EQ(イコライザー)はミキシングで最も基本的なエフェクトのひとつですが、「なんとなく触っているけど何をしているのかよくわからない」という人も多いです。この記事では、EQの仕組みと、実際のミックスで使う「楽器の住み分け」の考え方を解説します。
EQとは何か:周波数の操作
音は周波数(Hz)の集合です。人間が聴こえる範囲は約20Hz〜20,000Hz(20kHz)。低い数値ほど低音、高い数値ほど高音です。
EQはこの周波数帯を「増やす」か「削る」かを操作するツールです。特定の帯域をブーストすれば音が明るくなったり太くなったりし、カットすれば音がすっきりしたり痩せたりします。
主要楽器の周波数特性
各楽器にはそれぞれ「主要な音域」があります。これを意識することが「住み分け」の第一歩です。
- バスドラム(キック):50〜100Hz(低音の迫力)、4〜6kHz(アタック感)
- スネア:150〜250Hz(ボディ感)、5〜10kHz(スナッピーのキレ)
- ベース:60〜150Hz(低音の芯)、500〜1kHz(ミドルの存在感)
- ギター:200〜800Hz(厚み)、2〜5kHz(エッジ感)
- ピアノ:80Hz〜8kHz(広い)
- ボーカル:200〜500Hz(温かみ)、2〜5kHz(明瞭感・存在感)
- シンバル・ハイハット:6〜16kHz(キラキラ感)
サブトラクティブEQ:まず「削る」発想
初心者はEQで「音を足す(ブースト)」ことを先にやりがちですが、プロは逆です。まず「いらない帯域を削る(カット)」ことから始めます。これをサブトラクティブEQと言います。
なぜか?音をブーストすると全体の音量が上がりますが、カットすれば他の楽器のための「空間」が生まれます。各楽器が「自分の帯域」でしっかり聞こえるようにするためには、他の帯域で干渉している音を取り除くことが先決です。
問題になりやすい周波数帯
ミックスで特に問題になりやすい帯域があります。
200〜400Hz(マッドゾーン)
多くの楽器がここに集中するため、ここが過剰になると音が「こもった」「濁った」印象になります。複数の楽器がここにエネルギーを持ちすぎていないか確認してください。
2〜4kHz(耳に刺さるゾーン)
長時間聴くと耳が疲れる帯域。ギターやシンセがここを出しすぎると「刺さる」感じになります。少し削るだけで聴きやすくなります。
低域全般(モヤ)
必要ない低音がそのままになっていると、ミックス全体がモヤっとします。ベース・キック以外の楽器は80〜100Hz以下をハイパスフィルターでカットすることを習慣にしてください。
EQの使い方:実践的なステップ
- まず全楽器にハイパスフィルター(低域カット)をかける(ベース・キックを除く)
- 各楽器の「問題になっている帯域」をQを絞って探す(ナロウブースト)
- 見つけたらカット方向に調整
- 最後に、必要であれば「聴かせたい帯域」を少しブースト
EQは使いすぎに注意。「何もしていないように聞こえるEQ」が理想です。劇的に変えようとすると、必ずどこかに不自然さが出ます。
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