挟んでください、という文脈です。
つまり、PCで演出をしたいVTuberのような使い方をする人向けの推奨であって、スマホ1台で歌う人に向けた推奨ではありません。ここを取り違えて「公式が推奨しているらしい」と読んでしまう方がいます。
【公式】オーディオインターフェースが推奨される場面
公式FAQは、オーディオインターフェースを常に必須とはしていません。一方、OBS配信では利用を推奨し、アクセサリー使用時のサポート範囲も明記しています。
カラオケのBGMはスマホから流れますのでオーディオインターフェースの利用を推奨します
※スマホのカラオケBGMをそのままPCマイクで拾うと音質が悪くなります
イヤホンマイク、スピーカー、ミキサー等のアクセサリー類のご使用時に生じる不具合についてはサポート対象外となります。
各アクセサリー類を使用中にアプリが正常にご利用できない場合は、一度アクセサリー類を全て外していただき、ご利用可能かどうかをお試しください。
判断の基準は、OBS配信でスマホのカラオケBGMとPC側の音声を扱うかどうかです。該当する場合は公式の推奨がありますが、通常の配信すべてに必要だとはFAQに書かれていません。
導入するLシンガーは、機材をつないだ状態だけでなく、すべて外した状態でも動作確認してください。不具合が出たときに、アプリ側とアクセサリー側を切り分けられるようにしておくことが、公式FAQに沿った確認手順です。
【講師の視点】いる人・いらない人
声を教える立場から、必要になる条件を挙げます。以下に当てはまらないなら、当面は不要です。
条件1:声量が大きく、サビで音が割れる
しっかり声が出る方は、イヤホンマイクだと入力が飽和して、サビでバリッと割れることがあります(クリッピング)。歌が得意な方ほど起きる現象で、練習では起きないのに配信で起きるのが厄介なところです。
オーディオインターフェースには入力の大きさを調整するつまみ(ゲイン)があるので、ここで解決できます。「サビで音が割れる」とコメントで言われたことがあるなら、検討する価値があります。
条件2:息の成分が多い声質で、音量が上がらない
逆のパターンです。息をたっぷり含んだ柔らかい声質の方は、入力レベルが足りず、音量を上げると部屋のノイズまで一緒に大きくなります。この場合、質の良いマイクプリアンプ(オーディオインターフェースに内蔵されています)を通すことで、ノイズを抑えたまま必要な音量を確保できます。
自分がどちらのタイプか分からない方は、スマホのボイスメモで一番静かなフレーズと一番大きいフレーズを録って、波形を見比べてください。 全体に小さくて平らならこちらのタイプです。
条件3:ギターやピアノで弾き語りをしたい
声と楽器で入力が2系統以上必要になるため、実質的に必須です。イヤホンマイク1本では構成として成り立ちません。
条件4:BGMや効果音を、別で流したい
雑談の時間にBGMを流す、といった運用をしたい場合も、音を混ぜる機能が必要になります。
逆に、こういう方は不要です
- 普通の声量で、音の割れも音量不足も起きていない
- 歌のみで、弾き語りはしない
- 自分の声とカラオケ音源だけで配信している
これが大多数です。「なんとなく良さそうだから」で2万円以上を投じる必要は、まったくありません。
【講師の視点】導入する「タイミング」を間違えないでください
必要かどうかと同じくらい大事なのに、どこにも書かれていない話をします。
オーディオインターフェースを入れると、イヤホンに返ってくる自分の声の質感が変わります。 そして人は、返りが変わると無意識に歌い方を変えます。返りが太くなれば力を抜き、細くなれば押す。音程の取り方まで変わります。
つまり導入直後は、機材は良くなったのに、歌のコントロールは一時的に不安定になる期間が発生します。数回の配信で慣れますが、その数回は確実にあります。
だから、大事な時期に機材を替えないでください。 特にLシンガー審査の「おためし配信」の直前は避けたほうが安全です。二次審査は3日間のおためし配信のあと、3旬以内にリーグ25以上で通過という制度(2024年9月11日以降。最新の条件は公式FAQでご確認ください)。ここに、慣れていない環境をぶつける理由はありません。
替えるなら、審査や大きな企画のない時期に替えて、最低でも数回は配信して耳を慣らしてから本番に臨む。これが実務的な順番です。
買う前に知っておきたい、4つの不都合
①公式が動作確認しているAG03は、生産完了品
公式FAQには「AG03での音量調整・声の返し・接続」という専用の案内があります。ただし、ここで扱われているAG03(無印)はすでに生産を終了しています。ヤマハの現行ラインナップはAG08/AG06MK2/AG03MK2/AG03MK2 LSPKで、いま買えるAG03MK2は公式の動作確認対象ではありません。
②公式の組み合わせは「AT2020」であって「AT2020USB」ではない
AT2020はXLR接続で48Vのファントム電源を必要とするコンデンサーマイクで、AG03のコンボ入力に挿す前提の製品です。名前の似たAT2020USBはUSB直結型なので、AG03のXLR入力には物理的に挿さりません。買い間違えると構成が成立しません。
③電源は「2階建て」になっている
「カメラアダプタをつなげばAG03が動く」というのは誤りです。ヤマハの公式マニュアルは、iPhoneとの接続時には外部からの電力供給が必要だと案内しており、AG03MK2の[5V DC IN]USB端子に、市販のUSB電源アダプターまたはUSBモバイルバッテリー(5V 1A以上)をつなぐよう案内されています。カメラアダプタ側のLightning給電はiPhone本体の充電のためで、AG03を動かす電源とは別物です。
④iPhone 15以降向けの公式接続ガイドが存在しない
ColorSing公式が示している接続手順は、すべてLightning端子+Apple純正カメラアダプタを前提に書かれています。iPhone 15以降のUSB-C世代について、公式は接続方法を案内していません。
Apple純正の「USB-C – USBアダプタ」(2,980円・2026年8月時点)はありますが、この製品には給電用のポートがありません。上記③の要件を満たせるかどうかは、公式に確認されていない領域です。USB-C世代の方は、高額な構成に踏み切る前に一度立ち止まってください。
費用の目安
| 品目 | 価格の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| YAMAHA AG03MK2 | 約24,800円 | 実売の参考値。ヤマハはオープン価格 |
| audio-technica AT2020 | 約11,500円 | 実売の参考値 |
| Lightning – USB 3カメラアダプタ | 7,480円 | Apple公式。Lightning世代の場合 |
| 合計 | 約4.4万円 | ケーブル・電源アダプタ類は別途 |
(2026年8月時点。Apple製品はApple公式サイト、その他は実売の参考値です)
この記事の確認条件
機材は、端末・OS・型番・ケーブル・電源の条件が変わると結果も変わります。どこまで確かめたものかを開示しておきます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 確認日 | 2026年8月14日 |
| 仕様の出典 | ColorSing公式FAQ(アクセサリー/AG03/推奨環境)、ヤマハ公式ユーザーガイド(AG03MK2・AG06MK2) |
| 価格・型番の出典 | Apple公式ストアで確認(2026年8月時点)。オーディオ機器はオープン価格のため実売の参考値です |
| 実際の配信で使っている構成 | iPhone+マイク付き有線イヤホン(当事務所の所属シンガーが実際に配信している構成です) |
| 確認できていない範囲 | 現行のAG03MK2とUSB-C世代iPhoneの組み合わせは、私たちも実機で確認できていません。ColorSing公式・ヤマハ公式のどちらにも該当する記載がないため、この記事では「必ずつながる」とは書いていません |
よくある質問
Q. オーディオインターフェースを入れれば、音質は上がりますか?
A. 入力レベルの管理はしやすくなります。ただしColorSingでは、ガイド音がリスナーに聞こえるなどの副作用も同時に発生します。総合的に良くなるかは、使い方次第です。
Q. AG03以外のミキサーやオーディオインターフェースは使えますか?
A. 公式FAQに記載がありません。可否は公式に確認されていない領域です。
Q. 予算を抑えるなら、どこから削れますか?
A. そもそも導入しない、が最も効果的です。次点は、オーディオインターフェースを飛ばしてUSBマイク(FIFINE K658・約8,000〜10,000円/2026年8月時点の参考価格)にする構成です。本体にイヤホン端子があるので、接続もシンプルになります。
Q. 接続できているか、どう確認しますか?
A. iPhone本体のボタンで音量が変えられなくなっていれば、接続できています。 音量ボタンが効くなら、つながっていません。
Q. 機材を買えば、歌が上手く聞こえますか?
A. 限定的です。改善するのは「音の届き方」で、音程やリズム、声の響きそのものは変わりません。2,980円のイヤホンで始めて、浮いたぶんを練習の時間に回すほうが、リスナーに届く変化は大きいというのが講師としての実感です。
外部マイクや機材を追加せずに配信できる範囲は、カラーシングはマイクなしでも配信できる?できることとできないことも参考になります。
オーディオインターフェースをPC側に繋ぐ構成を考えている方は、先にカラーシングをPCで使うには?対応状況と実際にできることをご確認ください。
AG03を使った具体的な配信手順はカラーシングのOBS配信とAG03の設定方法で解説しています。
まとめ
- 公式FAQに「必須」の記述はない。歌だけを配信するなら不要
- 公式が「推奨」と書いているのはOBS配信の場合のみ
- 使うとガイド音がリスナーに聞こえるという副作用がある
- 必要になる条件は音が割れる/息が多くて音量が上がらない/弾き語り/BGM運用の4つ
- 導入直後は歌い方が一時的に乱れる。審査直前に替えない
- 公式確認機種の無印AG03は生産完了、USB-C世代の公式ガイドもなし
マイクまわりの選び方はカラーシングのマイクおすすめ、AG03の具体的な接続と設定はカラーシングでミキサーを使うにはにまとめています。ガイド音が漏れる問題はカラーシングのガイド音がリスナーに聞こえてしまう原因と直し方、機材の全体像はColorSingの機材は何が必要?をご覧ください。
2万円を超える買い物の前に、ColorSing公認事務所「コアミュ」に相談していただいてもかまいません。「買わなくていいです」とお伝えすることも普通にあります。手数料0%・入会金や月会費なし・ノルマなし、音楽教室「コアミュージックスクール」の現役講師が対応します。詳しくはコアミュの公式ページへ。
監修
奥津ユキ(コアミュージックスクール講師)
ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTMを担当。



