「スマホの小さい画面で歌詞を追うのがつらい」「パソコンのほうが音がよくなるはず」「配信するならPCでしょう」。カラーシング(ColorSing)を続けているうちに、一度はこう考えます。
先に結論をお伝えします。パソコンだけでカラーシングを配信することはできません。 AppleシリコンのMacであればApp Storeからアプリ自体は使えますが、配信は除外されており、長押し操作もできず、サポート保障の範囲外です。
PCを使った配信方法として公式に案内されているのはOBS配信だけで、これはスマートフォンとPCが1台ずつ必要な2台構成です。PCがスマホの代わりになるわけではありません。
そして、これがいちばん大事なところです。PCを使いたい理由が「音質を良くしたい」なら、OBS配信は遠回りです。 この記事では、3つのパターンを整理したうえで、どこまでやるべきかの判断軸をお伝えします。
この記事は、コアミュージックスクールのボーカル講師・奥津ユキ(ボーカル/ピアノ/サックス/フルート/DTM)の監修のもと作成しています。
まず全体像|PCが関わるパターンは3つ
| パターン | 必要なもの | 配信 | 向いている人 |
|---|---|---|---|
| ① iPhoneのみ(標準) | iPhone+有線イヤホン | ○ | ほぼ全員。これで十分 |
| ② Mac App | AppleシリコンのMac | × | 大きい画面で視聴したい人 |
| ③ OBS配信 | スマホ1台+PC1台 | ○ | PCで画面の演出をしたい人 |
①が標準です。カラーシングに必要なのはマイク付きの有線イヤホン1本で、パソコンは要りません。詳しくはカラーシングの機材をご覧ください。
② Mac Appの実際|「使える」の中身に注意
AppleシリコンのMacをお使いの方は、App Storeからカラーシングを入手できます。ただし公式には、次のように条件が付いています。
- 配信は除外されます
- 長押し操作も除外されます
- サポート保障の範囲外です
長押しが使えない点は、思っているより影響があります。カラーシングに限らず、この種のアプリでは長押しに機能が割り当てられている場面があるためです。
まとめると、Mac Appは「大きい画面で見る」ための選択肢と考えてください。歌う側の環境としては成立しません。なお、Windowsパソコンでカラーシングのアプリを動かす方法については、公式に案内がありません。
必要な機材や始め方を、始める前に確認できる窓口があります。 質問できる内容と、連絡後の流れを見る →
③ OBS配信|これは「PCで配信する」方法ではありません
ここが誤解されやすいところなので、丁寧に説明します。
公式が案内しているOBS配信は、スマートフォンとPCが1台ずつ必要です。スマホをPCに置き換える方法ではなく、スマホでの配信にPCを足す方法です。
音の通り道が、標準構成とまったく違う
ここを理解しないまま始めると必ず失敗します。
- カラオケのBGMは、スマホから流れます
- あなたの声は、PCのマイクから拾われます
つまり、BGMと声が別の機械から出入りすることになります。公式は、スマホから流れるBGMをそのままPCのマイクで拾うと音質が悪くなるため、オーディオインターフェースの利用を推奨しています。
ここは重要なので繰り返します。カラーシング公式FAQのどこにも「オーディオインターフェースが必須」という記述はありません。公式が明確に推奨と書いているのは、このOBS配信の場合だけです。 通常のスマホ配信では求められていません。
つまりOBS配信を選ぶと、スマホ・PC・オーディオインターフェース・マイクと、必要なものが一気に増えます。 実質的にはVtuberのようなPC上の演出をしたい方向けの構成です。
OBSの推奨設定(公式が示している値)
| 項目 | 設定値 |
|---|---|
| 出力モード | 詳細 |
| キーフレーム間隔 | 2s |
| CPU使用のプリセット | ultrafast |
| プロファイル | baseline |
| チューン | zerolatency |
| threads | 1 |
| ビットレート | 3500Kbps以上を推奨 |
| 基本(キャンバス)解像度 | 720×1280 |
| 出力(スケーリング)解像度 | 720×1280 |
解像度が縦長(720×1280)である点に注目してください。カラーシングは縦画面のアプリで、横向き利用は公式の推奨外です。PCを使う場合も、出力は縦のままです。「PCなら横長の画面で配信できる」わけではありません。
ストリームキーの落とし穴
OBS配信でつまずくポイントが2つあります。
- ストリームキーの有効期間は1年間です。無期限ではありません
- LINEやDiscord経由でコピーすると「*」が壊れます。 別の端末に送ってから貼り付けようとすると、一部の記号が変換されて認証に失敗します
2つ目は、原因が分からないと延々ハマります。うまくいかないときは、送信アプリを経由せずにコピーする方法を試してください。
BETAメニューが出ないときは
OBS配信の設定項目が見つからない場合、「顔出し配信」の設定になっているとBETAメニューが表示されません。 「声だけLシンガー」に切り替えるか、Mac Appを使う必要があります。
顔出しをしない配信そのものについては、声だけLシンガーで解説しています。
接続と切断を繰り返してしまうとき
配信が安定せず、つながったり切れたりを繰り返す場合は、カラーシングアプリをタスクキル(完全終了)してください。 OBS側を再起動しても直りません。原因はスマホ側のアプリにあります。
AG03を使ったOBS配信の具体的な手順はOBS配信とAG03にまとめています。
PC構成にすると起きる、2つの副作用
OBS配信ではオーディオインターフェースを挟むことになります。そのとき、スマホ単体では起きなかった現象が2つ出てきます。どちらも公式FAQに記載があるものです。
副作用①:ガイド音がリスナーに聞こえてしまう
これがいちばん多いトラブルです。オーディオインターフェース経由でアプリの音を入力すると、ガイド音量を上げたぶんが、そのままリスナーにも聞こえてしまいます。
有線イヤホンをiPhoneに直接挿している標準構成では、ガイド音は自分だけに返る仕様です。ところが機材を挟むと、アプリが分けていた「本人だけに返す音」と「配信に乗せる音」が、機材の中で一本にまとまってしまいます。
対処は、カラオケリモコンパネルのガイド音量を下げることです。詳しくはガイド音がリスナーに聞こえる原因と直し方で解説しています。
あわせて、アプリからの音量設定が低いと、ガイド音だけでなくBGMや自分の声の返しも聞こえなくなる点にも注意してください。
副作用②:ノイズキャンセリングが誤作動する可能性がある
カラーシングのノイズキャンセリングは初期状態でオンです。公式FAQには、オーディオインターフェース経由の外部音源はノイズキャンセリングに誤って処理される可能性があり、音質が気になる場合はオフにするよう案内されています。
設定は、歌詞画面右上の「・・・」から開くカラオケリモコンパネルの「その他詳細設定」の中にあります。ただしイヤホンを接続していないと、この項目は表示されません。 判断の仕方はノイズキャンセリングのオンとオフの使い分けにまとめました。
つまり、PC構成に移ると触らなければいけない設定が増えます。 「機材を足せば勝手に良くなる」ものではない、というのが実際のところです。
講師の視点|「PCにすれば音が良くなる」は、たいてい違います
ここからが、この記事でいちばんお伝えしたいことです。
PC化を検討している方に理由を伺うと、多くの場合こう返ってきます。「今の音がなんとなく物足りないから」。
その気持ちはよく分かるのですが、OBS配信に移行しても、その物足りなさは解決しません。 なぜなら、PC化で変わるのは「音を運ぶ経路」であって、「声そのもの」でも「声を拾う環境」でもないからです。
リスナーに届く声の印象を決めているのは、順番にこうです。
1位:口とマイクの距離と角度
これが圧倒的に大きいです。イヤホンマイクは通常、胸元でぶらぶらしています。歌っているあいだに動けば、音量が上下します。服に擦れればノイズが入ります。鎖骨のあたりで、口の真下ではなく少し横にずらして固定する。 これだけで安定感が変わります。数万円の機材より効きます。
2位:部屋の反射
フローリングで家具の少ない部屋は、声が壁で跳ね返って戻ってきます。同じ声でも「遠い」印象になります。カーテンを閉める、ベッドやソファのある側を向いて歌う。これも0円です。
3位:声そのもの(息の量・共鳴・発音)
ここは練習の領域です。機材でごまかせる範囲は、思っているより狭いというのが講師としての実感です。
4位以下:機材と経路
PC化が効いてくるのは、ここまで整えたあとです。1位と2位を放置したままPCを導入しても、変わったのは配線だけ、という結果になります。
それでもPCにすべき人・すべきでない人
| PCにすべき人 | PCにすべきでない人 |
|---|---|
| PC上でアバターや演出を出したい | 音質を良くしたいだけ |
| 画面のレイアウトを作り込みたい | 大きい画面で歌詞を見たいだけ |
| すでにOBSを使い慣れている | 配信を始めて日が浅い |
| 機材トラブルを自分で切り分けられる | 設定でつまずくのが不安 |
| 弾き語りで入力が2系統以上必要 | 歌のみ・声量も音量も問題ない |
右側に当てはまる方は、PCではなくマイクの位置と部屋に時間を使ってください。そのほうが、リスナーに届く変化ははるかに大きくなります。
判断に迷う場合は、コアミュで相談していただいても構いません。いまの配信を聴かせていただければ、機材を足すべき段階かどうかをお伝えできます。
知っておきたい注意事項
機材まわりで、公式が明記していることをもう一度書いておきます。
- イヤホンマイク・スピーカー・ミキサー等のアクセサリー起因の不具合は、サポート対象外です
- 公式が動作確認しているとされる製品についても、「動作を保証するものではない」と明記されています
- 公式が動作確認している構成は3つだけです。①外付けマイクがない場合=Apple純正の有線イヤホン、②オーディオインターフェースを使う場合=AG03+AT2020、③マイクにつなぐ場合=Apple純正カメラアダプタ+FIFINE K658
PC構成に踏み込むということは、トラブルを自分で切り分ける前提に立つということです。そこを納得したうえで進めてください。
よくある質問
Q. Windowsパソコンでカラーシングを使えますか?
A. Windowsでアプリを動かす方法について、公式に案内はありません。最新の条件は公式FAQでご確認ください。
Q. Macで配信できないなら、Macを使う意味は?
A. 視聴用として使えます。また、OBS配信で「顔出し配信」設定だとBETAメニューが出ない問題の回避策として、Mac Appを使うという選択肢が公式に挙げられています。
Q. PCの大きい画面で歌詞を見ながら歌えますか?
A. Mac Appでは配信ができないため、歌詞を見ながら歌う用途には使えません。OBS配信の場合も、歌う操作自体はスマホ側で行います。
Q. OBS配信にすると、ダイヤの獲得条件は変わりますか?
A. 配信方法によって獲得条件が変わるという案内はありません。歌ダイヤは1曲歌うごと、雑談ダイヤは歌唱中以外の配信1時間あたりで、いずれも翌日早朝5時までに付与されます。
Q. iPadなら大きい画面で配信できますか?
A. できません。タブレット類は公式の推奨外と明記されています。対応機種の詳細をご確認ください。
まとめ
- PCだけでの配信は不可。 Mac Appは配信と長押しが除外され、サポート保障範囲外
- 公式のPC配信はOBS配信のみで、スマホ+PCの2台構成
- OBS配信ではBGMはスマホから/声はPCのマイクから。だから公式もオーディオインターフェースを推奨している
- 設定はビットレート3500Kbps以上・解像度720×1280など。ストリームキーは1年間有効、LINE等でコピーすると壊れる
- 音質が目的なら、PCよりマイクの位置と部屋の反射を先に整えるほうが効く
- PCが本当に効くのは、画面上の演出をしたい人
監修
奥津ユキ(コアミュージックスクール講師)
ボーカル・ピアノ・サックス・フルート・DTM(Logic)を担当。



